敵というものは待ってはくれない。1日に2回以上怪人が出現する時だってある。
ソード・メギド戦後から数時間後。鼎は身体の痛みに悶えながらも救護所で眠っていた。
鎮痛剤は打ってあるが、戦闘のダメージはそれでも効かない時もある。
「痛い…。これでは眠れない…」
鼎はなんとなく眠れずにいた。
深夜近くにアラートが鳴る。さすがに夜中なのでアラートの音量は控えめだが。
救護所の通路をバタバタ走る音がした。夜勤の隊員達が出動しているな…。
夜の市街地。怪人はうろうろしながら人間を狙っていた。夜中なせいか、街中の人は少ないので避難はあっさりと完了。
宇崎は直接隊員達に指示を出す。
「とにかく銃撃しろ!そこに御堂は…いるわけないか」
「室長!御堂さんはいませんが、渋谷さんならいます!」
「よし、現場の指揮は霧人に任せる。き〜りと〜、出番だよ〜」
「室長、深夜だからって変なテンションで指示しないで下さい」
霧人の声だった。
「悪い悪い。霧人、お前って変わった武器を使うよな?」
「トリッキーなもん、好きですからね」
「出現したメギドは戦闘員と強さの差があまりない量産型みたいだ、霧人。好きにやっちゃって」
「はーい」
「深夜だから早く片付けたいだろ」
深夜の市街地。霧人はどこからか戦輪を2つ、出した。それを指でぐるぐる回す。
怪人はそれが何かわからない様子。霧人はニッと笑うとその戦輪を勢いよく投げた。
勢いづいた戦輪は弧を描き、怪人にスマッシュヒット!怪人はトリッキーな攻撃に翻弄される。霧人は夜間戦に強いため、夜の任務が多い。
霧人は次々とトリッキーな攻撃を繰り出し、時折肉弾戦をし→約10分でメギドを撃破。
霧人は撃破の報告を入れた。
「室長、メギド殲滅しました」
「霧人、お前スマートに倒すよな〜。早く撤収して、帰りなさい。寝たいでしょう、君たちは」
「夜勤、キツいですからね〜」
「対怪人組織は昼夜交代だから仕方ないだろ!いつ来るかもわからんのに」
「確かにそうですね〜。んじゃ、俺達撤収します」
通信が切れた。宇崎は安堵した。ようやく寝れる…。仮眠でもいいから寝れるぞ…。
深夜のゼルフェノアはだいたいこんな感じ。
隊員達は昼夜交代制。いつ敵が来るかわからないため、どの時間帯もハード。しかも常に命懸け。なので待遇はいいし、給料も高い。当たり前か。市民が憧れるのも納得。
実は司令クラスの方がベリーハードだが。宇崎は激務でショートスリーパーになってしまっている。
逆に支部の小田原はロングスリーパーだと聞くが。
1日に2回以上出現は稀らしく、その日の本部は本部に泊まる隊員が続出した。
本部には簡易宿泊スペースも整備。8部屋くらいまであり、男女別々に完備。男女別々のシャワールームもある。
隊員共用(男女別々)の洗濯機まで完備されているのが本部宿泊スペースだ。
鼎は再び通路をバタバタする足音を聞いた。隊員達が帰ってきたんだ。
今夜は本部に泊まる隊員多そうだが、眠れない…。
発動の反動で身体の負荷が倍になったせいで、思うように動けないでいる。
これでは明日(今日)も大人しく救護所に引きこもるべきか…?
これだからこの身体が憎いのだ…。あのせいで、あれのせいで全て奪われたのだから…。
仮面生活になってから長いが…。戦闘後が苦痛すぎる。
仮面なしでは外出なんて出来ない。人前で素顔なんて無理だ、抵抗がある。人前で手袋を外すのですら抵抗があるのにだ…。
鼎は眠れぬ夜を過ごしている。
戦闘後、ほぼ毎回のように救護所行きになっている気がしてならない…。最近は頻度が増えてるような。
全ての元凶はあれのせいだ…。あれのせいで私は…。