蒼い炎を使う怪人によるボヤ騒ぎから1週間後。この間に蒼い炎のボヤ騒ぎはもう1件発生してる。

宇崎は12年前の連続放火事件のパターンと今回のパターンの資料を見て照らし合わせていた。
「2件目まではボヤ騒ぎ…同じだ。問題はここからだ。規模が大きいとなると、次に狙われるのは商業施設や公共施設とかか?対象が多すぎる!!」


司令室であーだこーだ1人でぶつぶつ呟いている宇崎に、朝倉が資料を持ってやってきた。

「司令、1件目と2件目の防犯カメラ解析、終わりました。画像をプリントアウトしたものがこれです」

宇崎は資料を受け取った。朝倉はどや顔で報告。
「今回はバッチリ犯人が映っています!」
「でもこれ怪人態じゃない。人間態はなかったの?」


宇崎は「おいおい…」というような表情。


「探してはいるんですが見つかりませんでしたね〜。…あ、そうだ司令。ボヤ騒ぎ発生場所に印をつけたらどうやらこの区域が怪しいんですよ。モニターに地図お願いします」

宇崎は東京都内の地図をモニターに出す。朝倉はそこに1件目と2件目の場所をマーキング。
「場所、都心じゃないんですよ。少しずれてますね」


宇崎は12年前の連続放火事件の発生場所を重ね合わせた。
「場所はずれてるが、似ているなー。次に発生しそうな場所はこのあたりか?」

宇崎はある場所周辺に丸を囲んだ。


「…食い止めるしかないですよ!解析班も必死ですよ」
「朝倉、わかったから持ち場に戻りなさいって」
「はーい」


朝倉は司令室を出た。
この案件、炎に関係してるため鼎は出動していない。どうしても行かなければならない場合は「組織車両から降りるな」との条件つき。



宇崎は朝倉が持ってきた資料に怪しい人影が映っていることに気づく。

黒いローブを羽織った仮面の女…だよなぁ?一体なんなんだこいつは…。
この怪人に関係しているのか?


今回の一連の案件には前回とは違う特徴があった。

ゼルフェノアや警察が現場へ行くと、どこからか出現したのか戦闘員に阻まれる。
1件目はなかったが、2件目はそれで少々手間取った。


敵サイドは妨害をしてきてる。それにしてもこの戦闘員、どこから…?
戦闘員だけは今まで何度もあるが、どうも雰囲気が違う気がするのだ。



そんな中、3件目が発生。今回は霧人がメンバーにいたため晴斗は霧人のバイクに一緒に乗り、いち早く現場へと向かう形になった。晴斗は足が速い。

残りのメンバーは桐谷が運転する車両で現場へ急行。鼎は出動せず。



現場は朝倉の予想通りの場所だった。都心から少しずれた場所にあるとある小規模な商業施設。
既に消防隊と警察が来て消火してる。人的被害はなく、避難は既に完了していた。問題は例の怪人…。


霧人のバイクは駐車場に勢いよく停車。晴斗は急いでバイクを降り、通信を聞きながらある場所へとダッシュする。
それは商業施設の裏だった。

「まだそこに黒いローブの女がいる!警戒しろ!」
宇崎が指示する。
「黒いローブの女?」

「おそらく蒼い炎の怪人と関わっているやつだ。晴斗、お前がそいつを食い止めるんだ!」


まだ他のメンバーは到着していない。ゼルフェノアは自分と霧人さんだけ。
蒼い炎の怪人は既に逃走した後だったが、確かに何かいる…。



晴斗はその「黒いローブの女」を見た。見た目がかなり鼎と似ているのだ。

これじゃあ「黒いローブの仮面の女」じゃんか。
その女はずっと下を向いていたのだが、晴斗に気づきようやく顔を上げる。
白いベネチアンマスクだが鼎さんの仮面とは違い、装飾がある仮面だ…。フードから長い髪が見えてる。


「初めて見る顔ですね。何をお探しでしょうか?」

いきなりなんなんだ、この人。
「何を…って犯人の怪人をだよ!」
「彼は私の監視下にあります。邪魔はさせません」


女は何かを出した。小さな笛のようなもの。
そしてそれを仮面の口元に当てる。仮面越しなのに不思議と音が鳴った。金属音のような高い音。

…と、同時にわらわらと戦闘員が出てきたのである。晴斗は焦った。1vs6は分が悪すぎるだろ!霧人さんまだーっ!?


晴斗は仕方ないので日本刀型ブレード・恒暁(こうぎょう)と肉弾戦を駆使して戦う。数が多くてうまくいかねぇ!

黒いローブの仮面の女は一瞬笑ったように見えた。


晴斗はこの女にイライラしていた。戦わないのか、こいつは…。
戦闘員を振り切って黒いローブの女に接近したが、女は戦闘員を増やし接近させなくする。あと少しで近づけたのに…!


晴斗はギリギリしながらたった1人で戦闘員8人と戦うが、劣勢になる。

そこに霧人が晴斗を探して到着。
「霧人さん!」
「ここにいたのか」
「ヤバいんだってば!」
「見りゃわかる」

霧人は何か武器を出した。トンファーだ。晴斗は拍子抜け。ト、トンファーだと!?


「戦闘員ならこれで十分だ」


霧人はトンファーと肉弾戦で戦闘員を蹴散らす。晴斗は黒いローブの女を視界に入れつつも、戦闘員を撃破していた。


最後の1体を倒した時、黒いローブの女は逃げようとしたが晴斗は逃さなかった。
「行けっ!逃がすなー!」
「わかってるよ!」

晴斗は助走をつけ、ジャンプ→逃走しようとする女に飛び蹴りをかます。
女は予想外の攻撃に不意討ちを喰らい、怯んだが一瞬の隙を突かれ異空間へ逃げられてしまう。


「逃げられたーっ!!」



ゼルフェノア本部。晴斗ははっきりと蒼い炎を使う怪人と関連する女を見たことを報告。

「そいつの特徴は?」
宇崎は淡々と聞いてる。

「見たまんまですよ。黒いローブを羽織ってて、白い仮面を着けていました。仮面にはなんかキラキラした装飾があったような…。あと髪は長かったです」


あの女、鼎さんより髪が長かったな。やけに口調が丁寧なのも気になったが。

彼を監視してるとはなんなんだ?「彼」は犯人の怪人のことなんだろうけど。


宇崎は3件目の資料を見せた。そこには黒いローブの女の写真が。

「防犯カメラにも映っていたよ。この黒いローブの仮面の女。見た感じ、鼎よりも若いみたいだな…。あとこいつ、怪人じゃないのも引っ掛かる」
「怪人じゃないの!?」


「おそらく幹部以上のものだろうな。仮面をしているということは『元老院』の一員かな」
「元老院ってなんですか」
晴斗、真顔で聞く。


宇崎は晴斗に説明する。

「敵の鐡一派には元老院という組織があるらしいんだが、元老院は謎が多くてわからんのよ。ただ元老院の面子は人前では必ず顔を隠してる・黒いローブ姿ってことしかわからない。人間なのか、怪人なのかも怪しい」
「この人、ローブ羽織っているだけだよね」

「場所が場所だから動きやすい格好で来たんだろうよ。異空間から」


今しれっと「異空間」って言った!?


「本拠地が異空間ってますます悪の組織っぽい…」

「メギドは人間界にはいないからね。異空間由来だから、あいつら。怪人辞めてるいいやつも人間界には少数だがいるぞ」
「犯人早く見つけないとならないのに、妨害されるとか…なんかイライラするーっ」

「晴斗、落ち着け」



異空間。黒いローブの女は仮面に手を触れていた。
あの少年…私の仮面に触れようとした…。

元老院のとある部屋では彼女の報告を待っている様子。そして彼女の前には2人の男性が。
この男性2人もゆったりとした黒いローブに装飾がついた白いベネチアンマスク姿。こちらは男性用の仮面を着けている。


元老院の1人は若い男性、もう1人は中高年くらいの男性だった。若い男性は白手袋を履いている。

「監察官・流葵(るき)、報告を」
「…は、はい。………ゼルフェノアの少年に邪魔されました。飛焔の計画は順調ですが、少年に仮面を触れられそうになりました」
若い男性は女に優しく声を掛ける。

「なんということか。嫌でしたよね。新しい仮面を用意しましたよ。受け取りなさい」
黒いローブの女…流葵の前には箱の中に丁寧に置かれた仮面が。仮面は布の上に置かれている。

「ありがとうございます」
流葵は箱を受け取る。


「元老院の一員たるもの、仮面は身体の一部同然だ。たとえ監察官としてもな。君には動いて貰わないと困るのだよ」
元老院の長らしき男が口を開いた。若い男性が続ける。


「ならばその少年を倒すのです。これは避けられない戦いになるでしょう。計画遂行のためなら出来ますよね?貴方は戦闘も出来るはず」


流葵はうなずいた。
飛焔は確実にやっている。私は邪魔するゼルフェノアを妨害…特にあの少年を撃破しなくては…!

元老院以外の人間、ましてや敵勢力が仮面に触れようとした罪は重い。
異空間においては元老院は絶対的。鐡という存在もあるが、今のところ鐡は大人しくしている。今現在は元老院任せ状態。


この流葵という女性、なぜ人間にもかかわらず敵本拠地の異空間にいるのか?謎は深まる一方だ…。