その日は本部隊員5人とゼノク隊員数人が顔合わせ。御堂はどこかで見たやつばかりだな〜と思っていた。
ゼノク隊員数人の中に、やけに本部隊員に対してライバル心剥き出しな隊員が1人。
それは上総だった。
「お前が御堂なの!?本当に分隊長!?見えね〜な〜」
御堂は上総の態度にイラッとしたがなんとか抑えている。
「てめえがゼノク隊員の『忍者』、上総壱之助(かずさいちのすけ)か?やけに馴れ馴れしいな…お前」
2人は火花を散らしてる。そこに彩音が仲裁に入る。
「こらこら喧嘩はダメだって。2人ともやめなさいっ!」
彩音の一声で2人はヤバいと思ったのか、喧嘩の応酬は止まった。
上総は彩音に二階堂を重ねたようだった。
駒澤…二階堂にめちゃめちゃ雰囲気似てる…。二階堂に怒られたのかと思った…。
ゼノク隊員達は鼎が気になっている様子。隊員の1人がなんとなく聞いた。
「あ、あの紀柳院って…」
「私のことだが?」
やっぱりこの白い仮面の隊員だ…。よくあんな狭い視界でつかつかと歩けるよなぁ。この人、意外と戦闘は攻撃的って本当なのだろうか…。
「何か私に用か?」
「いえ…ありません」
隊員の1人は怖じけづいていた。
紀柳院鼎…仮面補正のせいか、圧を感じる。気のせいか?
ゼノク・トレーニングルーム。上総は二階堂と話していた。
「…本部に二階堂みたいな隊員がいたんだよ。駒澤彩音だっけ」
「ふ〜ん」
二階堂、いまいち興味なさげ。
「とにかく今はゼノクと本部で連携しないと意味ないですよ?御堂さんにライバル心剥き出しだったと聞きましたし」
こいつにはバレバレかよ…。
釵游はゼノクのほど近くに戦闘員を複数出現させる。
釵游は事前に鐡からこう聞いていた。「戦闘員を進化させた」と。
ゼノクにアラートが鳴り、自動的に防衛システムが作動。ゼノク入居者はシェルターに避難し始めている。
敵が館内に入らないよう、分厚い防弾シャッターが次々と閉じられていく。職員達も避難誘導やらに動いている。
この防衛システム、本部よりも堅牢だ…!
御堂は防衛システムが本部よりも頑丈なことに気づく。しかもシールドまで張ってやがる!
本部にはシールドなんてもんはねぇぞ。防弾シャッターとシェルターはあるが、研究施設があるから守るもんがでけーわけか。
本部隊員よりも先に出たのは上総。上総はゼノク隊員の中では斬り込み隊長的なポジション。とにかくでしゃばる。
「戦闘員だけじゃん。倒してやらぁ!」
上総は背中の刀を抜いた。上総も日本刀型ブレードの使い手だが、忍者刀サイズ。しかもメイン武器としては「使わない」。
見た目通りの忍者アクションが特徴的なのが上総の戦闘スタイル。
御堂は上総が戦闘員だからと舐めているのを見逃さなかった。あの戦闘員、色が今までのと微妙に違う…。
「上総!でしゃばるなっ!」
「うるせぇ!御堂」
こいつ、聞く耳を持たないのか!?
やがて戦闘員に変化が起きる。植物系の中級メギドへ進化したのだ。
進化した!?
上総は攻撃を受けている。
「ちっくしょーっ!」
どうやら中級メギドには慣れていない模様。
御堂達本部隊員は御堂を主体に行動していた。
「戦闘員は全て中級に進化してる。ここは晴斗と鼎がメインでやるんだ。発動使えよ。桐谷さんと彩音は援護を頼む。俺もアシストする!」
「わかった」
「了解っ!」
「援護はお任せください」
「いくよ」
5人はそれぞれ、確実に進化した戦闘員と戦っていた。上総は本部隊員の連携を見て目が覚めた。
俺達ゼノク隊員は連携がいまいちだったのに…なんつー連携。あの少年と仮面の女、連携がものすごい…!
互いに背中を預けてる…。
上総はライバル心を捨てていた。喧嘩してる場合じゃない!
「御堂!俺に出来ることは!?」
「目が覚めたようだな、上総。あの2人をアシストしろ。お前はトリッキーなスタイルだから敵を翻弄出来るっしょ」
戦闘スタイルまで見抜かれてる…。
上総を含めた6人は一気に畳み掛ける!彩音・桐谷は銃で援護、御堂と上総は晴斗と鼎をアシスト、晴斗と鼎は発動を使い鮮やかに進化した戦闘員を次々撃破。
進化した戦闘員は全て撃破した。釵游は舌打ちをして姿を消した。
御堂は上総とハイタッチ。上総もまんざらではない様子。
どうやら激しい戦闘を通じて互いを認めるようになった模様。
「お前のこと…見下してた。悪かった」
「上総、でしゃばるのはいいが考えろよな。お前…斬り込み隊長ポジションだったのか」
「まぁ…そういうこと」
「俺らも協力するから、お前達隊員についても教えろよな。主力だけでいいぞ」
「御堂、じゃあそっちもその本部隊員について教えろ。お前含めてな」
「取り引き成立じゃねぇか。取り引き…なのか?これ。ま、いっか」
なんだかんだ変なライバル心はなくなったらしい。これで一安心か?
ゼノク・司令室。
西澤と蔦沼、南は安心したようだった。
「なんとかうちの隊員と本部隊員、連携取れましたね。上総はでしゃばるからヒヤヒヤしましたが」
「御堂とは合うんだよね〜、彼。そうだ、西澤。二階堂は進展なしかい?」
西澤は一瞬黙ったが続けた。
「二階堂を隊員にするの、彼女はまだそんな気ないみたいですよ?でも義肢のことは気にしてるみたい」
「だろうねぇ」
元老院本拠地。
絲庵(しあん)はメギド戦闘員が進化したことが引っ掛かっていた。あんなことをした覚えがない…。
戦闘員から中級メギドに進化させた者はいるはずだが、釵游なはずがない…。幹部にはそんな技術なんて不可能だからだ。
釵游はとぼとぼと通路を歩いている。
そこにひっそりと鐡が。鐡は柱に寄りかかっていた。
「どうだ?俺特製のメギド戦闘員はよ」
「すごいですよ。なんなんですかあれは」
「それは秘密だ」
鐡様って秘密主義だったっけ?
「元老院を倒したいだけなんだよ。俺はよ。厳密には…打倒鳶旺(えんおう)だがな」