久々(?)のフォルスタです。
あ、どうしよう。とんでもなくシリアス&スターリンさんがダーク思考に…
とりあえず、毎度のことながらアークの騎士はぶん殴ってやってください(おい)
*attention*
・フォルスタSSです
・シリアスです。どシリアスです。
・スターリンさんに本当に申し訳ない
・フォルはスターリンさんのためならきっとなんでもします
・W堕天使姿を書いてみたかったんです(本音)
・とにかく、ナハトさん本当にすみませんでした…!
以上がOKという方は追記からどうぞー!
「よ、っと……」
フォルはふわり、と彼の部屋に着地した。
なれた空間移動術。
部屋の外に魔力がもれないように気をつけて。
そして、驚いた顔をした。
まだ部屋に戻ってきていないだろうと思っていたスターリンが、既に部屋にいたから。
彼はベッドに寝転んでいた。
フォルはニコリとわらって彼に言う。
「書記長様、帰ってたんだ。早かったね?」
声をかけつつ、ベッドに歩み寄るフォル。
しかし、スターリンは小さく手を挙げて"おかえり"といっただけだった。
そんな彼の反応を見て、す、とフォルは目を細める。
「何か、あったの?」
「……何も。疲れた、だけだ」
スターリンはそっけなく答える。
そう、疲れていた。その言葉はあながち間違いではない。
ただ、それは任務の所為でも、訓練の所為でもなく。
心身ともに、疲れ果てていて……
―― もう、何も考えたくない。
そんな感情で、いっぱいだった。
***
―― それは、昼間のこと。
スターリンはルカに頼まれてアークの騎士たちの訓練を見ていた。
ルカはどうしても外せないセラの仕事があるとのことで、
普段ルカの代わりを務めるフィアとシストも任務で不在。
そんなわけで今日偶然空いていたスターリンが見ることになったのだが……
人数を数えてみると何人か足りない。
時々、訓練があることを忘れる騎士がいるという。
そういう場合は軽く叱ってやればいいと言うルカの言葉の下、
スターリンは足りないメンバーを探しに行ったのだった。
自分たちより少し弱い魔力を探せばいいだけの話。
すぐに、"彼ら"は見つかった。
訓練をしていた修練場から少し離れた、裏門の傍。
そこで足りなかった数人の騎士が座り込んで話していた。
どうやら、忘れているわけではなく"サボって"いるらしい。
スターリンが溜息をついて彼らに声をかけようとしたとき。
「嫌だよ俺は。ルカ様の代理であの人が訓練監督?ふざけんなよって話だ。
得体の知れない、信用できるかどうかもわかんないような人に訓練させられるなんて
絶対にお断りだね……叱られたって知るもんか」
ぼそり、と誰かが言ったのを聞いた。
あゆみかけた足を止める。
彼らの位置からスターリンのいる場所は死角で見えないだろう。
だから、そのまま話を続ける。
どうやら、彼らの話の中心はほかでもないスターリンのことのようだった。
「だって、一度あの人はルカ様たちを傷つけたことあるんだろ?
失敗とかしたら何かされそうで、嫌だ。怖いよ」
「あ、俺もそれ聞いた」
「何で至って普通に帰ってきてんだろーな。
普通に同じ部隊に居させてるルカ様もお人よし、っていうか」
「フィアさんと仲いいからじゃね?ルカ様はあの人の従兄だし、
あの人の"友達"を追い出す気にはならないだろ」
「フィアさんがほんとに"友達"と思ってんのかもわかんねぇけどな」
ふん、と鼻で笑うような言葉でアークの騎士たちの会話は一時停止する。
"友達"という言葉には明らかな刺が含まれていた。
彼らが示しているのはかつてのできごと。
細かいことはルカもフィアもヒトラーたちも話していないはずだが、
"噂"は必ず流れる。
それを聞いた事情を知らない騎士たちは、感じるだろう。
"仲間"と思っていたルカたちを傷つけた、裏切り者、と。
あれはオリジナルの意識であったとはいえ、それは否定できない事実。
いつ同じことが起きるとも限らない。
―― フィアさんがほんとに"友達"と思ってんのかも……
なにより、最後のその言葉が、スターリンの頭に残った。
そんなはずはない。フィアはそんな人間(やつ)じゃない。
そう信じているのに。
……信じている、はずなのに。
不安になり、心の何処かで疑ってしまう自分がいた。
もしかしたら、そうなのだろうか。
自分を"仲間"などと、思っていない?
"必要ない"と、思っているのではないだろうか。
そんなことを考えては自己嫌悪する。
そして、そんな騎士たちの一人が"とどめ"の言葉を吐いた。
「フィアさんがどうとか関係なしにさぁ……
あんな人を本気で好きになる人なんているわけないよ。
俺、あの人が雪狼の統率官だったりしたら絶対騎士団やめるね」
「あ、同感」
あはは、と笑う声。
―― 本気で好きになる人なんて……
無意識のうちにスターリンはぐ、と固く拳を握っていた。
爪が手のひらに刺さり、血が流れる。
そこからどう行動したのか、スターリンは覚えていない。
***
予想以上に彼らの言葉に傷つき、絶望している自分がいた。
何かを言い返す気力もわかず、なにか考えようとも思えず。
思い返すは、自分の幼少期。
ほかの騎士たちが話すような、穏やかなものとはかけ離れた記憶。
"愛情"?
"家族の絆"?
そんなものを、自分は……知らない。
そんなことばかりが頭を巡ってしまって。
―― もう、何も考えたくない。
目を閉じたまま、スターリンはそう思う。
「書記長様、ったら……」
フォルが何度呼んでもスターリンは返事をしなかった。
寝たふりをしているうちにフォルも飽きて離れるだろうと思ったのだ。
今は、彼の言葉に素直に答えることさえ億劫だった。
不意にぴた、とスターリンの額に触れた冷たい手。
スターリンは薄く目を開けた。
無論、その手はフォルのもので。
真っ直ぐに、ベッドに寝転ぶ彼を見据えるフォルの瞳が少し光る。
冷たい、氷のような瞳。それが一瞬、細められた。
「……そういう、ことね」
スターリンから手を離すと無言で部屋を出ていこうとするフォル。
「フォル?」
スターリンは体を起こして、彼の名を呼んだ。
振り向いたフォルは、笑っている。
しかし、その笑みに隠れているもの……
それは、隠しても隠しきれない、"殺意"だった。
スターリンはそっと眉を寄せる。
「……勝手に、人の記憶見るなっての」
「許せないもの。君を傷つけた、その騎士たちが」
吐き捨てるようにフォルはいう。
明らかな、静かな怒りが滲んでいる声。表情。
彼が何をしに行くつもりか、スターリンにはすぐにわかった。
フォルはもう一度ニッコリと微笑むとドアの方へ向かおうとする。
と、その時。
「いいんだよ、フォル……分かり、きってたことだ。
アイツ等は、悪くない……だから、何もするな」
ぐ、とキツくフォルの服を掴むスターリンの手。
フォルは彼の方を振り向いた。そして、驚いた顔をする。
「書記長様……どうして、」
スターリンは、笑っていた。
本気の笑顔でないことは明確で。
必死に浮かべた笑顔が、痛々しい。
「大丈夫。大丈夫だからさ……
慣れてるのだよ、こう言うの……
俺の性格の所為なんだから……仕方ないし、な?」
スターリンの目尻からぽろり、と一粒涙が伝って落ちる。
笑ったままの泣き顔。
フォルはそれを暫し見つめると、ぎゅっとスターリンを抱き寄せた。
「……君は、そう言う傷つき方をするんだね」
そのままに、フォルは言う。
フォルの心を揺らしたのはスターリンの発言。
"自分の所為だ"と、彼はいった。
彼を拒絶した周りの人間を恨むのではなく。
「はは……っ面倒くさいだろ、俺……」
自嘲気味に笑いながら、彼は言う。
抱きしめるフォルの体を押して、引き剥がそうとした。
「離せよ、フォル……
お前も、無理に一緒にいようとしなくて、いいから……」
「僕をそう言う人たちと一緒にしないで」
フォルはきっぱりとそう言った。
そして、半ば強引にスターリンの唇を奪う。
スターリンは驚いた顔をして藻掻く。
しかし、フォルは少しも腕を緩めようとはしなかった。
苦しげに彼が胸を叩いても離そうとはせず、より一層激しく舌を絡める。
やっとのことで彼の唇を開放したフォルは、まっすぐ彼を見据えたままに言った。
「馬鹿なことばっかり言うんなら、このまま君を窒息させるけどいい?」
「だって、事実……っ」
事実だ、とスターリンはいう。
とめどなく溢れる涙に比例するように、スターリンは言葉を吐きだした。
「俺は、愛し方なんか知らない……
愛され方なんて、知らない……っ
誰にも好かれなくても当然だし、恐れられても当然だろ……!?
俺は、"フラグメント"だ。
それも……一度、この国を裏切った……ッ」
「それ以上言ったら本気で怒るよ、書記長様」
冷たい声で、フォルはスターリンの言葉の続きを遮った。
頬を叩く代わりにキツくスターリンを抱きしめて耳元で囁く。
「……それじゃあ僕は、どうなるの?
君のことが本気で大好きな僕が可笑しいの?」
す、と体を離してフォルはスターリンに問いかける。
涙が伝い落ちたスターリンの白い頬を撫でる。
フォルのキスと、叫ぶように紡いだ言葉ゆえに上がった呼吸。
ひゅう、と小さく聞こえた呼吸音にフォルは表情を歪めた。
「……やっぱり、フィアを無理やりにでも自分の力にして、
こんな世界、壊してしまえばよかったな。
そうすれば、君は傷つかずに済んだのに……」
―― 君を傷つける世界なんて、壊してしまえばよかった。
堕天使はそう言ってから、もう一度スターリンの髪を撫でた。
「壊して、しまえば……楽に、なれるかな……」
そんなフォルの言葉を聞き、小さく笑って、スターリンはつぶやく。
笑みに混ざる涙が、頬を伝い落ちた。
その刹那響いたのは……
ばさり、と翼の開く音。
それは、フォルが彼に流し込んだ堕天使の魔力が、
スターリンの"負の感情"に反応した結果。
負の感情が強くなれば、堕天使の魔力が強くなる。
コントロールしきれないために、無意識のうちに"本来の姿"をとってしまうのだ。
「ほら、みろ……
俺は、普通の人間ですらない……
お前とさえ、違うよ……
お前のように、コントロールすらできないんだから」
スターリンは自嘲気味にそう言うと、疲れ果てたようにフォルの体に倒れこむ。
フォルはそれを抱きとめて、そっと髪をすいた。
「僕も、同じだよ。書記長様……君の魔力に、連鎖してる。
これでも、必死に抑えてたんだからね……」
ばさ、と再び音が響く。
スターリンより少し大きな黒い翼がスターリンの体を包む。
外に魔力が漏れてバレないように、外の人間にバレないように、
障壁を張りながらフォルはスターリンを抱きしめた。
重なる、二つの翼。
フォルはそのまま、スターリンの耳元で囁いた。
「……もし世界中の人間が君を拒絶したとしても、
僕だけは、絶対に君を愛し続ける。
もっとも、そんなことが起きたらこの世界ごと壊してから君と心中するけどね」
「いっそ、そうするか……?」
小さく笑う、スターリン。
疲れ果てたように、いっそ壊されることを望んでいるかのように。
フォルは彼の漆黒の翼ごと彼を抱き寄せる。
「君が望むのならば、そうしてあげるけれど……?」
―― 君と一緒にいられるのなら僕はそれでいい。
そう言いながら、フォルはスターリンに微笑みかける。
―― きみが望むのなら ――
(世界を壊すことも君を壊すことも君の望みのままに)
(いっそのこと、堕ちるところまで堕ちてしまいたい。
そのほうが楽になれるのなら……)
2013-2-28 20:54