震源不明の地震が増え、怪人の出現頻度が増加した首都圏。ニュースやワイドショーでは連日騒ぎ立てているような状態。

『首都直下地震の前触れか!?』
『怪人増加の意味とは!?』…など市民の不安を煽っている。


特務機関ゼルフェノア長官・蔦沼は不安を煽ってしまうからと会見はしていない。コメントは出したのだが、首謀者が異空間にいるため下手に手出し出来ない状況。


司令室では宇崎と鼎、それぞれが違う場所の指揮をすることも増えた。司令と司令補佐の連携も増え、鼎の指揮もキレを増す。



都内某所――

いちか達は複数の怪人を殲滅していた。
「よっしゃー!倒したぜーい!!」


増加した怪人は全て戦闘員レベルだが、複数出現するのが特徴。
御堂は冷めたようなリアクション。

「いちか、浮かれてんじゃねぇ。これは氷山の一角だぞ」
「たいちょーわかってるってば」



ある日の夜。一般市民でフリーターの恭平は黒い服にフードを被り、黒い仮面を着けた謎の人物を目撃。
その人の手には鉈。恭平はその黒衣に見覚えがあった。


…あれって執行人?しばらく見なかったのにえらい姿が変わったな…。


恭平は憐鶴(れんかく)の後をそーっと追う。憐鶴はある怪人を追っていた。

「九十九(つくも)!」
「呼んだかい?相棒」

憐鶴の対怪人用鉈・九十九が人間化。九十九人間態は気さくな男性だ。
出で立ちはコマンド風の恒暁(こうぎょう)やマジシャン風の鷹稜(たかかど)とは違い、かなりラフなどこにでもいそうな感じ。


「俺を呼ぶなんてな。憐鶴、ターゲットはあそこか?」
「そうみたいですね」
「先制攻撃は俺がやる」

九十九は手に電撃だろうか、帯電している。彼は一気にダッシュすると複数の怪人に電撃を浴びせた。
そこにすかさず憐鶴が肉弾戦で叩きつける。かなり激しい。

九十九は元の鉈の姿に戻ると、憐鶴の手の中にすっぽりと収まった。憐鶴は鉈を使い、一気に叩き斬った。辺りは怪人の血しぶきが飛んでいる。


5分も経たないうちに複数の怪人を殲滅した憐鶴。彼女は一息つくと、辺りを見回し仮面を外した。

恭平は一瞬、執行人の素顔を見てしまう。一見、普通の女性に見えるけど…。
さっきのあの男はなんなんだ!?武器から人間になった!?


憐鶴は気配を感じ、再び仮面を着けた。
「誰かつけてますね。…出てきなさい」

恭平は恐る恐る出てきた。近くにはあの「執行人」。仮面と黒衣のせいか、怖い。
彼女は武器はしまったようだが…。


「私の正体を突き止めたいのですか?そこの一般人」

恭平は憐鶴の黒衣のエンブレムを見た。よく見たらロゴのデザインは異なるが「ゼルフェノア」!?


「あ…あんたゼルフェノアの一員だったのかよ!?」
「怪人を殲滅することにはかわりないですから」


淡々とした話し方。黒い仮面のせいか、威圧感が半端ない。
あの司令補佐とは違う威圧感…。


「あんた、あの司令補佐とは違うんだな…」
「紀柳院さんと話したことがあるんですか」

「俺…怪人の襲撃に巻き込まれやすくて…。それで2回くらいあの司令補佐と偶然会ったんだ。あ…あのあなたの名前は?」
「執行人の名前聞くなんて度胸ありますね。教えるわけにはいきません」


やっぱり秘密主義なのか。残念だ。


「では、私は帰りますので」
「帰る!?」
「今回の任務は終了しましたから」


憐鶴はそそくさと待機中の車へと向かった。車には協力者の苗代と赤羽がいる。


「任務終わりました〜?」
「終わったよ。撤収しましょう」


黒いワンボックスカーはどこかへ去って行った。あの車、エンブレムはなかったが中にいた男性らしき人達も黒衣が見えたような。

執行人の協力者?



別の日。本部ではどうやって絶鬼を引きずり出すか、誘き寄せるかで悩んでいた。


「室長、本部だけで決めるのはどうかと思うのだが…。絶鬼の脅威は迫っているのだぞ!?」
鼎、少しイライラ。

「わかってるよ。こうしてる間にも和希達は殲滅しているわけだからね。
憐鶴も夜を中心に活躍している」
「解放された九十九があんなにも強力だとはな…。雷を使うなんて」


「帰ってきたぞー」
司令室に入ってきたのは御堂。

「室長、長官は何してんだよ。被害が拡大し始めたってーのに」
「和希、私も働きかけていた。私は私なりに戦っているから…」


「鼎、憐鶴はどうなんだ!?」

「『確実に』殲滅しているよ。執行人の戦闘力の高さは目を見張るものがある。私と憐鶴は本当に対照的だな…。同じ組織なのに白と黒。
憐鶴が仮面を着けて任務をしている姿はまるで別人だ」
「あいつはあいつのポリシーがあるみたいだから、下手には言えねぇよ」


「和希、街の様子は?」
「じわじわ被害が拡大してんな。支部とゼノクにも応援呼んだから心配すんなって」

「震源地が絶鬼だから異空間に誰かが行くか、引きずり出すかしないとならないのが厄介だ」
「めんどくせーラスボスだな…」


御堂はやっぱり冷めた態度だったが、さりげなく鼎の手を握る。

「こんな時に何してるんだ、和希…」
「ガチガチに緊張してるぞ、鼎。緊張ほぐしてやるからさ。ほれ、肩揉んでやる。…肩凝ってんな〜」


ラスボス戦前の会話とは思えない。御堂はあくまでも鼎といる時間を大切にしたいわけで。

「少しは楽になったか」
「…あぁ」


彼女の声が優しくなった。緊張が和らいだんだ。


「お前からしたらプレッシャーかもしれないけど、相談しろって。
鼎は十分戦ってんだろうが。違う形だけどな」

「きりゅさん、息抜きしようよ!」
せっかくいい感じだったところにいちか、乱入。御堂は内心、「チッ」と舌打ち。


「たいちょーどうしたの?あれ…あたし雰囲気ぶち壊しちゃった?」
「いいから休憩所行ってこいよ」

鼎は御堂に急かされるかのように司令室を出た。鼎は振り返る。


和希…雰囲気ぶち壊されて嫌だったのかも。いちかはアホの子だから仕方ないところはあるのだが。


「きりゅさん、きりやんがハーブティー淹れてるよ。リラックス系だって言ってた」

桐谷も気にしてるんだろうな…。本部のこと。


「今回のハーブティーは2種類用意しましたよ。リラックス系とリフレッシュ系です。砂糖はご自由に。
お茶菓子もありますよ〜」


「桐谷…本部のこと、気にしてるのか?」

「なんのことですか?」
「…なんでもない……」

「きりゅさん、このクッキー美味しいよ!きりゅさんは甘いもの好きなんだよね?
好きなの食べて気持ちをリセットしようよ」
「…そうだな」



本部・司令室。


「和希、そう思い詰めんなって。鼎はわかってくれてるよ」
「室長、かつての後輩が補佐になるとこんなにも複雑になるなんてなー…」

「隊長よりは司令補佐の方が上になるからね。そりゃあ複雑になるよ。…お前らの恋も複雑そうだな」
「余計なこと言うな」


御堂、若干イラッ。御堂からしたら恋愛話には干渉されたくないようだ。



鼎と憐鶴はだんだん心を通わせていく。ある夜、鼎は憐鶴に連絡していた。

「わざわざ連絡するなんて…どうしました?」
「絶鬼のことだ。何か知ってる情報はあるか」

「私も調べましたが、彼についての情報は極端に少ないのです」
「そんな奴、どうやって倒せというんだ…。災厄を呼んでいるではないか…このまま奴を放置したら」

「世界は滅亡しますね、間違いなく」


「異空間から動く気配がない。打開策があればいいのだが、長官は動く気配なし」
「本部はどうなんですか」
「支部・ゼノク隊員と連携している。トップが動かないだけで」


「長官は私達を試しているのかもしれません。そう感じます」
「ここに来てそれあるか…?」

鼎、半信半疑になる。