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イランとイスラエルで攻撃の応酬が続いているが、今後本格的な戦闘に発展する恐れはあるのか。各国にどのような影響が出ると考えられるのか。
事の発端は、昨年10月7日のハマスによるイスラエルへの国際法違反のテロだ。これに対し、イスラエルはハマスに報復した。ガザでの表向き民間施設であってもハマスの拠点となっているところにはイスラエルは容赦なく攻撃した。
このハマスによるテロから議論を始めるべきだ。その前の歴史を遡(さかのぼ)ると収拾がつかなくなる。昨年10月22日、日本を除く主要7カ国(G7)はこのテロに対しイスラエルの自衛権を認めた。イスラエルの報復が自衛権の範囲を超えるかどうかは個別具体的な報復行為に依存するが、イスラエルが自衛権の範囲内と挙証できれば国際法上の問題はとりあえずないといえる。
国際世論にはイスラエルの報復は自衛権の範囲を出ているという意見もあるなかで、今年4月1日、イスラエルは敵対するヒズボラの支援拠点として、シリアにあるイランの在外公館を攻撃したもようだ。イスラエルは関与したかどうか明らかにしていないが、仮に関与したとして、在外公館とは偽装であり、実質的にヒズボラ拠点という言い分だろう。だが、イランから見れば在外公館への攻撃は明白な国際法違反である。
このため、13日にイランは報復した。イランからのイスラエルへの直接報復は前例のないものだった。ただし、イスラエルの軍事拠点のみに対し事前通告をしたので、その意味で抑制的なものだった。
これに対し、日本を含むG7はこれ以上エスカレートしないことをイスラエルに求め、一方でイランを非難した。
そこでイスラエルの出方が問題だが、次の3つがあり得る。
第1に、このままイスラエルが何もしなければとりあえずの小康状態になる。
第2に、もしイスラエルがイランの軍事施設以外に報復するようであれば、事態はエスカレートする可能性がある。一番危険なのは、イスラエルにとって軍事施設でも、イランにとって形式的には民間施設である核施設をイスラエルが攻撃した場合だ。
第3に、そこまで行かずにイスラエルがイランの軍事施設に対して限定的な報復にとどまれば、その後多少の小競り合いはあっても事態がエスカレートするに至らない可能性がある。今のところ、第3の可能性が高いようだが、第2の可能性もまだ捨てきれない。
こうした状況を受けて、19日の東京株式市場は大混乱した。イスラエルがイランに報復したかもしれないという情報が出ると、日経平均株価は1300円ほど急落した。その後限定的かもしれないとなり、終値は1011円安まで戻った。
これは中東不安によるエネルギー危機への連想だ。イランに限ればその原油輸出の相手先はほとんど中国であり先進国への影響は少ない。しかし、ホルムズ海峡の不安定化にまで進行すれば、やはり先進国とりわけ日本経済への影響は不可避だ。 (元内閣参事官・嘉悦大教授 高橋洋一)