久々?のフォルスタSSです。
方向性を見失ってしまった感が満載ですみません;;
でも、この二人のシリアスっぽい→甘い雰囲気を書くのが楽しいです。
久々にフォルスタかけて、幸せです(*´∀`*)
☆attention☆
・フォルスタSS(若干BLです)
・そういえばフォルはスターリンさんのこと細かく知らないよな、と。
・フォルは堕天使です。空を飛べます。
・とりあえず、グダグダでごめんなさい…
・ナハトさん、本当にすみませんでした!!
以上がOKという方は追記からどうぞー!
「はぁ……」
スターリンは憂鬱そうに溜息を吐いて、仕事内容を確認する。
何度見ても、内容と場所は変わらなかった。
否、内容というより、場所が問題なのだ。
決して難しい任務ではない。
少々増えすぎた魔獣を駆除しに行くのだ。
大して強いものではない。しかし、放っておくには数が多く、
他の騎士を向かわせるのも何だ、ということで自分で行くことにした。
のだが……任務の場所が此処から、少々離れている。
マリティンは広大な土地故に行かなければならない地域だって広域にわたる。
つまるところ、移動距離が半端ではない。
それが、スターリンの悩みの種であった。
***
「フォル、俺仕事行くけど……一緒に行くか?」
とりあえず、任務に行かないことには始まらない。
スターリンは自室に戻り、そこにいる堕天使に声をかけた。
別に仕事を手伝うわけでもなし、声をかける必要もないのだけれど、
スターリンが何も言わずにおいていくと拗ねるのが彼。
ついでに迷子癖は治ったといい難く、未だにあちこちで迷子になる。
拗ねた挙句に家出、などといったことをされては困るのだ。
……何をどう困るのかは、スターリンにもよくわかっていなかったけれど。
"行くか"と訊ねれば案の定、フォルは顔を輝かせてぴょんと立ち上がった。
「行く!暇だし」
「……暇、で仕事に着いてくるのもどうかと思うけどな」
「いいじゃん。暇なんだよ。書記長様が最近全然部屋に居ないから」
「フォル、お前俺の立場忘れてるだろ……」
呆れた顔をするスターリン。
フォルは笑顔を浮かべたまま"書記長様は書記長様だよ"と答えにならない答えをする。
部屋に一人でいるのって退屈なんだよ、などと言いながらスターリンの傍に来るフォル。
首についたチョーカーが小さく音を立てて、まるで犬か猫のようだ。
笑顔で隣を歩くフォルを見ながら、呼ばなければよかっただろうか、
そう思いつつスターリンは外に出る。
フォルは歩きながら"何処に何しに行くの"とスターリンに訊ねた。
場所を告げれば、きょろきょろと辺りを見渡すフォル。
スターリンはフォル?と声をかける。
「なにしてるんだ?」
「え?移動手段探してるんだけど」
「……歩きと魔術だ」
きょとんとしたフォルに、そっけなく返す。
スターリンの返答に、フォルは驚いた顔をした。
そして、笑う。
「この距離を?日が暮れるどころか夜が明けるよ」
「……それを承知の上だって。だから俺も行きたくないのだよ……」
暗鬱そうに呟くスターリンをまじまじと見つめてから、フォルは首を傾げた。
「馬は?」
「え」
「馬。ディアロの騎士様たちはみんな馬移動だったでしょ」
「……馬は、使わない。向こうでも俺は、使わなかったしな」
そっけなく答えるとスターリンはぷい、とそっぽを向いた。
―― 馬は、好かない。
それを素直に口に出してしまえばよいのかもしれない。
しかし、それを告げるのは、スターリンのプライドが許さなかった。
好かない。寧ろ、嫌いだ。
それは、彼……スターリンの"オリジナル"の経歴に関わりがあるのだが……
―― そういえば……
そもそも、フォルにはまだ細かい説明をしていない。
オリジナルとは何か、フラグメントとは何か。
そもそも、自分が"何"なのか。
フォルが何をどの程度知っているのかは不明なのだが、
好き好んで説明したい話でもない。
寧ろ、出来る事ならば避けたい話題ではあった。
口を噤むスターリンを見て、"何で?"とフォルは質問を重ねようとしたが……やめた。
スターリンの手が、腕を軽く押さえているのが目に移ったから。
一つ息を吐いてから、空を見上げる。
「ふーん……そ。それなら、まぁいいんだけど……
でも、本気?歩くにしたら距離長すぎるし、
魔術使うにしても、書記長様そこまで得意じゃないでしょ、空間移動魔術」
からかうような口調に、スターリンはむっとする。
「うるせぇ。ごちゃごちゃいうなら、置いてくぞ!」
本気で日が暮れる、と言って歩き出したスターリンの腕を掴んだのは無論、フォルで。
何だよ、と睨み付けるスターリンをものともせず、ニコリと微笑んで見せた。
「手伝って、って言ってくれれば早いのにさ」
「は?」
何のことだよ、とスターリンは訊ねる。
手伝うも何も、歩くのに変わりはない。魔術を使えば速いのだろうが……
「寒いときは魔術使いたくない、ってお前が言っただろう?」
「言ったね。魔術使うのは嫌だよ。でも、書記長様大事なこと忘れてない?」
「大事なこと……?」
焦らして物事を伝えるのはフォルの悪い癖だ。
さっさと言えよ、とスターリンが促すと……フォルはにっと笑った。
それと同時に、ばさっと大きな音がする。
強くなった魔力でフォルが腕に着けていた抑制機と思しきものが壊れて雪に落ちた。
同時に、黒い羽が数枚雪に舞った。
「な……」
「僕は堕天使ですよー書記長様」
黒い大きな翼を羽ばたかせつつ、似合いもしない敬語を使ってみせる。
理解不能な彼の行動に呆れて、スターリンは溜息を吐いた。
「……お前なぁ」
「何?気に入らない?この姿。僕もあまり好きじゃないけどね……」
「気に入る気に入らないの問題じゃないだろ……それで?何するつもりだよ」
スターリンが問いかけると、フォルはより一層笑みを濃くした。
"よく聞いてくれました"という声と同時。
ひょいとスターリンを抱き上げる。所謂、お姫様抱っこ、で。
そのまま、強く地面を蹴った。
浮遊感。風を切る感覚。一気に地面が遠くなる。
空を、飛んでいるのだ。
スターリンがそれを理解するのに、少し時間がかかった。
「う、わぁぁっ?!」
「この方が、速いでしょ。魔力も使わないし?道はどっちだっけ、書記長様」
ね?とフォルは無邪気に笑う。
―― 少し、困らせてみたいだけだった。
誰だっていきなり抱きあげられて空を飛ばれれば驚くだろう。
その程度の考えでやったのだが……
拒否するスターリンの声は、余裕のないものだった。
「や、やだ、やめろ下せ!!」
「書記長様?」
「おろせ、降りろ……頼むから」
声が、微かに震えている。
フォルは幾度か瞬きをしてからゆっくりと下に降りた。
地面に足をつくと、その場に座り込むスターリン。
フォルは驚いてそれを支える。
「ごめんね、そんなに怖かった?」
「……馬鹿、フォル」
キッと琥珀の瞳がフォルを睨む。
しかし、怒りというよりは怯えの方が勝っているようで……
フォルはじっと、その目を見つめた。
暫く睨み返していたスターリンだが、
フォルのサファイアの瞳を見つめ返すうちに……
ぼす、とフォルの胸に顔を埋めた。
小さく震える彼を抱きとめたまま、フォルは小さく呟いた。
「まったく……案外怖がりなんだよね、書記長様」
「うる、さい」
「……言ってくれなきゃわかんないよ。僕、超能力者じゃないからさ」
―― 言ってくれなきゃ解らない。
その言葉は、切実なモノであった。
悪魔でもフォルが知っているのはフィアが見ていた景色であり、人物である。
多少は人の心理を探ることも可能だが、
過去を知ったり、深層心理をのぞいたりなどといった高度な技術は持ち合わせていたない。
何が好きで何が嫌いか。
それは、本人に言われなければ知りえないことなわけで……
スターリンも、それは知っていた。
しかし、全てを晒すのが怖くもあり、不安でもあった。
だからこそ、中途半端に距離を保っている。
フォルは小さく溜息をついて、言った。
「まぁ、言いたくないことは言ってくれなくてもいいんだけどさぁ……
こういうこと起きるの嫌なら、ちゃんと言ってよね」
フォルはそういうと、よしよし、とスターリンの頭を撫でる。
スターリンは幾度かそれを振り払おうとしたが、無論、フォルはそれを許そうとしない。
笑っているのが、声でわかる。
「怖がらせちゃったお詫びだよ」
「いらねぇよ、んな、お詫び……」
スターリンのくぐもった声が返ってくる。
フォルはくすくす、と笑ってから黒い翼でスターリンを包む。
その柔らかさに、温かさに、どういうわけか安心した。
フォルは静かな声で、言った。
「もう勝手に飛ばないよ。でも、移動手段は考えなきゃだめだね」
"一回一回遠くの任務の度に歩いたり魔術使ったりじゃ体壊すよ"とそういって、
フォルは顔を上げたスターリンに笑みを向ける。
「とりあえず、今日は僕が運んであげるけど……
飛ぶのになれるか、馬に乗れるようになるかどっちか選んでよ?」
「え?」
フォルの言葉に図らずとも一瞬、怯えたような顔をしたスターリン。
フォルは小さく笑って、首を振る。
「飛ばないよ。空間移動魔術。
その代わり……帰ってからつぶれたら、書記長様が面倒見てね」
言うや否や、フォルはスターリンを抱き上げなおす。
今度は、優しく。
スターリンは慌てた顔をした。
彼の言葉通り、距離が長くなればなるほど、空間移動に使う魔力は大きくなる。
魔力の調整が超絶下手なフォルにそれをやらせればどうなるかなど、簡単に想像がつく。
「でも、フォル……」
「拒否権なし。その代わり魔獣倒すのは手伝えないから、一人で頑張ってね。
代金は……これでいいよ」
ちゅ、と軽く音を立ててスターリンの額にキスを落とすと、フォルは魔術を発動させる。
先刻の、空を飛ぶのとは別の浮遊感に、スターリンはフォルにしがみつく。
フォルが小さく笑った気がした。
―― 怖がりな君に。 ――
(案外怖がりで、意地っ張りな君の好きなものは?嫌いなものは?
僕に、教えてよ……僕は、君に聞かないとわからないから)
2012-11-29 22:37