フォルスタSSです。
まさかの続き書いてしまいました(ぇ)
完璧シリアスデッドエンド。
ただし、所謂メリバ…?なのこれ(おい)
*attention*
・フォルスタSSです
・「きみが望むのなら」の続きっぽい
・あくまでifパロです。もし本気でそれ実行したら…みたいな
・バッドエンド。寧ろデッドエンド。
でも何故か本人たちは幸せそうな感じに…あれ?
・共依存好きな星蘭が暴走した結果です。よって、長い
・とりあえず、全力でスターリンさんごめんなさい
・ナハトさん、ほんっとうにすみませんでした(脱兎)
どんなんでもこい!な方は追記からどうぞー
冷たい風が、吹き抜ける。
足元に広がる城の残骸を踏み分けて、亜麻色の髪の堕天使は"彼"の姿を探した。
広い広い荒野と化したその場所で、目立つ髪色の彼……
スターリンを探し出すのは割と容易で。
「あ、いた」
フォルは彼の姿を見つけ、歩み寄る。
「書記長様、大丈夫?」
「ああ……」
こくり、と小さく頷いてから、スターリンはフォルを見た。
その表情に滲む感情は、"安堵"にも似ていて……
フォルは、微笑んだ。
"よかった"とそう言って、スターリンの浅緑の髪を撫でる。
「君が、そういう顔を出来るのなら……
やっぱり、もっと早くこうしてしまうべきだったね。
君が傷ついて涙を流すより早く。
君が、心を痛めるよりも早く……」
フォルの言葉に、スターリンは小さく笑った。
それは決して自嘲の笑みではない。
スターリンの白い騎士の制服にも点々と赤黒い染みが散っていた。
もはやどれが誰の血液だったのかもわからない。
フォルと共に幾人の仲間を殺めたか、スターリン自身も覚えていなかった。
―― 一度開き直ってしまえば、あとは簡単だった。
躊躇いも、罪悪感も、全て全て捨ててしまえば、簡単なこと。
殺めることは、容易かった。
二人の背中の漆黒の翼を見て仲間たちは驚いていた。
ある者は"何故"と問い、ある者は悲しげな顔をして彼を見た。
それが拒絶の言葉にも聞こえて、更にスターリンを孤独にした。
相手の悲しみを感じれば感じるほどに、
スターリンが孤独を感じれば感じるほどに、
彼の中を流れるフォルの魔力は強くなる。
フォルは"彼ら"の姿を恐れる者たちをただ冷たい瞳で見下ろした。
―― 所詮、人間なんてこんなものだよ。
そういった声は酷く冷たくて……
彼は苦手だと言っていた剣で幾人もの"敵"を斬った。
幼い騎士にも、容赦などせずに。
"こうなったきっかけ"の騎士に対し、こういっていた。
―― 君たちが"彼"を拒絶した報いだ。
そう。
フォルを動かしていたのは、スターリンへの愛情。
そして、彼を傷つけた人間への怒り。
ただ、それだけだった。
***
―― すべての引き金となったのは、アークの騎士たちの"あの発言"。
泣いているスターリンをフォルは抱きしめたままに慰めていた。
ふと泣き止んだ彼は、フォルを見て、問うた。
「……なぁ、フォル」
「ん?」
「さっきの、お前の言葉は……」
スターリンの声を聞き、フォルは穏やかに微笑んだ。
「本当だよ。君が望みさえするのなら僕は喜んで、"そう"する」
―― 世界を壊し、君と心中する。
フォルが口にした言葉は、それ。
スターリンは虚ろな目でフォルを見た。
鮮やかな、蒼い瞳を見据えたまま、独り言のようにつぶやく。
「そのほうが、楽……かな」
「そうかもね。君が、このまま苦しみ続けるなら……
いっそ、そうしてしまえば楽かもしれない」
仮初の安息などもはや無意味だというのなら。
いっそのこと、すべてを終わりにしてしまえば楽かもしれない、と。
堕天使はそう言った。
スターリンはそれを聞いて、ふっと笑う。
「出来るのか、本当に」
「何を?」
「この、世界を……」
―― 壊スコト。
スターリンの言葉に、フォルはこくりと頷いた。
「前は、ほとんど僕ひとりで戦っていたからね。
フィアを手に入れられなかった時点で、僕の負けだった。
けれど……今は、違う。君がいるよ、書記長様」
そう言って、フォルは穏やかに微笑んだ。
優しく、スターリンの髪を撫でる手。
「君のためなら、僕はどれだけでも強くなれる。
君の魔力も、強いから……僕の力になる。
君が望みさえするのなら、きっとうまくいくよ」
「そう、か……」
小さく頷いたスターリンは暫く何か考えるように、宙に視線を投げていた。
フォルは彼の髪を撫でつつ、彼の言葉の続きを待つ。
どれくらい時間が空いた時か。
スターリンが、口を開いた。
「……お前は、どうしたい?」
「僕?」
予想外の言葉にフォルは瞬きをする。
しかし、彼の答えはたった一つ。
―― 君が苦しまない方法を。
「丸投げかよ……本当にお前は、狡い奴なのだよ……」
そう言って笑うスターリンの中で、もう答えが出ているようだった。
フォルもそれが分かっていたから、笑みを浮かべて問いかける。
「狡いよ、僕は。狡いけど、誰より君を愛してる」
「そう、かよ……」
照れたような、はにかんだような笑みを浮かべたあと、
スターリンはふっと息を吐いて……言った。
「もう、いいよな……?」
―― すべてを、終わりにしても。
スターリンは、笑った。
"お前となら、どうなっても良い"と、そう言って。
フォルは嬉しそうな笑みを浮かべて、彼の額にキスをする。
「それ、最高の殺し文句だね……
君が、望むままに……"僕の御主人様(マイ・マスター)"」
フォルのその発言が"終焉の始まり"となった。
―― 二人の堕天使の手にかかれば、世界など脆いもの。
全てが終わった時、フォルは"仲間"の骸を見下ろすスターリンを抱きしめた。
"仲間"の血に汚れた体を。
崩れ果てた瓦礫の泥で汚れた体を。
強く、強く、そして優しい腕で彼を抱き寄せて、囁いた。
「僕だけが、君の味方……君を理解し、守れるのは僕だけだよ、書記長様」
スターリンは抱きしめられたまま、小さく頷いた。
その頬を伝い落ちる涙。
「もう、苦しまなくていいんだよ……?
僕は、傍にいてあげるから泣かないで?」
フォルの優しい声に、スターリンは小さく頷いた。
ただただ、一番最期まで"彼"が一緒にいてくれること。
それだけが、嬉しいと感じていた。
***
「静か、だね。書記長様」
誰もいなくなった"世界"は、酷く静かだった。
吹き抜ける風は冷たくて、スターリンは小さく体を震わせる。
"寒い?"と問いながらフォルは彼をそっと抱き寄せた。
スターリンはフォルの肩に頭を預ける。
フォルは愛しげに彼の頭を撫でた。
「どうやって、終わりにしたい?」
"終わり"
そう、それが彼らの最終目標。
世界を壊し、最期の最期まで共にいること。
何もなくなった世界で生きるつもりは、欠片程もなかった。
「そう、だな……」
「痛くはしないよ。ちゃんと、君が苦しまないようにしてあげる」
フォルはそう言って、微笑んだ。
スターリンは"それはいいけど……"と言って、フォルを見た。
「……ちゃんと、一緒に……」
「わかってるよ。君だけを死なせたりはしない。
というか、無意味だもの。君のいない世界で生きること」
フォルはそう言って、スターリンの額に自分の額を合わせた。
こつん、と軽く音がする。
「君は、僕の居場所だから。
居場所を失ってまで生きる理由が僕にはないよ」
「そうかよ……なら、いいのだよ」
ふ、とスターリンは笑った。
"最期"が迫った今、心配だったのはそれだけ。
嘘を吐かれること、裏切られること。
それは何よりスターリンが嫌うことだったから……
フォルの言葉に嘘はないと、誰よりスターリンがよく知っていた。
「なら、お前の剣で殺してくれよ、フォル」
「これで?」
「ああ……それが、いい」
本当は、死に方なんてどうでもいい。
ただ最期まで、"彼"を感じていられるなら。
フォルはそんな彼の心を読み取ってか、穏やかな笑みを浮かべた。
「わかった。そうする。
でも、君もそうしてよ……僕も、君と同じ気持ちだよ」
「……最期の最期まで、我侭だな……フォル」
「我侭だよ。僕らしいでしょ?」
にこり、と笑うフォルは"いつもどおり"で。
スターリンは少し、安心したように笑う。
足元に落ちていた自分の剣を拾い上げて、"わかった"といった。
「書記長様」
フォルは彼に声をかける。
ん?と首をかしげた彼の首筋にきつく吸い付き、痕を残した。
「……こんな時に、何してんだよ」
「こんな時だから、でしょ?
今度また、いつか君と出会えた時に君が僕のものだとわかるように」
"予約したからね?"などと、冗談っぽく笑うフォル。
まるでおとぎ話のような約束事。
「……お前らしい、な」
呆れたような顔をしつつ、スターリンは何処か嬉しそうで。
フォルの提案を受け入れた時点で既に、もう彼の中の何かは壊れてしまったのだろう。
今はただ、穏やかな気分だった。
―― 一瞬、風が止んだ。
その刹那。
互いを貫く、互いの剣。
倒れ込む互いの体を支えあって。
薄らぐ、意識の中で笑い合う。
最後に、伝える言葉は……
―― Thank you. I love you forever ――
(世界より大切なのは、君だった)
2013-2-28 23:14