2回目の元老院の長・鳶旺(えんおう)戦から数日後。鼎の病室に晴斗と彩音・御堂が訪れる。

「鼎さん、退院決まったって本当!?」
晴斗、ちょっと声高め。
「あぁ。怪我もだいぶ回復したし、ようやく目処が立ったんだ」
「いつになるかわからないけど、これで一緒に本部に帰れるね」

彩音もどこか安堵している。御堂はこの間のことを聞いてみた。


「鼎、数日前にあったあれ…なんなんだ?お前の鷹稜が独りでに動いてたやつだよ」
「あれか?…どうやら私も晴斗同様、能力(ちから)に目覚めたらしいんだ」


なんだって!?
じゃああの時の光は…。


「間接的に戦ったことになると『北川さん』が教えてくれた」
「北川…司令?北川だと!?あの人…鼎に会いに来てたのか!?」

御堂、意外な名前を聞いてちょっと動揺。

「あぁ。北川さんは長官に要請されて来たと言っていた。…私を陰ながらに見守っていたと聞いて…」
鼎、ちょっと声を詰まらせてる。思い出したのか、泣いている?


「そっか。鼎のことを陰ながらに見守っていた人がいたんだね。まさか…北川元司令だなんて。
私もノア時代、北川さんとはちょいちょい会ってたよ。私がノアに在籍していた時に鼎のところに行ってきてと言われたの、北川さんからだったんだ」

彩音がしれっと重大なことを言ってる。


「彩音…それ初めて聞いたぞ!?私と彩音が出会ったのは北川経由だったのか!?」
鼎、驚きを見せている。


「そうなるね。今だから言えたんだ。黙っていたわけではないんだけど…びっくりしたよね」
「当たり前だろ。びっくりした…そんなことがあったなんて…」

鼎、まだ動揺してる。
親友との出会いに北川が絡んでいたなんて知らなかった。



本部・司令室。


「鼎の退院決まったのか〜良かった。いつ頃お前ら本部に帰れるの?時任と霧人が首を長くして待ってるぞ〜」
宇崎はいつもの調子で御堂と話してる。


「元老院の野郎、しつこいよな〜。長官と西澤から聞いたんだが晴斗と鼎の能力奪おうとしてるって、マジ?鼎が能力(ちから)を発現したことで危機は免れたみてーだが」
「鐡のやつが言ってたぞ。あいつら鐡一派は元老院と敵対しているぶん、相手のことを熟知してる。
今は同盟関係にあるから色々教えてくれて助かるよ」

「そういうメリットあるんかい…」
「とにかくお前らの帰り、待ってるからな」


電話が切れた。このまま順調に回復すれば鼎は1週間後に退院出来る。



ゼノク・司令室。

蔦沼はある特命を北川に出していた。北川とはリモート中。北川はどこにいるかはわからないが、蔦沼と話してる。


「北川。次の任務を出しておくよ。紀柳院のためにも受けてくれるよね?」
「長官、それ脅迫ですか」
北川、真顔。

「そんなわけないでしょ〜。元老院撃破には北川の力が必要なんだよ。協力しておくれよ〜」
「わかりましたよ。…で、何ですか」


蔦沼はニコニコしている。

「暁と紀柳院の能力(ちから)を高めるために、ちょっとやって欲しいことがあるんだ」
北川は察した。

「その任務、受けましょう」
「頼もしいねぇ」



それからしばらく経って。鼎は退院した。鼎は無茶しやすいからと、西澤からオーバーワークするなよと釘を刺されたが。


「鼎さん、おかえり!」
晴斗は思わず駆け寄る。

「待たせたな」
「鼎元気になったのか。良かった良かった。もう、無茶すんじゃねぇぞ」

あの口の悪い御堂が優しい。彩音も声を掛ける。
「これで皆で本部に帰れるね」
「本部へ帰る日はすぐではないんだろう?」

鼎は気になったことがあるのか、聞き返した。
「すぐなわけないじゃん。あと3日…私達はゼノクにはいるから。鼎も話したい相手、いるでしょう?まだ時間はあるよ」
「彩音…ありがとう」



翌日。鼎はゼノク東館にいた。流葵(るき)と話すために来た。
流葵と話すのは久しぶりな気がする。


「紀柳院さん達、あと2日で本部に帰るんですね。寂しくなります…」
「また会えるよ。流葵…いつでも会えるから」
「そうですよね。私も治療頑張ります。まだ仮面は外せそうにはありませんが…無理しない程度に」

「無理して仮面を外す必要はないだろう。流葵はずっと元老院に洗脳されていたんだ。ゆっくりと行けばいい」


流葵は肩の力が抜けたようだった。

そうだよね。ゆっくり治療すればいいんだ。ゼノクの人達も優しいし、良くしてくれる。ゼノクでは友達も出来た。


鼎と流葵の会話はしばらく続いた。



そして、ゼノクへ派遣された本部隊員5人が本部へと帰る日がやってきた。
組織車両に乗り込もうとした瞬間、流葵がわざわざ見送ってくれた。

「また来て下さいね」
流葵は手を振る。いつの間にか西澤と蔦沼まで見送っていた。



そして本部。晴斗達の帰りを待っていた人達がいた。時任と霧人だ。
5人は久々に本部へ入る。

すると時任がタックルするのかというくらいには猛ダッシュしてきた。

「みんな〜!おかえり〜っ!!」
時任の猛ダッシュは明らかにタックルする体勢。御堂と鼎はひらりと交わした。晴斗は時任の動きを読めずにタックルを受けることに。

「ぐわーっ!!」
晴斗、突き飛ばされた。

「暁くん、読めてないなぁ」
時任はけろっとしてる。
「だからといってタックルしてくんなっ!」
「いつも通りに戻ったっすね。話は聞きましたよ。元老院のやつ…相当厄介だって」
「おい、いちか。まだ敵は倒したわけじゃねーぞ」

御堂、割り込む。
「わかっていますよ。鐡一派が同盟組んだ時はびっくりしたけど、鐡さんめちゃめちゃ強いっすね。
室長もあの戦いを分析したら、鐡の方が元老院の長よりも強いって」


鐡の方が強い!?

確かにあの時、鐡は人間態・鳶旺(えんおう)は半怪人態で戦っているように見えた。
鳶旺はヤケになったのか、半怪人態だったが鐡はまだ余裕を見せていたし…。



異空間・元老院。

「絲庵(しあん)、計画を進めるぞ」
「計画を進めるんですか!?」

「鐡がゼルフェノアと組んでいることが判明したからな。異空間には鐡一派は来ないだろう?
館の例の部屋…準備は進めているかい?」
「はい…着々と」

「ならよろしい。鐡との戦いは避けられないな…。計画は進めておくのだぞ」
「御意」