放課後。なんとなくバスケ部の助っ人に行こうと体育館へ向かう晴斗に異変が起きる。
やけに体育館の方向が騒がしいのだ。晴斗はダッシュで体育館へと駆け込んだ。

そこには怪人が複数いた。戦闘員らしき怪人複数と、違う怪人が1体。体育館は悲鳴とパニックに包まれる。
体育館にいた生徒達はパニックになっていた。逃げ出そうにも恐怖で逃げ出せない生徒もいる。


「これが怪人…?」

晴斗は体育館の出入口に突っ立ったまま、呆然としていた。通学カバンを床に落とし、動けない。出入口にはパニックになった生徒達が殺到。さらにパニックになる学校。

晴斗は逃げ遅れたクラスメイトを助けようと体育館へと入る。クラスメイトは晴斗に来るなと叫んでいた。

「暁!来るな!やられるぞ!」
「うるせー!お前を助けてぇんだよ!」

晴斗はその場にあったものでなんとか怪人に対抗するも、歯が立たない。素人には無理なのか…?



いきなり場の空気が変わった。ゼルフェノアの隊員が来たんだ。白い制服の隊員達は銃で応戦してる。その中に白い仮面の女性隊員がいた。


仮面の女隊員…?
晴斗はその隊員が妙に気になった。


「彩音は生徒達を避難させろ!私はメギドを倒す!」

鼎は他の隊員とは違う装備だった。銃の他に日本刀型武器を持っている。SF的な特徴的のデザインの武器だ。
「早くこっちへ逃げて!君、何してんの!?」

彩音は生徒の避難誘導をするが、晴斗の誘導に失敗。たまにいる、怪人への恐怖で動けなくなった市民だ…。この場合は無理に誘導しても動けない。ならば庇って戦うしかない。


「鼎!ステージ付近に動けなくなった生徒がいるの。彼を庇いながら戦って!」
「了解した」

鼎はブレードを抜刀する。この日本刀型ブレードは鼎専用に作られたものだ。
彩音は時計を気にした。鼎が戦える時間は約15分…。

他の隊員達は戦闘員をなんとか銃と肉弾戦だけで倒せてはいるが、鼎が対峙したメギドは上のランクなため、銃と肉弾戦程度では倒せない。


鼎はうまくメギドを引き付けて何度も斬り込むが、装甲が厚いのかうまくいかない。
銃も巧みに使い、メギド殲滅に走るが戦闘時間という制約が邪魔をする。肉弾戦もあまり効いていないようだ。制約さえなければ…!


鼎は何度もメギド相手に果敢にも挑んでいく。ダメージはなんとか与えられてはいるが、鼎も突き飛ばされたり、蹴られたりとダメージを受けている。
晴斗はこの仮面の隊員を見ていられなかった。

彩音は彩音で時間を気にしている。
鼎の戦闘時間…残り時間、あと約10分切ってる…。早くケリをつけないと危ない…!


彩音はある決断をした。

「鼎、発動使って!攻撃力を上げればメギドは倒せるはず!」
「何言ってるんだ…彩音。発動使うとリスクが高まるだろうが!!」

晴斗はこの仮面の隊員の「リスク」というワードが引っ掛かった。見てると彼女はキツそうに見える。
時間と共に苦しそうにしているように見えるのだ。
顔は仮面でわからないのだが、明らかにかなり息切れしているし時折咳き込んでる…。


単なる消耗じゃない気がする…。この人は一体…?



メギドは鼎の隙を突き、武器を蹴飛ばした。鼎は衝撃でみぞおちに攻撃が当たったらしく吹っ飛ばされ、倒れる。
「鼎!」
彩音は叫んだ。


司令室でもこの様子を宇崎は見ていた。
「鼎のやつ、ヤバいかもなぁ…。残り時間が約5分って…」


晴斗は鼎の手から離れた日本刀型ブレードが床を滑り、自分の足元へ来たのを見た。爪先にブレードがコツンと当たった。
鼎はなんとか立ち上がろうとする。明らかに苦しそう。鼎は下を向いたまま、立て膝で晴斗に話しかけた。

「そこの少年…聞こえているか…」
「あ…あぁ…」

鼎はなんとか顔を上げ、こちらを見た。仮面って表情がないはずなのに…この人には表情があるように見える。角度のせいなんだろうけど。

晴斗は戸惑いを見せた。


「お前がそのブレードを使ってくれ。行けるはずだ」
「ちょ!?鼎!?一般市民にそれは無理なんじゃ…」

彩音はわけがわからないでいる。
いつの間にか彩音含む隊員達は戦闘員を全て殲滅していた。残りはランク上のメギド1体のみ。


晴斗は恐る恐る鼎のブレードを拾い上げる。刀身が綺麗な刀だ。重さを感じる…。
晴斗は怪人が鼎に迫るのを感じ、直感で動いた。この人は動けない。明らかに苦しそうにしてる…。顔が見えなくてもわかる…。

「よくわからないけどやってみるよ!」
晴斗はいきなりブレードを発動、赤い刀身へと発光させた。知らず知らずに攻撃力アップモードを発動させたらしい。

彩音も銃で援護に入る。
「鼎はそのままそこにいて。これ以上戦ったら死んじゃうよ…!リスクがあるんだから…。無理は禁物だよ」


晴斗は闇雲ながらに戦いながらも気になっていた。
この人の「リスク」とは一体!?


晴斗は無茶苦茶ながらもメギド相手に次々と斬り込んでいった。時には素手で殴り、蹴飛ばしている。
鼎と彩音はこの高校生に圧倒された。一般市民…だよね?この子。なんか身体能力高くないか!?


晴斗は無意識に攻撃力をさらに上げ、決定的なトドメを刺した。
素人とは思えない動きと機敏さにおののく隊員達。

彩音は後から来た救護隊に鼎を託し、撤収した。鼎は救護隊に支えられてなんとか歩けてはいる。



残されたのは晴斗1人だけ。手にはあの日本刀型ブレード。体育館は散らかっている。


しばしの沈黙。


…俺、怪人倒しちゃったの!?
あれ、さっきの人達は…いない!?いつの間に撤収したの!?

晴斗は手にある日本刀型ブレードを見つめた。これ、あの仮面の隊員さんに返さなきゃならないじゃん…。どうしよう…。


晴斗、ドキドキする。この刀…一体どうしろと!?



この戦闘で宇崎は晴斗に目をつけていた。

「あの生徒が暁晴斗ねぇ。素人とは思えないなぁー。なんなんだ、あの身体能力。彩音、鼎の様子はどうなの?」
「救護所で休んでいますよ。やっぱり身体に負荷が相当かかっていたみたいで…」
「あの生徒、近々本部に来るよ。鼎のブレードそのままなんでしょ?返しに来るはず」

「室長、こんなことあるんですか?鼎専用の武器が他人が使えるってこと…」
「…ないねぇ。だから彼が気になっているのさ。暁晴斗くんがね」



晴斗の非日常は既に始まりを告げていた。たまたまとはいえ、鼎と出会ったことによって。