フィアとアルのお話です。
夏の日にへばってるフィアを書きたかったのと、
最近出番が少ないアルを書いてあげたかったのでした…←
フィアはルカが居ないとこだと「あの鬼教官」とか言いそうなのです(笑)
こういうほのぼのも好きです←
ともあれ追記からお話です!
広い食堂。
昼食時間を過ぎたその場所は少し人も少ない。
そこにあるテーブルの一つ。
それに突っ伏しているのは亜麻色の髪の少年。
彼……フィアは先程まで訓練で外に居た。
炎天下での訓練。
それは決して楽なものではない。
「あの……鬼統率官が……」
フィアはテーブルに突っ伏したまま、小さく呟く。
彼の額には薄く汗がにじんでいた。
無論鬼統率官と彼が言ったのは、自身の従兄であるルカの事。
先刻の訓練時間に、彼に散々しごかれたのである。
フィアは氷属性魔術使い。
この炎天下での訓練は少々辛いものがある。
そんな体質も考えて、少しくらい手加減してほしいところなのだが、
生憎その統率官、ルカは魔力が極端に弱い。
つまるところ、氷属性魔術使いとは違って、そこまで暑さに弱くない。
だから、容赦なく部下たちに"指導"したのだった。
おかげでフィアは完全にバテて、こうして潰れているのである。
最も、その訓練の間はぴしっとしていたけれど。
どれだけきつい状況でも周囲にみっともない姿を晒さないのがフィアだ。
「はぁ……」
彼が机につっぷしつつ、深々と溜め息を吐き出した時、
その頬に誰かがぴたりと氷水の入ったグラスを当てた。
フィアは小さく悲鳴をあげて、顔を上げる。
そんな彼を見て、グラスを当てた相手……アルはくすくすと笑った。
「大丈夫?フィア」
人懐っこく笑いながら、アルはフィアに問いかける。
フィアは彼の言葉と行動に何度か瞬きをした後、答えた。
「あ、アル……驚いた」
フィアは小さく息を洩らしつつ、苦笑した。
他人……殊更仲間の気配には敏いフィアなのだが、
今は完全にバテて感覚も鈍ってしまっているのだろう。
情けないな、といって笑うフィアを見て、アルは少し心配そうな顔をした。
「大丈夫?」
「あぁ、平気だ……
水持ってきてくれたんだな。ありがとう」
助かるよ、といってフィアはそれを受けとる。
アルは微笑んで"いえいえ"といった。
「それにしても、珍しいね。
フィアがそこまでバテるのも」
アルは苦笑しつつそういった。
彼もよく知るフィアは、プライドが高くて強い。
周囲に弱った姿は見せず、何よりそうそう弱ったりしない。
並みの男より体力があるのではないかと思うほどだ。
だからこそ、そんなフィアがこうしてバテているのが珍しく感じる。
アルがそういうと、フィアは小さく笑った。
そしてひらりと手を振りつつ、いう。
「俺も超人ではないからな……人並みにバテるさ。
挙げ句、今日は暑すぎる……」
俺には耐えられん、といってフィアは机に再びつぶれた。
アルも暑さにはあまり強い方ではないが、フィアほど弱くもない。
「大変だね、フィア……熱中症にならないように気を付けてね?」
医者として、そして何よりフィアの親友として、アルは心配そうにそういう。
フィアは彼の言葉に微笑んでうなずくと、くしゃりとその頭を撫でた。
「あぁ、気を付けるよ……アルも、あまり無理をしないようにな?」
お前もたまに外に出る任務が有るだろう?とフィアは彼に言う。
確かにその通り、アルも薬草を摘みにいったり、買い出しにいったりで外に出る。
アルは彼が自分を気にかけてくれているのが嬉しいらしく、
にこにこと笑いながら、何度何度も頷いた。
「じゃあ、僕はいったんジェイド様の所にいってくるね。
フィアも、汗かいてるならシャワー浴びないとダメだからね!」
アルはそういうと部屋から出て行く。
フィアはそんな彼を見送ると、ふわりと微笑んで、彼が持ってきてくれたグラスを傾けた。
―― Summer day! ――
(心配するのはお互い様?)
(暑い日差しの下なんだからお気をつけて!)
2014-7-31 17:26