フィアとルカでシリアスのようなほのぼののような…
本編完結後のお話。
二人で故郷ルピリアに。
そこでフィアが手渡されたものとは……
というあらすじですが(笑)
「OK」
という方は追記からどうぞ!
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主に創作について語ります。 バトンをやったり、 親馬鹿トークを繰り広げたりします。 苦手な方は、どうぞ戻ってやってくださいませ! (私のサイト「Pure Rain Drop」) → http://id35.fm-p.jp/198/guardian727/
フィアとルカでシリアスのようなほのぼののような…
本編完結後のお話。
二人で故郷ルピリアに。
そこでフィアが手渡されたものとは……
というあらすじですが(笑)
「OK」
という方は追記からどうぞ!
ある晴れた日の朝。
一頭の馬が森を駆け抜けていた。
「……何で貴様と一緒に里帰りする羽目に陥らなければならないんだ」
恨めしそうな声でフィアは呟く。
ルカは小さく苦笑して"仕方ないだろ"という。
「親父と母さんの希望だよ。
……俺が、一回お前がいなくなった時にその旨を、連絡しちまったから……
ちゃんと会って、安心させてやってよ」
「その点は、仕方ないと思うけれど……貴様と二人で馬に乗るのが、嫌だ」
「あのなぁ……目立ちたくない、っていったのはお前だろうが。
お前が騎士として働いてることが公になってもいいんなら、二人で別々の馬で帰ろうぜ」
「……それはそれで、嫌だ」
「我儘言うんじゃねぇよ」
彼……フィアが不機嫌なのは仕方あるまい。
ルカと二人で同じ馬に乗らなければならない、というのはフィアにとって
少々どころか、かなり恥ずかしいことなのだから。
……もっとも、照れているだけなのだけれど。
二頭の馬で行けば目立つことは目に見えている。
フィアは、あまり目立ちたくなかった。
騎士として働いていることは村の人間に秘密にしている。
もうこの際ばれても問題はないのだけれど、
一つの小さな村から二人も騎士が出ているとなれば、
大騒ぎになることは火を見るより明らかで。
それだけでない、元々フィアは"天使の子"と呼ばれていたほどの美少女。
それが男として騎士となり、働いているということがしれれば……小さな村のこと。
間違いなく、大騒ぎだろう。
だから、必然二人で一頭の馬に乗ることになるのだけれど……
フィアは、それが嫌でしょうがないらしい。
「まぁ、村に着くまで我慢しろよ。今日は女の格好じゃないだけましだろう?」
「……まぁ、そうだな」
フィアは溜息を吐くと"ならばさっさと着くように急げ"などと無謀なことを言う。
ルカは苦笑しつつ、馬のスピードを上げたのだった。
***
ようやくたどり着いた、彼らの故郷。
「ん……ルカ、家の前に誰か……」
フィアはルカの家の前にいる人影に気づいた。
ルカもその人物を見た。
そして、その人物が誰であるかは、フィアもルカも、すぐに分かった。
ルカはふぅ、と息を吐きながら言う。
「母さん、かな?」
「伯母上……余程、心配させてしまったようだな」
フィアはぼそり、と呟くように言った。
一度は、仲間を守るため棄てた命。
その所為で姿を消したフィア。
そのことを……"従妹の身に起きたこと"を報告せざるを得なかったルカの心情を思い、
フィアはそっと目を伏せる。
それ以上に、その報告を聞いた伯父が、伯母が、何を思ったかを思うと……胸が痛くなる。
「母さん!」
ルカがその不安を払拭するかのように叫んだ。
その声で、ルカの母……イブが顔を上げる。
ルカとフィアの乗る馬の姿が見えたのだろう。大きく手を振り返した。
「伯母上!」
馬で家の近くまで行くや否や、フィアは馬から飛び降りて、イブに駆け寄った。
それより早く、イブがフィアをしっかりと抱きしめた。
「フィアちゃん……無事でよかった」
しっかりとフィアを抱きしめながら、イブは震える声で言う。
―― 泣いているのかもしれない。
そう思いながら、フィアは静かな声で、詫びる。
「すみません、御心配をおかけして……」
「いいのよ……よかったわ。こうして、貴方をもう一度抱きしめることが出来て」
イブの淡い紅の瞳は僅かに潤んでおり、自分より大きなフィアの髪をそっと撫でている。
ルカは馬から降りながら"連絡遅くなっちまってごめんな"と母に謝った。
フィアが戻ってきた後もバタバタしていて、なかなか連絡できなかったのである。
イブは首を振る。そして、明るく笑った。
「気にしないで頂戴?またこうして四人で会えるんですもの。
ほら、早くいきましょう?ルイも、貴方たちを待っているわ」
えぇ、と返答してフィアはイブの後をついて行った。
部屋の中に入れば、玄関に立っている、ルイの姿。
彼はイブのように抱きしめこそしないものの、
大きな手で一度フィアの頭をわしゃりと撫でた。
"よかった"と聞こえた声にフィアは微笑み、"ご心配をおかけしました"と謝罪する。
そうすれば、もう後はいつも通りのラフォルナ家。
「久しぶりに息子たちが帰ってきたわけだし、今日はゆっくりして行けよ?」
にかっと笑うルイ。その笑みはやはり、ルカによく似ている。
イブはフィアの腕を引っ張った。
「フィアちゃん、こっちに来てくれる?」
「え?はい……」
何だろう、と思いつつフィアはイブについていく。
***
イブに連れて行かれたのは、奥の部屋。
普段此処に来ると、イブはフィアに女の子の服を着せる。
フィアはそれを歓迎してはいないのだけれど……
―― 今日は、大人しくしていよう。
そう思っていた。
散々心配をかけたのだ。
今日くらいは、伯父や伯母の頼みを素直に聞こう
とフィアはそう思っていたのだが……
予想に反して、机の上にあったのは洋服ではなく、小さな箱だった。
不思議そうな顔をする、フィア。
「これ、見てくれる?」
イブは優しい声で言って、机の上にあった小さな箱を開いた。
「え、これ……」
フィアはそれを見て、目を見開く。
見覚えのある、ものだった。
綺麗なリング。
小さな蒼玉(サファイア)がはまっており、
リングの内側にはフィアの母……ネリアの名が、彫ってある。
「これ、母さんが……」
「そうよ。貴方のお母さん、ネリアが大切にしていた、指輪」
そう、イブが持っていたのはフィアの"母親"ネリアが大切にしていた指輪。
フィアは母親の指に光るそれを幼い頃から見ていた。
だってそれは、ネリアがロードにもらった結婚指輪だったから。
普段、いつも彼女がそれを身に着けていたことは知っている。
穏やかに微笑むネリアの左手の薬指に光る蒼い指輪は、
今もフィアの記憶の中に鮮明に残っている。
フィアの両親が死んだとき、両親に関するものは全て燃えてしまったと、
そう思っていたのに……
「どうして、どうしてこれが、此処に……?」
フィアは震える声を隠して、訊ねた。
イブは穏やかに微笑んで、言う。
「彼女たち……貴方のご両親が亡くなってすぐ、家の焼け跡から見つかったそうなの。
ネリアが逃げる途中に落としたのか、偶然外していたのかはわからないらしいけれど……
貴方を助けた騎士様が、拾ってくれたらしいわ。
本当は、すぐに返そうと思っていたのよ。
でも、あの後、貴方はずっと泣いていたし、
折を見て返そう、と思っていたら、騎士になって働いているというから……
どうしよう、と思ったわ。
せっかく立ち直った貴方にこれを返すことで
もう一度悲しいことを思い出せてしまうのではないか、って思ってね。
それに、貴方の意志を揺るがせてしまうのではないか、という危惧もあった……
でも、結局はそれとは別の理由で返すのをやめることにしたのよ。
貴方は一人で立っていた。一人で、未来を見据えていたから。
だから……この指輪が、貴方のせっかくの意志を壊してしまうのなら、
まだ返すべきではない、とそう思ったのよ。だから、今まで私が持っていたの」
手に持っていたその箱に指輪を戻して、フィアの手に持たせながら、イブは言った。
「でも、もう返さなければならないわ。これは、貴方の母親のもの。
そして、いずれは貴方に渡したいと言っていたものなのだから」
「え……」
イブの言葉に、フィアは驚いた顔をする。
そんな話は、一度も聞いていない。
否、それは致し方ないこと。
フィアの両親が死んだのは、フィアがずっとずっと、幼い時のこと。
「ネリアは、言っていたわ。
"いつか、フィアが大きくなったら、この指輪をフィアに渡したいの。
きっと、彼女を守ってくれるお守りになるわ。ロードが私を思って贈ってくれた指輪だから"って。
ロードもそれに賛成していたのよ?」
「母さんと、父さんが……」
フィアは手に乗せられた箱をじっと見つめ、呟く。
「もう一つ、これがロードの指輪よ」
微笑むイブの手によってフィアの手の上に置かれたのは、もう一つの箱。
それの中にも、同じような指輪が入っていた。
そして、無論それはフィアの"父親"、ロードの指でいつも光っていたもの。
ネリアの指輪より少し大きなそのリングには紅玉(ルビー)がはまっていた。
「二つとも、貴方が持っていなさい。貴方は大きくなったわ。
ネリアのその指輪も、今の貴方の指にピッタリでしょう」
優しく微笑んで、イブはフィアの頭を撫でた。
フィアは二つの箱を抱いて、頷く。
小さく"ありがとうございます"というのが限界だった。
澄んだ蒼い瞳から、涙が溢れて零れる。
イブは気づかないふりをして"じゃあ、先にリビングに戻っているわね"といった。
「母さん、父さん……っ」
抱きしめた、小さな二つの箱。
その中に収められた、少し傷のついたリング。
大切な、両親の形見……
フィアはそれを抱いたまま、久しく流していなかった涙を、溢した。
母を思い、父を思って泣くことは、フィアにとっては禁止事項で。
弱いままではいけない、両親を心配させてはいけないと封印してきた、涙。
暖かくて優しい涙が、フィアの頬を伝っては落ちていた……
***
一方。
ルカとルイは二人で話を続けていた。
と、そこに戻ってきた、イブ。
ルカは顔を上げ、首を傾げた。
「……母さん、フィアは?」
一人で戻ってきた母親を見て、ルカは怪訝そうな顔をする。
イブはふっと笑って、"あの子に渡すものがあってね"と返答した。
ルイはその言葉の意味を理解したのだろう。
"ようやく返せたね"と微笑んだ。
「何を?」
「フィアのご両親の指輪を、だよ」
「指輪?」
「あの日……フィアちゃんのお家から見つかった、ご両親の結婚指輪。
ずっと、私たちが持っていたの」
イブの言葉にルカは小さく、"そっか"と呟いた。
フィアの心情が、そして今フィアが戻ってこない理由が、ルカにも理解できた。
「なぁ、ルカ」
「何だよ、親父」
不意に真剣な声色で呼ばれ、ルカは背筋を伸ばす。
ルイは、息子の瞳をまっすぐに見据えながら、問うた。
「フィアを、ちゃんと守れ」
「……わかってる」
「本当に?」
まっすぐに見つめられ、ルカは少し目を伏せる。
そして、ぼそりといった。
「……守りたい、とは思ってるよ。でも、アイツがそうさせてくれない」
―― 強くあろうとするんだ、何処までも。
「俺が守ることを、良しとしてくれない。アイツは、一人で強くなろうとする。
今回だって……俺たちを守るために、アイツは一人で全てを終わらせようとした」
震える、ルカの拳。
思い出すのは、あの日、あの瞬間。
何の相談もなく。
手助けをさせる暇も与えず。
ルカたちの自由を奪い、自分一人で魔術を使って……
フィアは一人で、全てを終わらせようとした。
"本当ならば"、フィアは本当に、いなくなっていた。
またこうして会うことも、笑いあうことも、出来なくなっていた。
ルカの言葉に、ルイは顔を顰めた。
そしてそのまま、ルカの頭を叩く。
「だからなんだ。助けを求められずとも助けてやるのが男ってもんだろう?」
その言葉に、ルカは目を見開いた。
瞬きを繰り返すルカを見て、ルイはふっと表情を緩め、その黒髪を撫でた。
「拒絶されようが何だろうが"守りたい"と思う気持ちがあるなら、そうしろ。
そうでないと、騎士は務まらない」
「……そうだな」
ルカも笑い返す。
そうだ。
もともと、そのつもりだったじゃないか。
"彼"が望もうとも、望まざろうとも、自分が守ろうと、そう思っていたじゃないか。
今更、迷う必要なんてない。
ルカはそう思い、一度目を閉じる。
そして、再びその目を開くと、立ち上がった。
「あら?何処行くの?」
きょとん、とするイブ。
ルカは笑って、"フィアのとこ"といった。
「多分、だけど……
"一人になりたいけど独りになりたくない"って気持ちだと思うんだ。今のアイツ」
ルカの言葉に、ルイは笑った。
イブもふふ、と笑う。
ルカはフィアがいる部屋に、向かった。
***
「フィア」
未だ震えている後ろ姿に声をかければ、びくりと強張るフィアの身体。
すぐにぐいぐいと眼を擦るのがわかり、ルカは苦笑する。
「目ェ擦るな。痛くなるぞ」
「な、泣いてない、からなっ」
「はいはい、わかってるわかってる」
微妙にしゃくりあげている震え声では説得力も何もあったものではないのだけれど、
ルカは笑いながら、そう返答する。
フィアは恨めしそうに顔を上げ、ルカのルビーの瞳を見つめた。
「何しに来たんだよ、馬鹿ルカ」
「顔合わせるなり馬鹿っていうなよ。……なぁ、外いかねぇ?」
「外?」
フィアはますます怪訝そうな顔。
若干、不機嫌そうな顔でもある。
「……嫌だよ、こんなみっともない顔で」
「泣いてないんだろ?何がみっともない顔だ」
挑発的にルカが言う。
フィアはその言葉を聞いて、暫し黙り込んだ。
返す言葉が、ない。
「……わかった。行こう」
むっとした後、フィアはもう一度目を拭い、立ち上がる。
くらり、と視界が歪んだ。
「おっと……大丈夫かよ」
ずっと座っていたためにふらついたフィアの体を支え、ルカは笑う。
フィアは顔を赤くして、ルカの身体を押しのけた。
「へ、平気だ!ほら、行くぞ!」
ぐいっとルカの手を引く、フィア。
ルカは笑いながら従妹に手を引かれ、外に出る。
見慣れた景色。吸いなれた空気。
二人で育ったこの村での思い出は、お世辞にも穏やかなモノばかりではないけれど。
それでも、二人とも……
「俺、この村が好きだ」
同時に、同じことを呟いた。
驚いたように顔を見合わせ……笑い出す。
そして、フィアはポケットから指輪の箱を取り出した。
「ルカ」
「ん?」
「これ、お前が持っていてくれ」
「え?これ……」
フィアがルカの手に握らせたのは、ロードの指輪が入った箱。
ルカは驚いた顔をして、フィアを見る。
「これ、お前の親父さんのだろう?俺なんかに渡してどうする」
「俺は、母さんの指輪を持っている。
もう一つの……父さんの指輪は、お前が持っていてくれ」
「何で?」
"俺がアクセサリーつけないことは知ってるだろう"とルカが問う。
フィアは頷いてから、顔を伏せた。
僅かに赤くなる、その頬。
「俺は……お前に、持っていてほしい。
きっと、父さんと母さんが、俺たちを守ってくれる……
俺は、父さんたちに、お前を守ってほしいと、そう思うんだ……」
つっかえつっかえに言うフィア。
しかし、その気持ちは十分にルカに伝わっていた。
ルカは嬉しそうに微笑み、それを受け取る。
「……そうかよ。さんきゅ。大事に、するから」
「大切にしなかったら、怒るからな」
「わかってるよ」
苦笑気味にそう言って、ルカはその指輪を上着のポケットにしまう。
彼がこの指輪を身に着けることは、まずないだろう。
しかし、大切にするという言葉は、真実だった。
フィアは、自分が持った母の指輪の箱から指輪を取り出し、自分の指にはめる。
細いフィアの指に、ピッタリの蒼い石の指輪。
フィアはそれを見つめ、微笑んだ。
「なぁ、フィア」
「何だよ」
「否、やっぱり何でもねぇ」
「はぁ?」
変なルカ、と呟いて、フィアは空を見上げる。
少しずつ表情を変えていく夕空を見上げるサファイアの瞳。
―― 俺が、守ってみせる。
ルビーの瞳の少年は静かに、誓う。
拒絶されようとも。
お前の助けは不要だと言われようとも。
守りたい、助けたいという思いがある限り、絶対に守り抜いて見せる、と。
ポケットに手を入れ、先刻フィアから受け取ったロードの指輪を取り出す。
そのまま、そっと自分の指にはめた。
普段絶対に身に着けないそれは酷く違和感があったけれど……
どういうわけか、安心できる。
ルカは、ふっと微笑んで、フィア同様に、空を見上げた。
―― Ring and Link ――
(守ってください。俺を。俺の大切な家族を……)
(彼の両親の想いと、俺の思いがリンクする)
性 別 | 女性 |
年 齢 | 29 |
誕生日 | 7月27日 |
地 域 | 静岡県 |
系 統 | おとなしめ系 |
職 業 | サービス |
血液型 | AB型 |