御堂達は突如現れた禍鬼・裂鬼と交戦中。

「なんなんだよ、お前らは!?」
御堂は普段通りの装備で応戦。彩音と桐谷は特殊な弓矢で追い払うが相手はこれまでの雑魚鬼とは格上なせいか、あまり効いてない気がする。


裂鬼は答えた。

「邪魔なんだよね、あんたたち。特務機関ゼルフェノアってあんたたちのことか〜」
明らかに裂鬼は挑発している。御堂は裂鬼相手に格闘するが、強い!

禍鬼は弓矢で牽制する2人に遠距離攻撃を仕掛けた。
「そんなちんけな弓でやっても意味ないですよ」


禍鬼は淡々と攻撃。裂鬼はかなり楽しんでいるようだ。
「禍鬼ー、こいつら倒すよりも上の奴ら倒した方が良くない?」
「指揮系統をやっちゃおうというわけか」
「ゼルフェノア本部叩いてもトップを叩かないと総崩れにはならないでしょ」


本部じゃなくて長官を狙う気か!?


御堂は一気に強烈な攻撃を浴びせる。
「させるかよっ!!」
「くっ!」

裂鬼は御堂の攻撃に怯んだ。禍鬼はとっさに判断。
「裂鬼、逃げるぞ」
「はあっ!?」
「機が熟すまでもう少し待つんだよ。絶鬼のことだから、所詮俺達は捨て駒でしょうよ…」


捨て駒…確かにね。


禍鬼と裂鬼は煙幕を使い、撤収。

「あんにゃろー、逃げやがった!!」
御堂はかなりイライラしてる。それにしてもあいつらは自分達を自ら「捨て駒」みたいだと言ってた。絶鬼とかいう奴が首謀者みたいだが。



数日後。鼎のもとにゼノクから手紙が届く。

「鼎、憐鶴(れんかく)から封書が来てるぞ。憐鶴の奴、お前に会いたいんじゃないのか?
今休養中だって聞いたし。慣れない表の世界でここずっと鬼を殲滅してたから、極度の疲労で休んでいるんだとさ。長官から聞いたわ。あのままやらせたら過労死してたって」

「執念深いな…」


鼎は封書を開ける。中の手紙には宇崎が言ってたような主旨が書かれていた。


「あの憐鶴が私に会いたいなんて、どういう風の吹き回しだ…」
「意図はなさそうだけどな〜。憐鶴は前々から鼎のことが気になっていたみたいだね。これ、西澤情報ね」


闇の執行人が私に会いたいなんてどういうことだ?
私はいわば表の人間だ。「仮面の司令補佐」という二つ名はもう、どうでもいいが。見た目まんまだろうがって…。

今や私に対して騒ぎ立てる市民もいなくなったが、市民の興味はこの「特殊請負人」「闇の執行人」こと、泉憐鶴に向いている。
その執行人が最近街に蔓延る鬼を殲滅してるのだから、市民の興味が向くのも仕方ない。



本部・休憩所。


「きりゅさん本気なの!?やめた方がいいって!」
いちかは必死に止めにかかる。

「憐鶴がわざわざ手紙を送ってきたんだ。それに行くかどうかは私が決めることだろ」


いちかは数ヶ月前に見た、憐鶴の素顔の一部がちらついていた。恐怖が蘇る。

「きりゅさん…憐鶴さんの顔の包帯の理由…詳しく聞いてくれませんか…?怖いけど」
「いちかは聞いてないのか、憐鶴は怪人…いや絶鬼の襲撃で重度の後遺症が残っている。医者も匙を投げるレベルのもので、治療法が見つからないまま10年経っている」

「治療法がないの…?」
「室長から聞いた。今のところ人間には治療不可能だと。あのレベルの怪人由来の後遺症は数人いるかいないかの稀有なものらしい。
人前には出られないから憐鶴は包帯姿になることを選択したんだろう」


いちか、かなり複雑になる。あの時思わず叫んでしまったことを謝りたい。

「…きりゅさん…私も一緒に行っちゃダメかなぁ…」
「どうしたんだ、急に」
「あの時は何も知らなかったとはいえ、素顔の一部を見て叫んでしまったことを謝りたい…」

いちかはしゅんとしてる。


「まだ返事は書いてない。お前も一緒に行ってもいいか、聞いてみるよ」
「補佐、ありがとうございます〜」

「いちか、普段通りの呼び名で呼べって。違和感ものすごいから…」


鼎的に、馴染みの仲間には普段通りの呼び名で呼ばれたい。堅い場所では肩書きで呼ばれてもいいのだが。



約1週間後。憐鶴から返信が来た。いちかの同行を許可する内容だった。


「えぇ!?私も一緒に行っていいんすか!?嘘、信じられない…」
いちか、どう反応していいかわからずおろおろ。


「手紙に注意書きがあった。休養明けだからあまり騒がないで欲しい、安易に体に触らないで欲しいと」
「なんか見抜かれているっすね…。エスパーかな…」

「いちかに悪気はないが、その無意識なボディータッチは嫌なやつは嫌だからな…。憐鶴がわざわざ書いたということは、相当警戒心が強いと見た」


「…で、ゼノクにはいつ行くの?」
「手紙に会いたい日にちが書かれていた。あと3日後だ」


鼎は憐鶴から送られてきた手紙の文字が気になっていた。あの包帯姿の弊害なんだろうか、文字がカクカクしていて時々文が蛇行している。
見た目が視界ほぼゼロだから、書くのに苦戦してるのだろうな…。

鼎も仮面姿だが、目の保護用レンズのおかげで狭いが視界はある。憐鶴は外見だけなら視界はほぼゼロに近い。


「あっさりOK出たのが意外すぎるっすよ。なんか怖くなってきた…」
「憐鶴はいちかを取って食わないから安心しろ」

「ホントかなぁ」
いちかはかなりの不安に圧迫されている。
鼎は知らないがいちかは断片的に素顔を見てしまったために、恐怖が増幅されている。



その頃、憐鶴はリモートである人と交流していた。同じ重度の後遺症がある、あの覆面シンガーと。
覆面シンガーは顔全体を布製のマスクで覆っていた。端から見たらのっぺらぼうにしか見えない。マスクは立体的に作られているためか、鼻が際立って見える。

彼女はパステルカラーのマスクをしていた。マスクのせいで顔はないが、クリーム色のマスクはどこか明るく見えた。


「あなたも10年前に襲撃されたんですか…」
憐鶴はシンガーに聞いてる。シンガーは答えた。


「じゃないとこんな姿で人前には出られない。私も稀有な怪人由来の重度の後遺症と診断されてからは生き地獄ですよ。数人いるうちの1人に会えて良かったです」
「私には抵抗なかったんですか?『闇の執行人』ですよ!?」

「今はそうは見えない。鬼をやっつけてくれているじゃないですか」

憐鶴、沈黙。覆面シンガーの彼女は切り出した。
「…すいません、そろそろ時間なので終わってもいいでしょうか」
「どうぞ」


覆面シンガーの彼女は次の予定があるらしい。約10分の会話だった。
憐鶴は自分と同じ重度の後遺症の人間と話が出来たのが良かったのか、どこかホッとしていた。



「…で、やっぱり行くんだね。憐鶴んとこ」
「行くことにしたよ。室長、当日は私といちかは一緒に行くから」

「鼎、いちかが怯えてたらフォローしてあげろよ」
「わかってる」

「…あ、運転手は桐谷にしたから」
「それは良かった」


鼎からしたら桐谷が運転手なのは頼もしい。