西さんとメイアンのお話です。
西さんの過去?記憶?を書きたくて…←
*attention*
西さんとメイアンのお話です
シリアスなお話です
でもラストは甘めです
西さんの記憶に関するお話です
西さんが硫黄の臭い苦手な理由は…
以前は話せなかったことを話すっていいなと(^q^)
メイアンはそれを聞けたら喜ぶだろうなと←
相変わらずの妄想クオリティ
ナハトさん、本当にすみませんでした…!
以上がOKと言うかたは追記からどうぞ!
ディアロ城とは少し違う造りの、建物。
その一室に西はいた。
彼の傍にいるのは長い金髪の男性……メイアン。
彼は束ねた書類を封筒に入れている。
そんな作業を横で見つつ、西は小さく呟くようにいった。
「久しぶりにきたな、メイアンの仕事場……」
そう。
此処は、イリュジア王国警察本部。
つまるところ、メイアンの仕事場である。
魔術研究を元に犯罪捜査を行う彼の仕事場は、警察署と言うよりは研究室に近い。
そんな此処に来るのはかなり久しぶりだった。
メイアンも西の言葉にふっと微笑む。
そして、懐かしそうな顔をしつつ、いった。
「そうね、初めて此処に来たときにはまだこんな関係になってなかったし?」
そう言いながら、彼は軽く西の頬にキスをする。
不意打ちだったために完全に固まった西だったが、
すぐに顔を真っ赤にして、メイアンに抗議した。
「っ、いきなりそういうことすんな!」
「そういうことって?」
しれっとした表情を浮かべつつ首をかしげる彼。
西はうっと言葉に詰まった。
お世辞にも口上手とは言えないし、そういった俗っぽい話に耐性はない彼。
暫し視線を彷徨わせた後、彼は呟くような声でいった。
「き、キス……」
彼の言い方に、メイアンは目を細める。
そして、くすっと笑いつつ、いった。
「ふふ、照れながら言うの、可愛い」
少しからかうようなメイアンの口調に、西はむくれる。
しかしすぐに諦めたように溜め息を吐き出した。
メイアンの癖や性格は大分よくわかるようになってきた。
こういう時に幾ら反撃を試みても無駄だと言うことは、理解済みだ。
と、西は周囲を見渡した。
そして、きょとんとしたように首を傾げてメイアンに訊ねる。
「あれ、お前の部下……レーシーは?」
この研究室にいつもいるはずの幼い少年の姿が見当たらない。
一体何処にいるのかと、西はメイアンに問いかける。
メイアンはその言葉に小さく頷くと、いった。
「ちょっとおつかいにだしてるの。そのうち帰ってくるわ」
そういいつつ彼は書類をきっちりと片付ける。
そしてふっと笑みを浮かべつつ、いった。
「何だか嬉しいなぁ……
西が此処にいてくれるの」
お仕事中なのにね、とメイアンは笑う。
そんな彼を見て少し頬を掻きながら、西はぼそりと呟いた。
「……ちょっと遊びに来ただけだ」
「それが嬉しいの」
メイアンはそういって、西の頬をつついた。
そして、作業を始めて……ふと、その手が止まる。
「……あ」
小さく声を漏らすメイアンに、西は首をかしげる。
どうした?と問いかける彼を見つめながら、メイアンは口を開く。
「……ねぇ、西」
「?なんだ?」
何だか真剣な声色で、西は少し身構える。
メイアンは彼をまっすぐに見つめつつ、静かな声でいった。
「前に此処に来たとき、ちょっと事故があったでしょう?
あのとき……西、硫黄の臭いが苦手だっていってたわよね」
「?……あぁ」
西は怪訝そうな顔をしつつ、頷く。
そのときのことは、西もしっかり覚えていた。
そんな彼の様子を見て、メイアンは少しだけ迷うような表情を浮かべた。
そして、躊躇いを滲ませた表情のままに、いった。
「あれがどうしてか、教えてくれる?
同じことが起きないように、同じ状況を作らないようにしたいの」
ずっと気にかかっていた。
あのときの西の怯えかたは、普通ではなかったから。
あのときは、どうしてかと聞いても明確な答えがもらえなかったけれど、
今ならば……恋人同士になれた今ならば、教えてくれるのではないか。
そう、思ったのである。
西はメイアンの問いかけに、幾度かまばたきをした。
そして、少し迷うような表情を浮かべる。
言うべきか、否か。
しかしその迷いは、すぐに消えた。
彼はメイアンを見つめる。
そして、静かな声で問いかけた。
「……俺が、"フラグメント"だってのは、知ってるんだよな」
彼の言葉にメイアンはこくりと頷く。
「えぇ、ジェイドたちから聞いているし」
ディアロ城騎士団には所謂フラグメントがたくさんいる。
だから、騎士たちと交流があるメイアンもその存在は、知っていた。
そういいながら、メイアンは小さく頷く。
西は彼を見つめる。
そして、その視線を逸らすと溜め息をひとつ。
そして、遠い昔を思い出すような顔をしつつ、いった。
「俺のオリジナルが死んだのが、硫黄の臭い立ち込める孤島だったんだ」
「え……」
思わぬ言葉にメイアンは目を見開く。
西は彼の方を見ない。
見たら、言葉をそれ以上紡げない気がした。
ふ、と表情を変える彼。
昔を懐かしむというには悲しげな、表情。
そのまま彼は、言葉を紡いだ。
「そりゃまあ、悲惨だったぜ?
上官に10人殺すまで死ぬなとか、自決は許さんとか言われるし、
最後の一兵になるまで島を守れと……」
自分に焼き付く、オリジナルの記憶。
硫黄の臭い立ち込める島。
死んでいく仲間たち。
上官の怒号。
そう。
あのときのことが、トラウマになっているのだ。
例え最期の一人になろうとも、逃げることは許さない。
そんな、境遇。
「……確実に訪れる結末は解ってるのに、な」
どうなるか、わかりきっていた。
……敗けは、見えていた。
それでも、逃げることは許されなくて……――
そんな西の言葉にメイアンは目を伏せた。
聞いた、彼の記憶はあまりに辛く。
それを語る彼の表情が目に焼き付いて……
それに、西も気がついた。
だから、慌てたように、すまなそうに詫びた。
「……悪い、こんな……」
こんなことを言い出してすまない、と。
彼は、そういいかけた。
しかしその言葉は最後まで紡げなくて……――
その理由。
それは、メイアンに強く抱き締められたから。
彼がまとめていた資料が机から落ちて音をたてる。
西は大きく目を見開いた。
「……メイアン?」
「嫌いになって、苦手になって、当然よね、そんなの……」
ぽつり、とメイアンは呟くように言う。
その言葉に西はまばたきをする。
そんな彼の背を撫でながら、いった。
「自分が死んだ場所の臭いってだけでも嫌でしょうに……
そんな記憶があるなら……なおのこと」
いっそう、辛かったでしょうに。
あのとき……――
あれだけ怯えた理由が、わかった。
「……ごめんなさいね」
改まったように詫びるメイアン。
彼の言葉に西は大きく目を見開いた。
それから、苦笑混じりに言う。
「な、何を今さら……
仕方ないだろ、だって前の時は……
俺も、話さなかったし」
仕方ないだろ、と彼は言う。
西の言葉にメイアンはふっと笑って、いった。
「それもそうなんだけど……改めて、ね。
それに……」
そこでメイアンは一度口をつぐむ。
それから、いった。
「不謹慎だってわかってるんだけどね……
貴方がそうして私にいろんなことを話してくれるのが嬉しいの。
……ありがとうね、西」
改めてそういうメイアン。
西は彼の言葉に戸惑いの、照れの表情を浮かべた。
「そ、んな……礼言われることじゃ、ねぇし……」
調子狂うな、と彼は呟く。
彼を見つめて緑の瞳を細めつつ、愛しげに撫でながら、メイアンはいった。
「ふふ……貴方のことを色々知れるのが、私は嬉しいのよ」
こんな悲しいことでも。
苦しいことでも。
そういうことを共有出来るのが嬉しいと、メイアンは言う。
西はそんな彼の言葉にまばたきをした。
そして、照れたように頬をかきつつ、呟く。
「……そう、か」
そういってくれるのは、嬉しい、かもしれない。
そうぼそり、と呟く彼。
そんな照れた様子を見つめて微笑みながらメイアンは彼の頬にキスをする。
"もっと色々教えてちょうだいね?"と柔らかな声でいったのだった。
―― 今ならば… ――
(あの時は、言えなかった、言わなかったこと
今ならばこうして、伝えることが出来る)
(あのとき彼がいっていた通り、聞いて楽しい話ではなかったけれど
それでも、貴方の記憶を共有できて嬉しかったのよ…)