山梨県・某村の雑木林―
ある日、地元住民が雑木林の中に不可解なものを見つける。それは空間が縦に裂けたものだった。縦に裂けた亀裂のようなものは約2mくらいある。


空間の向こう側はもやもやしていて見えない。
住民のおじいさんはその亀裂の中から鬼のような怪人が出てくるのを目撃した。

おじいさんは木陰に隠れて身を潜めながら、それを見た。


鬼だ…!鬼が出てきおった!!



本部。数日前に山梨県の雑木林で目撃された不可解な空間の亀裂と、そこから現れた鬼のような怪人の話題で持ちきりになっていた。

宇崎はその雑木林の中にある、不可解な空間の亀裂画像をメインモニターに映す。


「…なんだこれ」
御堂、棒読み。

「ここから怪人が出てくるのを村の住民が見たんすよね?」
いちかが食いつく。
「この雑木林の管理をしている地主さんが見たんだそうな。どう見ても鬼だったと」

「怪人?鬼?」
「解析班とゼノクが急ピッチで分析してるからもうちょい待てって、彩音」


鼎はこの画像をずっと見ていた。この怪人は異空間から来たのか?


「鼎、どうした。ずっと黙ってて」
御堂が声を掛ける。鼎はようやく御堂を見た。
仮面で顔が隠れていて表情がないはずなのに、深刻そうに見える。角度のせいだろうか…。


「この亀裂、どこに繋がってるか気になってなー。以前戦ったメギドとは明らかに違う異空間だろうが、分析報告が待たれるな」
「解析班にプレッシャーかけんなってば」



その解析班。


「朝倉、例の空間の亀裂…分析完了したぞ」
「神さん早いなっ!」

チーフの朝倉は驚きを見せた。神は元ハッカー。経緯は謎だが、数年前から隊員になっている。
神は朝倉達に分析データを見せた。


「この縦に裂けた亀裂、時空の切れ目の可能性が高い」


時空の切れ目!?


「地元住民の目撃情報から察するに、ここから出てきた鬼のような怪人はほぼ『鬼』と見ていいだろうね」

「鬼!?」
解析班一同ざわつく。


「矢神が調べた鬼にまつわる伝説や伝承などを見たんだが、興味深いものがあった。
鬼というものは季節の変わり目に、時空の切れ目から現れる。まぁこれは一部の伝承なんだけどね。節分はその名残だよ。厄…みたいなものか?」

「人を拉致る意味が説明つかないわよ」


確かに。仮に鬼だったとしても人を拉致する行動は説明がつかない。


「もう少し、出現してくれれば分析しやすいのに」
「おいおい神さん、それはちょっと…ないわー」
朝倉はやめてくれーな反応。

矢神がぼへーっとしながら呟いた。
「でも空間がそのままで、住民が鬼が出るところ見たってことはさ…どこかにそいつがいるんだよね」


…確かに。



空間の亀裂から放たれた鬼は人々を襲撃。襲われた人達はその場から忽然と消えた。
消えた人数は前回と同じく10人前後。だが、今回の怪人はさらに場所を変え襲撃し、さらに10人ほどが消えていた。



本部・司令室。


「室長、例の怪人がまた人を襲撃したと報告が入った。今度は20人ほど消えたと」
鼎はモニターに地図を表示しながら報告している。現場は人の多い市街地。

「鼎、ありがとね。…って、消えた人数増えてないか!?」
宇崎、タイムラグで慌てる。


「室長、既に御堂達を現場に派遣したから」
「いつの間に」



埼玉県・某所。御堂達はふたてに分かれて鬼怪人を探してる。


「ここらへんで人が消えたってわけか」
御堂は最初に人が消えた現場を見ている。彩音から通信が入った。

「もう1ヶ所の人が消えた現場に到着したよ。御堂さんがいる場所から1q離れてるか微妙な場所。こっちも街中」


そこに割り込むように鼎から通信が。
「解析班から分析報告が来た。あの不可解な空間の亀裂は『時空の切れ目』、出てきた鬼のような怪人はほぼ『鬼』で確定だそうだ」

「鬼!?怪人じゃなくて!?」
いちか、オーバーリアクション。


御堂は冷めた反応。
「怪人も鬼も似たようなものじゃねぇか。ただ…効果的に倒す方法が今のところブレードだけってのが…」
「和希、他の手も調べてる。私も調べてるから…」
「鼎、戦えないからって何も思い詰めなくてもいいんだよ。お前は十分やってるだろうが」

御堂は言い方こそはぶっきらぼうだが、鼎に対しては優しい。


「和希…」
鼎の声は心なしか安心したように聞こえた。御堂は任務モードに戻る。

「鼎、敵の情報は随時送信してくれよ。端末でも通信でも構わないから!
お前は出来ることをやればいい。情報は司令室の方がはえーからな」

「わかった」



ゼノク地下・憐鶴(れんかく)の部屋。


憐鶴もゼノクが調査した怪人の情報をPCで見る。
「鬼…?」

彼女は消え入りそうな声で呟いた。世話役の姫島は憐鶴(=御子柴)の過去が引っ掛かった様子。


御子柴を襲撃した怪人はまだ倒されていない。当時の彼氏の新島はほとんど無傷だったが、御子柴は重傷を負った。
この襲撃事件、ほとんど語られていないが被害者は意外と多い。


「…姫島さん」
「あ、どうかしましたか?」
姫島は明るく返事した。

「この『鬼』…私を襲撃した怪人かもしれない。特徴はもっと違った気がしましたが…違う鬼かもしれないですが」
「憐鶴さんが『請負人』になった全ての発端って…」


「襲撃した怪人への復讐ですよ。もし、これが繋がっているのであれば私は修羅にでもなりましょう」


それはつまり…表へ出るかもしれないということか!?


「ま、待って!早まらないで!まだ確定したわけじゃないですよ。冷静になって下さい…。
いつもの憐鶴さんじゃなくなってます…。少し、落ち着きましょうか」

「すいません、取り乱しました」


姫島は憐鶴の心の闇を垣間見た気がした。
なんで特殊請負人という、怪人を対象にした汚れ仕事で過酷な闇の執行人を彼女は引き受けたのか…。



本部・司令室。鼎は淡々と調べている。

「『追儺(ついな)の式』…弓矢…?これは…一体………」


鼎、何かに気づいたか?