幹部が3人いると判明したのはいいが、いまいち打開策がない。
晴斗はたまたま釵游と交戦したことで、晴斗の日本刀型ブレード・恒暁(こうぎょう)が釵游の十文字槍と相性抜群だと判明。


「あの手応えって、そういうことだったの!?」

晴斗はびっくりしてる。御堂はだるそう。
「みたいだぜー。どうやら相性があるみたいなんだわ。俺が戦った杞亜羅の扇子にも効果的な装備はあるはず」
「飛焔の炎には何が効くんだろ…」

「単純に考えたら『水』になるが、簡単には消火出来ねぇ代物だぞ。あいつの能力は。
ゼノクから送られてきた武器シミュレーションデータによると、鼎の鷹稜(たかかど)が有力らしい。それも発動状態という、条件つき」

「発動はマズイでしょ!?」
「鼎は少しずつ火のトラウマを段階的に克服しているみたいだが、精神的にかなり負担らしくてな…心配だわ」
「そういえば今日、鼎さん来ていない…」
「トラウマ克服のための精神的疲労のピークが来たみたいでな、急遽今日休みにして貰ったらしいぞ」

「鼎さん、無茶したのかなぁ…頑張りすぎて」


心配する晴斗に御堂がさらっと言う。
「鼎は頑張りすぎてるくらいに頑張ってんだろうが。無茶しやすいけどよ…」



鼎が火のトラウマの克服を始めてから1週間以上経過していた。
バーチャルの火にはそこそこ平気になったが、まだ本物の克服には行けてない状態。小さな蝋燭の火ですら苦手なのだから。


鼎はこの克服を始めてから、あの事件の夢を頻繁に見るようになる。
真っ赤に燃え盛る炎と怪人。自分が生きたまま焼かれる夢だ。

夢はだんだんリアルさを増していた。悪夢にうなされる…。


そして、毎回のように夢の火の熱さで中途覚醒してしまっていた。実際は夢なので熱くないのに。
あまりにもリアルすぎたので、思わず自分の体を確かめた程だ。



鼎は火のトラウマ克服をやめようと考えていた。
日に日に生々しくなっていく、あの日の悪夢。



鼎が急遽休んだ翌日、彩音にこう告げた。

「トラウマ克服を始めてから、夢にあの事件が毎日のように出てきて…。もう耐えられない…。だから…火のトラウマ克服は辞退するよ…」


鼎の声に力がない。

毎日!?これは予想外だった。鼎に悪影響を及ぼしていたなんて。


「鼎に無理…させたかな…。そうだよね、辛いよね。毎日あの悪夢って……しんどいよ」
「日に日に生々しくなっていったんだ。解放されたい…」


鼎からしたらこの克服は酷だった。



そんな中、鼎にリモートで話がしたいとゼノクにいる流葵(るき)から連絡が。鼎は研究室の小部屋へ。


久しぶりに見た流葵は白いベネチアンマスクを着けていた。方針を変えてあえて人前ではそのままにしたとは聞いたが――。


「紀柳院さん、お久しぶりです」
「久しぶりも何も、あれから1ヶ月経ってないだろうが…」

「そうでしたね。こうして紀柳院さんと話が出来る場が出来て嬉しいんです」
「治療は進んでるのか?」


「今はゼノク内の居住区に住んでます。通院してますが、ひどい洗脳からはほぼ解放されましたよ。
仮面は人前では思うように外せないんで、西澤室長が『そのままでもいいよ』って。ゼノクの人達は優しいですよ」
「そうか…」
「紀柳院さん、本当は嬉しいんじゃないんですか!?仮面仲間の話、聞いたんです。それが引っ掛かってて…」


「流葵は6年も洗脳されていたのだな…。なかなか仮面、外せるはずもない。無理する必要はない」
「そのうち会えるといいですね。たくさん話、したいんです。紀柳院さんと」

「…あぁ」


リモートが終わった。

流葵は声のトーンからするに、元気そうだった。仮面をあえてそのままにする選択肢、西澤は私を参考にしたのだろうか…。いや、まさかな…。