宇根隈(うねぐま)山荘で起きた鼎vs飛焔の戦いは激しさを極めていた。
建物周辺では警察と他の隊員達が騒然としている。それもそのはず、山荘は飛焔の蒼い炎によって燃やされていたからだ。


消防隊も懸命に消火するが、蒼い炎はなかなか消えない。
このままだと、中にいる2人のゼルフェノア隊員は…!

消防隊も躍起になっていた。



山荘内部では激しさを極めている。鼎の発動したブレードの攻撃力は調整前よりも上がっていた。
身体に負荷が軽減されているせいか、身体が軽い。


飛焔はようやく本気を出す。怪人態になったのだ。

「紀柳院、お前を倒す!!」
「なぜ私を狙う!?何の意図があるんだ!」
鼎は攻撃しながら飛焔に問う。

「元老院の命でね、『都筑悠真』が生存してると都合が悪いんだとさ」
「元老院…だと」
「だから君を抹殺しないとならないわけ。君からしたら12年前の悲劇の再来になるわけだが」


12年前の悲劇の再来!?


晴斗は鼎を庇うようにして割り込んだ。そして飛焔怪人態に立て続けに攻撃する。

「晴斗っ!」
「鼎さん、鼎さんはどんな姿や名前であっても鼎さんだよ!『悠真姉ちゃん』も鼎さんの中に本当はいるんでしょ…?」



鼎はずっと『都筑悠真は死んだ』と晴斗に言ってきたが、本当はそうではない。

名前を変えた今でも『都筑悠真』は心の中にいた。いたんだ。今まで認めたくなかっただけで。



鼎は攻撃を止めてしまう。敵の魔の手が鼎に向かうが、晴斗は鼎を守っていた。

「鼎さんを死なせるものかよ…!」


鼎は再びブレードを構え、突進→一気に斬りつけつつ、振り向き様にさらに一太刀浴びせる。
この攻撃はかなり効果的だった。晴斗と連携しながら蒼い炎の中、戦う2人。



山荘周辺では消火活動が活発に。

「今、何分くらい経ったかな…」
彩音は時間を気にしてる。御堂はぶっきらぼうにいい放つ。

「まだ10分も経ってねーぞ」

嘘!?感覚がゆっくりに感じたからわからなかった…。


「あいつらには勝機がまだあるってことだよ。山荘が燃えてる以上、俺達は入れないが、信じるしかねーだろ彩音」
「そうだよね…」



山荘内部では熾烈な戦いが繰り広げられていた。
鼎の多段攻撃に飛焔をクリティカルヒットを受けている。さらに晴斗の特殊発動での攻撃で、飛焔怪人態はかなりのダメージを受けていた。


「まだまだぁ!!鼎さん、まだ行ける!?」
「まだ行けるさ」

鼎は発動の攻撃力アップモードをさらに攻撃力増しにした。刀身がさらに真っ赤に発光。
赤々とした鷹稜は、鼎の攻撃的なスタイルを具現化したようだった。


鼎はダメージを物ともせず、次々攻撃していく。鼎は攻めの戦闘スタイルなのだ。
ほとんど防御なんてしない。そのせいか、無茶をしやすいが。

鼎は得意の蹴り技でローキックを喰らわせ、さらにヤクザ蹴りのような攻撃を加える。
鼎は対怪人用ブーツを履いてるせいか、効果抜群。


飛焔に攻撃の隙を与えなかった。
2人の連携は信頼関係へと変わる。いつの間にか無言で連携していた。


晴斗はタイミングを見計らって叫んだ。

「鼎さんっ!今だー!!」


鼎は一気に居合いで飛焔を倒すことに成功。飛焔は意外と呆気なく倒された。
戦闘時間に制限が迫っていたせいか、鼎はかなり息を切らしてる。

晴斗は鼎の腕を肩にかけて山荘をなんとか脱出。鼎は気を失っていた。
蒼い炎は飛焔が倒されたことにより、消えた。



皆の元に戻れた晴斗と鼎。


鼎は制限時間ギリギリまで戦っていたのだから無理もない。

彩音はすぐさま応急措置に入った。
「鼎、相当頑張ったみたいだね。あの状況だったから酸欠起こしてたみたいだ…。誰か酸素吸入器、ある?」
「彩音、これを鼎に使え」

御堂は携帯用酸素吸入器を彩音に渡した。
彩音は手慣れた様子で鼎の仮面に酸素吸入器を当てる。しばらく気を失っていた鼎だが、気がついたらしい。


「ここは…?」
「建物の外だよ。鼎、気を失っていたの覚えてないの?」
「飛焔を倒してからは記憶が飛んでる…」


あぁ…鼎途中で酸欠起こしたんだな、やっぱり。


「鼎、よく戦えたね。なんで動けたの?周りは火に囲まれていたのに」
「…わからない。蒼い炎を『火』と認識していなかったのかもな…」



本部・司令室。


蔦沼はこの一部始終を宇崎と共に見ていた。

「紀柳院、火を克服していたようだね。どうだい?『改造版』鷹稜は」


「改造」って思いっきり言ってるよ、長官…。


「鼎の身体の負荷が軽減されただけであんなにも違うなんて驚きですよ。攻撃力アップモード、あんな機能ありましたっけ?」
「あぁ、あれね。あれは追加したのさ。攻撃力増しに出来るようにしたの」


そんな機能いつの間に!?
しかも鼎、使いこなしてるし!


「使い勝手重視で改造したから、彼女の鷹稜を使った印象はほとんど変わらないはずだよ。それじゃあ…」

蔦沼は席を立った。

「それじゃあ僕達はゼノクへ帰るよ。紀柳院によろしくね」


蔦沼と南はゼノクへと帰っていった。



異空間・元老院本拠地。


飛焔がまさかの鼎に倒されたことにより、元老院に動揺が広がる。
副官の絲庵(しあん)は慌てふためいていた。

「鳶旺(えんおう)様、大変です!飛焔が倒されました!」
「何を慌てておるのかね?絲庵よ」
「しかし…」

「私はある情報を掴んだのだ。蔦沼栄治は生きているとな」
「蔦沼…あの男に鳶旺様は素顔を見られたんでしたっけ…」

「今でも覚えているよ。あの屈辱をな…」



この様子を鐡は物陰から見ていた。次なるターゲットは蔦沼か…。
元老院は何かにつけて、ゼルフェノアをターゲットにしている節がある。

鳶旺を本気にさせたらいけない。このジジイはイカれてるからな…。
これらは口実で別の目的があるはずだ。それまでは動かない。


杞亜羅と釵游は元老院の命で動くようになってから、明らかにやる気がない。

せめて杞亜羅だけでも俺の元に置きたいが…。そうなると元老院と内輪揉めに発展しかねないか。