蔦沼長官の繊細な調整を施された鼎の日本刀型ブレード「鷹稜」。
翌日、鼎は宇崎に呼ばれ鷹稜を受け取りに来る。


「鼎。長官が2日かけてブレードの調整をしてくれた。受け取ってくれ」
「3日かかるところを短縮したのか!?」

鼎はブレードを受け取りながら反応した。宇崎は続ける。
「長官が昨夜夜通し作業していたんだ。急ピッチでな。長官曰く、調整というよりも『改造』に近いそうな」


見た目は見慣れた「鷹稜」だが…。改造に近い?


「長官は今寝てるから、無理してお礼を言わなくてもいいよ。朝方4時くらいまでかかっていたらしいからね」
「そこまで急ピッチに…」
「敵のターゲットが鼎に絞られたんだ、長官だって躍起になるだろうよ」


鼎は鷹稜を見つめた。やはりこれがないと…。


その日の鼎はトレーニングをしなかった。前日、激しいトレーニングをしたせいもある。

この日は怪人が出現せず。



それから3日程経過。何もなかったところに警察零課の西園寺から連絡が。


「零課が飛焔を発見したって?」

「あぁ、あからさますぎて怪しいが起動隊を配置している。場所は宇根隈(うねぐま)山荘だ。ゼルフェノアも出動頼むよ」
「あぁわかった。西園寺刑事、そいつのターゲットはある隊員だ。警察は彼女を守ってくれないか?俺らはその隊員の援護に回るからさ」


「隊員1人がターゲット?」
西園寺は驚いている。

「飛焔は炎使いの怪人だ。蒼い炎を使われたら簡単には消火出来ないぞ…!」
「蒼い炎ってそんなにも危ないんですか!?」
「蒼い炎は消火に時間がかかるんだよ。うちの隊員に効果的に消せるやつがいるから同行させる。消防隊は要請しとけよ」

「わかっていますよ」



都内某所・宇根隈山荘。

そこでは警察と飛焔のにらみ合いが続いていた。宇根隈山荘は廃墟と化したペンション。
西園寺を始めとする零課は中の様子を伺っている。

「ゼルフェノアが来れば突入出来るんだが…。相手は怪人だからな…」


そこに御堂達が到着。

「西園寺さん、状況は?」
御堂は西園寺に聞いてる。山荘内部は動きがない模様。

「ちっ、内部は動きなしか…。わかっているんだよ。飛焔のターゲットは鼎だけだ」
「鼎?」

西園寺は御堂に聞いた。御堂は鼎を示す。
白いベネチアンマスク姿の女性隊員がいた。彼女が紀柳院鼎…。


「飛焔は鼎にしか興味がねぇらしい。鼎に行かせた方がいいんじゃないのか?」
「単独は危ないですよ」
「じゃあ晴斗、飛焔に悟られないように鼎と一緒に潜入してくれ」
「御堂さん、わかったよ」



鼎はブレードをいつでも抜刀出来るようにしている。晴斗は少し距離を置いて山荘へと向かう。


鼎は山荘の扉を開けた。
そこには椅子に座り、待ち伏せしていた飛焔が。

「また会ったな、仮面の女。…いや、紀柳院鼎」
「そこまでしてまで私を倒したいのか?」

2人の間にはピリピリムード。鼎はブレードを抜刀、先制攻撃。


飛焔も手から蒼い炎を発し、建物へと引火させた。

「火が苦手なんだろ?」
飛焔は挑発する。鼎は無言。
だが鼎は不思議と動けていた。晴斗はまだ出てはいけないと物陰から2人の戦いの行方を見てる。


鼎さんが火を見ても動じてない…。蒼い炎というのもあるのか?
トラウマ克服に使ったバーチャル炎は赤い炎だったと聞いてる。それで鼎さんはフラッシュバックと悪夢を見るようになって、バーチャル炎を使うのを止めたんだよな…。


鼎は発動を使わずに次々斬り込んでいく。まるで叩きつけるかのような荒々しい攻撃。

調整された鷹稜は使い勝手が良くなっていた。なんなんだ!?身体が軽い!?


宇崎から通信が鼎に入る。

「鼎、調整された鷹稜は身体の負荷がだいぶ軽減されている。戦闘の制限時間も約5分、伸びるぞ。連続戦闘時間は約20分だ。思う存分にやれ!」
「了解した」

鼎は鷹稜を攻撃的に使い、隙を与えない。時には肉弾戦も使い、飛焔に畳み掛ける。
飛焔は炎を剣に変えたが、鼎の蹴りを喰らう。


この女…いつの間に…。


その隙に晴斗は日本刀型ブレード「恒暁(こうぎょう)」を特殊発動、建物の蒼い炎を消火しにかかる。


もう1人いたのかよ!?


飛焔は晴斗の存在に気づかなかった。晴斗は叫ぶ。

「鼎さんは鼎さんの戦いをして!俺のことはいいからっ!!」
「晴斗…わかった!私は私の戦いをするっ!!」


鼎はブレードを発動させる。刀身が赤く発光する。攻撃的が格段に上がる。



宇根隈山荘・外部。


御堂達は晴斗と鼎を案じていた。彩音が心配する。

「鼎…大丈夫かな…。晴斗くんも」
「晴斗は大丈夫だろ。問題は鼎だ。あいつ…ボコボコにやられてなければいいが」


そこに時任が御堂にこう言ってきた。

「御堂さん、きりゅさんは大丈夫だと思います。だって見てないところでずっと、ハードなトレーニングを積んでいたんだよ!?」
「鼎はたまにストイックになるからな…」
御堂もわかりきっていた。


「私達は2人の帰りを待つことしか出来ないよ…」


彩音は蒼い炎がメラメラと燃える山荘を見つめるしかなかった。

2人とも無事でいてよ…!





第20話(下)へ続く。