廃工場で突如出現した薔薇型怪人と戦闘員。鼎は敵の罠にハマり、蔓の餌食となってしまう。鼎の弱点は仮面であることが露呈したこの戦いに晴斗は到着、交戦するが――。



晴斗はこの状況に内心パニクっていた。落ち着け、落ち着くんだ。
先に鼎さんを助けないとどう見ても危ない。怪人はその後でもいいだろ!


晴斗は再びダッシュし、今度はハイキックを入れさらに鉈で怪人の体に叩きつける。こいつを怯ませないと鼎さんを助けられない!
この太い蔓、鉈で切れるのか!?ええーい!やってみるしかない!

鼎さんの時間がないんだ!迷ってられるかよっ!


晴斗は必死に鉈で蔓を切るがなかなか切れない。

「いくらやっても無駄だよ、ガキが」
「てめー!」

ローズ・メギドは突如、体の薔薇を使い花びらで攻撃する。視界が遮られるっ!



この様子を幹部2人は高見の見物をしていた。

「ローズ・メギド、なかなかやるじゃない。ゼルフェノアの仮面の女に目をつけるなんてね。彼女、弱点が見えてるもの。どうぞやられて下さいて言ってるようなものよ」
「鐡様、まだですかねぇ」



一方、廃工場。晴斗は思いっきりジャンプし、鉈で斬りかかった。メギドは不意討ちを喰らう。
その隙に蔓の切断に入った。こいつの体から蔓を切れば…!


晴斗は敵から容赦ない攻撃を受けてるにもかかわらず、鉈で攻撃しつつなんとか鼎に絡みついた蔓の切断に成功する。
「彩音さん!鼎さんを頼みます!」
「晴斗くん、わかった」

彩音は蔓の餌食となった鼎の顔に巻きついた蔓を掻き分ける。ようやく顔全体が見えた。鼎はかなり苦しそう。


「晴斗くん、これ使って!」

彩音は自分の銃をぶん投げた。晴斗は使えるかなんてわからないまま、銃を受け取り、構えた。
ダメだ…撃てない。だが、こいつを倒さないとさらに被害が広がってしまう。晴斗は銃で殴ることにした。

銃で殴る攻撃は予想外に効いたのか、ローズ・メギドはダメージを受けている。さらに晴斗は鉈で攻撃を畳み掛ける。鉈の扱いはもう慣れた。

「許さねぇー!」
晴斗は八つ当たりに近い攻撃をしていく。晴斗は苦しそうにしている鼎の姿がちらついてしまっていた。
なんで、なんでこうなるんだよ!鼎さんは何もしてないのになんでターゲットに…。


晴斗はかなり消耗していたが、一気に鉈で叩き斬り、さらには回し蹴りやパンチをしてローズ・メギドを倒した。
倒した後、晴斗はなぜか泣きそうになっていた。



彩音は鼎の介抱をしていた。鼎を寝かせ、体に絡みついた蔓を外し、呼吸しているか確認をする。
鼎は酸欠を起こし、気を失っていた。彩音は人前で鼎の仮面を外すわけにはいかないと判断→携帯用酸素吸入器を使うことにした。

これはアスリートが使うようなタイプの携帯用酸素吸入器だ。持ち運びしやすいので彩音は鼎の緊急用に携帯している。


彩音は手慣れた様子で鼎の仮面に酸素吸入器を当て、酸素吸入する。少しして、鼎は気がついたらしかった。
「彩音…?」
「良かった…気がついた…」


晴斗も2人の元へと来た。なんとなく、鼎に使った酸素吸入器が気になっていた。

「彩音さん、それは…?」
「これは鼎用の携帯用酸素吸入器。鼎はわけあって、人前では仮面を外せないから必要なの。晴斗くんも見たよね…。鼎の仮面…呼吸穴が1ヶ所しかないの。鼎は常にハイリスクで戦ってる。酸欠のリスクも高いのよ、どうしても。だから私達のサポートが必要なんだ」

常にハイリスクで戦ってる!?
でもなんで人前では仮面を外せないんだ?やっぱり何か理由があるんだ…。



晴斗は鉈を見つめた。なんかこの鉈、ただの鉈じゃない…。対怪人用って、こんなにも斬れるのかよ!?



鼎はなんとか起き上がり、彩音と話している。そこそこ回復したらしい。晴斗は安堵した。良かった…。



そんな戦闘後、突如空気が張りつめる。場の空気がピリついてるのだ。

全身黒づくめの黒いロングコートにピアス・首筋から左頬に刺青を入れたガラの悪そうな男性が現れたのだ。
その男性は背が高く、目立つ。男はフードを目深に被っていた。


その男性はいきなり晴斗に近寄った。耳元で囁く。ねっとりとした話し方。

「お前、なかなか筋があるじゃねぇか。あんたにメギドを倒せるか、俺の計画達成が先か…見ものだな。楽しみだよ」


なんなんだ、この薄気味悪い黒づくめの男は…。
鼎はまだ完全に回復したわけではないが、彩音に支えられて立っている。鼎は男に思わず聞いた。

「貴様は一体何者だ!?…人間じゃないだろ…」
「ご名答だな、仮面の女。いや…紀柳院鼎。俺はメギドを統べる者・鐡だよ」


メギドを統べる者…?鐡…?


この男、つまり…えーと…ラスボスですか!?
ラスボス認識でいいのか!?自分から「統べる者」って言ってるし!?

人間の姿こそはしているが、メギドとかいう怪人かよ…。つまりこれって、鐡とかいうやつに因縁つけられた!?


鐡はニタァと笑うと姿を消した。あの消え方は人間には出来ない。



ゼルフェノア本部。宇崎もこの様子をモニター越しに見ていた。

「メギドを統べる者・鐡…。こりゃあ緊急会議しないとマズイな。しかし、なんで暁晴斗に急接近したのかわからんな…」



ローズ・メギド戦から数日後。晴斗は契約書を再び持ってきた鼎と会う。
晴斗は戦うと決めたのか、ゼルフェノア契約書にサインした。

どうやら晴斗は苦しむ鼎の姿と鐡と遭遇したことにより、戦う決意をしたようだった。


晴斗はいつの間にか鼎のことを「鼎さん」と呼んでいた。
彩音さんから聞いた鼎さんの話…常にハイリスクで戦ってると聞いてから戦うしかないと感じた。

あの仮面は後に彩音経由で日常用兼戦闘用、市販のものではなく彼女専用に改良された軽くて頑丈なものだと聞いた。
だから場合によっては、酸欠や過呼吸のリスクがあるという。それで鼎と関わりが強い隊員は携帯用酸素吸入器を持ち歩いてるという。



晴斗は高校生ながら、ゼルフェノア隊員(一時隊員)という二足のわらじを履くこととなった。
本部は晴斗が契約書にサインした時点で、既に学校に話をつけていたらしい。

学生の隊員は一時隊員という扱いになるらしく、制服は支給されない。武器と隊員証は支給されるのだが。



晴斗は何もなければ放課後、ゼルフェノア本部に顔を出すようになる。
鼎や彩音以外の隊員とも、少しずつ親交を強めていくことになるのだが。

やっぱり気になっていたのは鼎だった。なんでわざわざハイリスクな戦いを彼女はしているのか?
仮面の理由がものすごく気になる。そのうちわかるのかな…。