寒気凛冽たる冬の夜。ヘリオスはふと、目を覚ました。
体感で深夜だと判断する。家中は寝静まっているが、その中で動く気配を感じた。泥棒のたぐいの足取りではない。そう思う頃には気配の正体に気付いていた。
放って置いても良いのだろうが、ヘリオスは寝台の横に掛けていた上着を羽織り、そっと寝室を出た。廊下を抜け、台所の扉を開け放ち、静かに、しかしわざと鋭く問う。
「何をしている?」
ぎくっと、ふたつの気配が身を固くした。
「ええと……」
燭台を持った子供の気まずそうな表情が蝋燭に揺らめく。
「きゅうん……」
傍らで大きな犬が耳と尾を垂らす。
それがあまりにも悪戯が見付かった時の反応そのままだったので、ヘリオスは思わず吹き出した。