御堂はようやく対怪人用ブレード・鷹稜(たかかど)を抜刀。いちかはというと、太い縄で敵をギリギリ締め付ける。

いちかは小柄なのに意外と馬鹿力。
「たいちょー早くそいつ斬り捨てちゃって!!持たせんのキツいんすから!!」

「わ、わかった…」


御堂は若干迷いがあったが、怪人もとい鬼に対して一気に叩きつけるように斬る。相手はパワー系なだけに、硬い感じがしたがいちかのアシストと鷹稜が不意に発動したおかげでなんとか殲滅。



本部・司令室ではようやく鼎が戻ってきた。

「鼎、おかえり。和希達が例の鬼、殲滅したぞ」
「そうか」
「だけどおっかしいんだよな〜。消えた人達が戻ってこない」

「消えたままなのか!?」
「あちらサイドで何か動きがあったのかもしれない。。調査続行だ」



絶鬼はふらふらと市街地にやってきた。そして2人を異空間からビルの屋上に呼び出す。


「禍鬼(かき)・裂鬼(れっき)人間をある程度集めておいた。まだ足りないかなぁ」
絶鬼、含み笑いをする。

「あの儀式を実行するにはまだ足りませんよ。災厄の儀を行うにはもう少し人間を拉致らないと」
禍鬼が何かを気にしてる。

「絶鬼様、10年前みたいにやればいいんじゃないですか?
人間拉致しないで重度の後遺症を残す、アレ。人間にはほぼ治療不可能なやり方があるじゃないですか〜。仮に生き残れても地獄のアレがね」

裂鬼は楽しそう。裂鬼は若い女性の姿をしている。禍鬼は真面目そうな青年。


「10年前は他の怪人に憚れて計画が台無しになってしまったが、今は邪魔者がいない。実行可能だ」
「俺達2人は何すればいいんですかね」
禍鬼はマイペースに聞いてる。

「とにかく人間を拉致してこい。時空の切れ目に飛ばすんだ」
「りょ〜か〜い」
裂鬼、ふざけた言い方で返事した。
「御意」
禍鬼は固く答える。2人の部下らしき鬼は消えた。


絶鬼は空を見上げた。あの人間達はいわば供物。そうだな…災厄の種類は様々あるが何を起こそうか?
どうせやるなら大規模のものをド派手にやっちゃいますか?


絶鬼はひとり、高笑いした。



本部に「鬼殲滅の鍵」となる、特殊な弓・5つが支部から到着。わざわざ輸送機を使ったあたり、かなり特殊なものらしい。弓は中型のものだ。


「これが鍵…?ただの弓じゃねぇか」
御堂達はそれぞれ弓を持ったり、弓の絃をびんびん鳴らしたりしている。


鼎が説明する。

「この弓は攻撃目的ではない。厄を払うためのものだ。それに特殊技術を施し、攻撃出来るようにもしていると聞いた」
「破魔弓みたいなもんか」
御堂はすぐに理解した。

「本来この弓矢は空に向けて放つもの。追い払う意味合いが強いからな。
だが、使い方によってはかなり強力になるという」
「摩訶不思議なもんもあるゼルフェノア…すごいっす」
いちか、感心してる。

「すごいのは支部だから。支部は京都にあるが、立地上オカルト的な装備を使う頻度が高いらしい」
「この弓借りて大丈夫なの?鼎」

彩音、めちゃくちゃ心配そう。
「支部の武器庫担当が言うには、この弓の代わりはいくらでもあるからじゃんじゃん使ってーってスタンスだ」
「小田原司令らしいわ…」



絶鬼が召集した禍鬼と裂鬼により、さらに消えた人達は増えていく。
裂鬼はあのやり方を実行していた。

「生きても地獄になるだけよ。その力、頂戴するね。生き延びてもせいぜい後遺症に苦しめばいい」
裂鬼は複数の一般市民に向けて何かをした。襲撃にしてはなにか変。


絶鬼は感じた。あのやり方を使ったのか…。非情だねぇ。10年前の俺みたいなことをするなよ。
血の気が多いやつだから大目に見てやろうか。



ゼノクでは西澤が隙を見て地下を探索中。2つ目の隠し通路が見つかる。


2つ目の隠し通路?地図上では行き止まりになっていたのに、先があったなんて。
西澤は壁をいじってみるも、無反応。この隠し通路は壁…じゃない、鍵は床か?


床には何やら小さな印があった。まるで推理小説みたいな展開になってる。ミステリードラマかよ!
西澤は心の中で突っ込んだ。1つ目の隠し通路はスライド壁だったが、2つ目は床に仕掛けがあるらしい。


一体誰がこんなにも地下を複雑化させたんだ?隠し通路は後から作られたみたいだが。
西澤は床の仕掛けを解くのに悪戦苦闘。探偵みたいなことしてるよ自分…。



ゼノク・司令室。南は西澤が戻っていないことに気づく。

「長官、西澤が戻ってきませんね。どこ行ったんでしょうか」
「そのままにしておきな。どうせ諦めて帰ってくるよ」


諦めて帰ってくる?なんのことを言ってるんだ、この人は?

南は地下に関しては詳しくないため、わからない。



数日後。憐鶴(れんかく)は姫島と会話をしていた。


「10年前に襲撃された時、いたのがあの『絶鬼』でした。気絶する寸前、あの男は私に『何か』しました。
その何かのせいで重度の後遺症になった…未だに治療方法はなく、生き地獄ですよ。
忌々しい姿を見せたくないので、やむなく包帯姿になりましたが」
「憐鶴さん、最近包帯変えてないですよね…。変えないとマズイです」

「すいません。変えて貰っていいですか?
輪郭が綺麗に見えるようにお願いします。横顔が綺麗にさえ見えればいいんです。この姿になってからは表情なんてないですから、せめてシルエットだけでも人間らしくありたいんですよ…」

姫島は手際よく準備をしている。
「本当に…行くんですか。表の世界に」
「怖いですが、決めました。絶鬼は私が倒さなくてはならない…!
おそらく部下の鬼もいるはず。そいつらの殲滅が先になるかもしれないですが」


姫島はするすると包帯を解いていく。憐鶴はこの時毎回うつむいているため、素顔はほとんど見えない。
やがて古い包帯を外した姫島はすぐさま新しい包帯を顔に巻いていく。

憐鶴の希望通り、横顔が綺麗なシルエットになっていく。顔は一切見えないのだが、姫島は憐鶴さんは喜んでいる…と感じた。


「気をつけて下さいね。私は同行した方がいいですか?それと協力者の苗代と赤羽は?」
「姫島さんは同行お願いします。協力者の2人はケースバイケースで」

姫島は憐鶴の包帯を取り替え完了したようだ。彼女はこんなことを呟く。
「鬼殲滅装備を用意したと、蔦沼長官から伝言が入ってます」


長官はわかっていたのか…。私が表に出ることを。


「その武器はどこにありますか?」
「第2行路の先にある部屋に保管してあります。いつでも使えるようにと長官は既に調整済みとのことです」

「ありがとう」



西澤はまだ悪戦苦闘。ダメだ、全然びくともしない…。諦めるか…。
彼は司令室に戻ろうとしたのだが、何やら足音に気づいた。西澤はどこか隠れる場所はないかと探す。


誰か来た…!


西澤は慌てつつも、その2つ目の隠し通路に近い死角の道に隠れた。そこは薄暗いのでわからない。
彼はそーっと物陰から足音の主を見た。憐鶴…!?

彼女は床の仕掛けをいとも簡単に解くと、壁がシャッターのように上がった。


壁が競り上がった!?


憐鶴はその中へと入っていった。こちらは壁の向こう側は倉庫のようになっている。
憐鶴は弓を手に取った。眺めているような仕草。


かなり強力な弓ですね…。破魔弓をさらに強化させたものだ…。
それにこの刀。かなりの霊力が宿っている。対怪人用ブレードじゃないですねー。

…ん?鉈まで用意してくれたんだ。ただの鉈じゃない…鬼殲滅仕様になっている…。長官は私の戦闘スタイルを熟知していますね。


憐鶴は弓矢と鉈を持っていくことにした。
「まずは手始めに、雑魚狩りでもしましょうか」



その約1週間後。闇の執行人は人知れず、鬼を狩る。
まだこの時点では本部には気づかれていない。

SNSでは憐鶴がなぜ鬼狩りをしているのか、推理合戦に。



本部では憐鶴が「鬼狩り」してると知り、何で?ええっ!?…と言った反応。

「鼎、憐鶴のやつ鬼狩りしてんぞ」
「あいつにも事情があるのかもしれんが…気になるな。和希、憐鶴をマークして欲しい。彼女には何かしらあるはずだから」
「へいへいーっと」

「もし、接触出来たとしても問い詰めるな。
憐鶴は昔の私みたいで…見ていられない。あの包帯の下が…どうなっているのかも」


「鼎、そのうちお前が接触しそうな気がするんだわ。なんとなくな」



憐鶴は1人、弓矢と鉈を使い鬼を淡々と殲滅していた。その姿はやはり闇の執行人そのもの。

姫島はかなり心配していた。表に出た影響が出なければいいのですが…。