時空の切れ目の異空間――


そこには鬼により消えた・拉致された人々が集められていた。辺りは鬱蒼とした森。人々は深い森の中にいる。泣き叫ぶ者・戸惑う者・助けを求める者・パニックになる者など人々の反応は様々。

「なんなんだここ…」
サラリーマン風の男性がおっかなびっくりに森を見上げる。気味の悪い空の色だな。これは夢なのか?


消えた人達の中には眠らされている者も。眠らされた人達は初期に消えた人達。


この森の中にはざっと、30人くらいの消えた人達がいる。



憐鶴(れんかく)は手慣れた様子で雑魚鬼を次々と殲滅していく。辺りは血の海だが、そんなことは気にしない。

姫島・苗代・赤羽の憐鶴の協力者はその鮮やかな手さばきに見とれていたが、逆に恐怖を感じていた。
絶鬼を殲滅するためなら手段を選ばない憐鶴は修羅と化している。


裏の人間が表に出た影響は憐鶴本人にも徐々に現れていた。世話役の姫島は明らかに疲弊している憐鶴を止めにかかる。

「気持ちはわかりますが、今日はこれくらいにして下さい!休まないと身体に障りますって!!」
「奴を殲滅しないと…」


姫島は憐鶴の手にそっと触れる。冷静さを失った憐鶴はようやく落ち着いた。

「…そうですね、今日はこれくらいにします…」
「あれから5日連続殲滅してますが、休んだ方がいいですよ…。本当はわかっているんでしょう、疲れているの」

憐鶴は姫島に促され、撤収することに。苗代と赤羽は完全に憐鶴の協力者となっていた。

苗代と赤羽は車内で待機中。
「…俺達、完全に憐鶴さんの協力者だよね…」
「あぁ」



本部。解析班は新たな鬼3体を分析中。


「絶鬼・禍鬼・裂鬼のこいつら3体…人語を喋るあたり、今までのとは違うわね…。
特にこいつ、絶鬼はヤバい感じがする」
「この3体、本来は赤鬼・青鬼・黄鬼ですよねぇ。人間態だと全然わからない…」

矢神も困惑。神は京都のとある神社に伝わる鬼に関する行事が気になった。

「赤鬼は怒り・青鬼は悲しみ・黄鬼は苦しみ…だとか。京都のとある神社では3体の鬼に意味があって厄を追い払うらしい」
「神さん、それと絶鬼達って何か関係してるの?」

朝倉が聞いてきた。


「人間態だとわからないが、こいつらの本来の姿は赤鬼・青鬼・黄鬼だ」



絶鬼は鬼狩りをする憐鶴にようやく気づく。

「この女…10年前に殺したはずなのに…なんで生きてるんだ!?
顔から首にかけて包帯姿ということは…後遺症はかなりの重度だな。そりゃそうだ。人前には素顔になれやしないもの。あれを治療出来たらすげーけどな。
人間には不可能だろうね」

「絶鬼様、その女を放置してもいいのですか?」
裂鬼が聞いてきた。


「生きてるってことは俺を確実に狙うはずだが、重度の後遺症のせいで上手く攻撃出来ない。放置しても問題ないだろ。
見た感じ、定期的に包帯替えてるみたいだな。そうでもしないとヤバいからね、あの女」

「そこまで計算してたんですか」
「あのクラスの怪人由来の後遺症はなかなかいない。いても数人いるかどうか…。
あの憐鶴という奴はずっと裏の人間だったからしいから、慣れない表の世界で疲弊してんじゃないのー?」



ゼノク。憐鶴は部屋に運ばれ、しばらく休養を余儀なくされる。

「私は行かなくてはならない…」
「休んで下さい。あなたは慣れない表の世界で疲弊してるんですよ?
このまま行けば過労死します。加賀屋敷にドクターストップはかけられたくないでしょう」


憐鶴、言葉が出ない。
しばしの間があって、憐鶴は答えた。


「わかりました。しばらく休養します…。悔しいですが」
「本部も動いてますし、倒してくれますよ」

「…姫島、絶鬼はそんなに簡単じゃない…。簡単じゃないんだよ…」



数日後。本部ではなんとなくある異変に気づく。


「最近地震多くないか?小さな地震が頻発してる」
そう切り出したのは鼎。宇崎も気になってはいたらしい。

「首都直下地震がどうたら言われてるからなぁー。プレートが活発化してんのか?」


この時点ではまだ鼎達は気づいていない。絶鬼は災厄として災害を起こそうとしていることを。



ゼノクでは憐鶴がベッドの上からなかなか動けずにいた。世話役の姫島が付きっきりな状態。

「憐鶴さん、無理して起きなくてもいいですよ」
「気になっているんです。最近地震が増えていますよね…」



禍鬼と裂鬼はさらに人々を時空の切れ目に飛ばす。


「供物はこれくらいでいいんじゃないか?」
禍鬼は異空間の森の中にいる人間を見て呟く。

「絶鬼様のことだからまだ儀式はしないはず。邪魔者を消すはず」
「邪魔者…?」
「闇の執行人とゼルフェノアがいる。あいつらがいる限り、妨害される」


「始末すんの、どっちから?」
「どっちでも良くない?闇の執行人はかなり疲弊してるから始末するチャンスだけど、あえて生殺しにしようかと」

「鬼だな」
「いや…私達鬼じゃんか」



「ゼルフェノアねぇ。あいつら厄介なんだよなー」

絶鬼もゼルフェノアがかなり邪魔だと感じていたようだ。
絶鬼からしたら闇の執行人はどうでもいい。あの女は重度の後遺症に苦しんでるんだ、生殺しでいいだろう。


どうせ俺には攻撃出来ない。