赤髪金髪コラボのSSです。
今日で一周年!めでたい!
…のに何故シリアス書いたんだ私←
でもこういうノリなこの二人も好きです(こら)
*attention*
赤髪金髪コラボのSSです。
シリアスっぽいです
アネットはずっと一緒にいたいとかそういうこと考えるあまりに悪夢みるタイプだろうな、と(ぇ)
それをどうやって上手く慰めたらいいだろう、と悩みつつ自分も切なくなってるライニさんを書きたかった…
何だか一番報われないCPだな、というのを思い出していたらこんなノリになってしまいました←
相変わらず妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKというかたは追記からどうぞ!
―― 静かな夜の部屋のなか。
白いシーツに広がる金髪。
人形のように整った顔立ちの金髪の少年……
ハイドリヒは、軽く寝返りをうった。
少し前まで仕事をしていた彼だが、時間も時間。
いい加減に寝ようと思って、ベッドに転がることにした。
しかし夜遅くに出ている任務も多いため、そうすんなりとは眠れない……
もう少し起きていて本でも読むか、書類でも片付けようか……
そう思っているうちに、少し意識が微睡んだ。
―― そんな、時。
不意にどさっと、隣に何かが落ちてきた……否、倒れてきたような衝撃。
ハイドリヒは驚いて目を開けた。
それと同時、ぎゅっと強く抱き締められる。
半分眠りかけの意識だったことも手伝って一瞬焦ったが……
何のことはない。
こんな真夜中にこんな形で部屋に突撃してくるのは、一人しかいない。
何のつもりですか……
少し呆れて、そう訊ねようとしたけれど。
「……?」
隣に転がっているのは、予想通り赤髪の少年。
けれど、明らかにいつもと彼の様子が違う。
酔っぱらっているのかと思ったが、そうでも無さそうで。
ハイドリヒは困惑しつつ、"アネットさん?"と名前を呼んだ。
その声に彼の体が大きく跳ねる。
抱き締められていた腕が緩められて、 ようやく彼の表情が見えて……
ハイドリヒは、少し驚いた顔をする。
彼の頬には無数の涙が伝い落ちていた。
"良かった……"と呟く声が聞こえた。
その声は涙声で……ハイドリヒは驚き、困惑しつつ彼を見る。
泣きじゃくる彼の体ごとベッドの上に起き上がって、声をかける。
「一体どうしたんですか……こんな、時間に」
しかも泣いて、とハイドリヒは訊ねる。
彼が此処まで泣いているのは、正直いってみたことがない。
アネットは嗚咽混じりに、自分の涙の理由を話した。
「っ、ラインハルトが、いなくなる夢、見たんだ……」
泣きながらそういう彼に、ハイドリヒは目を見開く。
彼が話したその"理由"は、意外なもので。
夢?
しかも、自分がいなくなる夢。
今の彼の言葉から、自分の境遇から……
その夢の、"いなくなる"が、ただ単に国からいなくなるという話でないことくらい、
ハイドリヒにも容易に想像がついた。
アネットは泣きながら、ハイドリヒに言う。
「何処、いってもいなくて……探し回ったけど、見つかんなくって……
ほんとは、わかってた、何処にもいないって」
夢のなかでも気づいていた。
幾ら探しても彼には会えないと。
怖くて、怖くて、やっとのことで目を覚まして、
それが夢だとわかっていてもやはり怖くて……
こうして、ハイドリヒのところに来たのだと言う。
あれが夢だったと確認するために。
彼は此処にいると確認するために。
そこまで言うと、アネットはまた泣き出して、ハイドリヒを強く抱き締めた。
ハイドリヒは困惑したままに、彼の体を抱き止めて、かけるべき言葉を探す。
「……縁起でもないことを、言わないでくださいよ」
そういってやるのが精一杯だった。
それ以上の言葉は、出てこなかった。
そんな夢を見たというだけでこうも泣いている彼は、
本当に自分がいなくなったら……どうなるだろう。
以前の自分ならばそんなこと自分の知ったところではないと、
軽く流すことができただろう。
しかし、今はそれだけが心配でならない。
自分がもし、本当にいなくなったとしたら。
きっと、その夢と同じように彼は自分を探し回るだろう。
居ないとわかりながら。
会えないとわかりながら……
必死に探して、探し回って、現実に絶望するのだろう。
今までの彼の行動パターンでそれは十分よくわかってしまっている。
子供のように泣きじゃくる彼は、
何度も何度もハイドリヒの名前を呼んで、強く強く彼を抱き締める。
いつもの、優しくて手加減した抱き締め方ではない。
強くて、痛いほどの、余裕のない抱き締め方だった。
ハイドリヒは思わずそれに顔をしかめた。
「アネットさん、痛い……痛い、ですから……」
少し手を緩めてください、とハイドリヒが言うが、アネットの腕は緩まない。
ぎゅ、ときつく抱きつくその腕は痛いほど力強くて、ハイドリヒは息を詰まらせる。
「っ、大丈夫ですから……」
何も大丈夫なんかではないけれど。
こんなの、気休めにしかならないけれど……
今彼を泣き止ませるためには、こういうしかない。
普段、アネットは泣かない。
ハイドリヒと違って泣きたくても泣けない、
泣かないようにしている訳ではないらしいが、
根底に男は泣いてはいけない、或いは騎士は、守る立場にある者は、
簡単に泣いてはいけない……そう思っているらしく、
ちょっとやそっとのことでは泣かないのだ。
そんな彼がこうも激しく泣くのは……
決まって、自分が関わっている時だと、ハイドリヒは知っている。
ハイドリヒの言葉に、アネットは漸く顔をあげた。
縋るような視線を向けて、彼は言う
「大丈夫、だよな……ずっと、一緒に……」
いられるよな?と問いかける声に頷くことは出来なかったけれど、
代わりのようにそっとアネットの背中を撫でてやる。
いつも、自分がそうしてもらっているように。
アネットはそれに少し安心したように体の力を抜き、再び彼の胸に顔を埋めた。
ハイドリヒはそれに小さく溜め息を吐き出す。
狡い逃げだと、ハイドリヒは思う。
今の自分の行動は、決して彼の言葉を肯定したわけではない。
肯定できないからだ。
彼と、ずっと共に……
その願いが叶えば良いな、とは思うけれど、
それが現実に出来る自信は決してない。
だから彼が勘違いするような方法でこうして彼を慰めて、
とりあえずの逃げ道を作る。
「……子供じゃ、ないのですから」
照れ隠しの、あるいは自分の思いを隠すために、ハイドリヒはそういった。
夢で飛び起きてこんなところまで来るなんて、とハイドリヒは彼に言う。
けれど、こうして自分にすがろうとしてくれる彼は、
やはり自分を信頼してくれているのだろう。
それは嬉しいと同時に、少し怖かった。
こうしてすがってくれる彼を支えられるのはいつまでだろう。
自分が、彼にすがれるのはいつまでだろう。
他のフラグメントよりも"終わり"を意識してしまう自分が恨めしい。
失うのが怖いばかりではない。
失わせるのも怖いと、ハイドリヒは再認識する。
今の彼に出来るのは、出来る限り彼と長くいられるように願うこと、
そして、泣いている彼を優しく慰めることくらいだった。
***
それから暫くして、アネットは泣き止んだ。
すぐに体を起こすと、ひとつ息を吐き出して、呟くような声でいった。
「……、ごめん、ラインハルト……」
「何で謝ってるんですか」
とりあえず彼が泣き止んでくれたことにほっとしつつ、ハイドリヒは言う。
謝ることはないだろう、と。
確かに少し驚きはしたが迷惑とは思っていない。
アネットはそんな彼の言葉に、決まり悪そうに視線を泳がせた。
そして、溜め息混じりに言う。
「なっさけねぇ顔、晒したから」
もう泣かない、といってアネットは流れた涙を手の甲でぐしぐしと拭った。
そして、まだ潤んだままの瞳でハイドリヒを見つめ、力強くいうのだ。
「俺は、"守る人"でありたいから」
ラインハルトを、とアネットは言う。
自分が守る、と。
自分が何を思ってあんな夢を見たのか知らないけれど、
あんなことにならないように自分が守るから、と。
ハイドリヒはその言葉に、小さく息をはく。
「……頼もしいですね」
「本気だからな」
軽く流すなよ、とアネットは少しむくれたように言う。
ハイドリヒはそんな彼の言葉に小さく笑った。
「流していませんよ……これでも、受け入れているつもりです」
「……ん」
アネットはその言葉にうなずくと、そっとハイドリヒの体を抱き締めた。
今度は先程のようなきつすぎるそれではなくて、
優しく、暖かく、気遣った抱き締め方で。
子供のように暖かい体。
ちら、と顔をあげた彼は、ハイドリヒに訊ねた。
「……此処で、寝てもいいか?」
「どうぞ。……お好きなように」
いつものように、とハイドリヒはいってやる。
その、いつものように……が、彼にとっては一番ほしい言葉であろうこと。
それに、気がついたから。
案の定アネットは嬉しそうに笑って、ハイドリヒを抱き締めたままベッドに入る。
泣いていた時の名残か、微かにしゃくり上げるような息を漏らす彼を笑ってやれば、
むっとしたアネットに唇を塞がれた。
甘い甘いいつも通りのキスのはずではあったけれど、
そっと触れた彼の頬はまだ濡れていて……――
少しだけ、消えないで残った胸の痛みと、
ほんの少し塩辛いキスを抱いて、ハイドリヒはゆっくりと目を閉じた。
―― With me… ――
(運命にさえ抗ってみせるといい放つ彼は頼もしいけれど
失いたくないものが増えれば増えるほど失ったときの痛みに怯えてしまう)
(離れたくないあまりに離れた時の夢を見た。
気が狂いそうなほどに怖かったから今はずっと抱き締めさせて…)