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第21話(下)

ゼノク研究機関及び複合施設はスケールだけなら本部よりも大きい。
研究施設・メインとなる本館・隣接する組織直属病院・東館・西館・居住区とある。組織用の宿泊棟もある。

ゼノクは怪人による後遺症治療施設も兼ねてるため、入居者用の居住区も完備されている。
一見すると福祉施設にも見えるがそうじゃない。怪人被害に遭った者の中には、自ら被験者としてゼノクに行く者もいる。


ゼノクはかなり複雑で、後遺症のレベルによっても区分けされている。特に病院の怪人被害専門病棟は常に患者がいる。
入居者達は分け隔てなく交流しているが。



そんなゼノクに元元老院監察官の桜井流葵(るき)がいた。
流葵は約6年もの間、異空間で洗脳された影響でたまに「元老院に戻して」と懇願する時があるがだいぶ落ち着いてきた。だが、元老院の証である白い仮面は未だに人前では外せずにいる。


外したいのに、外せないのだ。


西澤は彼女をあえて仮面を外さないで治療する方針にした。無理やり外したら嫌がるだけ。拒絶なんてされたら何も出来ない。
西澤は鼎の例を元に流葵の治療を進めている。



そんな流葵とよく話す職員がいた。紬原(つむぎはら)だ。
紬原は流葵に親身になっていた。

「そっか。紀柳院さんに会いたいのかー…。リモートはこないだしたんだよね」
「はい。ですが直接会いたくて…。私、まだ人前で仮面外せそうにないし、色々と聞きたいんです」


元老院の仮面の掟はしぶといなー。あれからそこそこ経つのに、彼女は人前では仮面姿のままって…。

もう1人の伊波さんも迷い人で、元老院で監察官候補にされた挙げ句、強く暗示をかけられたんだよなぁ。伊波さんはそろそろ仮面外せそうだけど、元老院…絶対怪しい。



ゼノク・司令室。


蔦沼はあることに気づく。

「元老院の次のターゲット、まさか僕なわけないよな〜。いや…でも鳶旺(えんおう)のことならあり得るか」
「どうしたんですか、長官」
「あ、南。ゼノクの防衛システムすぐに起動出来る状態にしといてね。シールド張れるでしょ?」
「いつでも可能ですよ」
「もし、元老院が攻めてきたら僕が直接戦うしかないじゃない」


ちょ、な…何言ってんの!?隊員を差し置いてその発言はちょっと…。


「長官、ゼノクに本部から数名派遣させればいいのでは?腕の立つ隊員を」
西澤が提案する。

「確かにゼノク隊員はゼノクの守備には強いけど、うーん…ちょっと考えてみるね」


その軽いノリ、どうにかならんか…。



異空間。元老院本拠地。


鳶旺と絲庵(しあん)は釵游(さゆう)を呼び出す。

「釵游、君はこれからこの施設に行って貰えるかな?『ゼノク』にだ」
「ゼノク…ですか?」
「どうやらここに蔦沼がいるらしいんだよ。手段は問わない。そいつを引き摺り出してやるがいい」

「御意」


釵游は姿を消した。釵游は冷めている。
なんで俺があいつの命令に従わなければならないんだよっ!元老院の力が強いから逆らえない…。

鐡はどこにいる?


釵游はうろうろしていると、いつの間にか鐡が。

「釵游、俺に助太刀かい?」
「鐡様?」
「元老院には一切手は貸さないが、お前には協力してやる。元老院から離れたいんだろ?杞亜羅(きあら)も離れたいと言っていたからね。これでほぼ決まりだろ。
…今回の『ゼノク』の戦いは俺が絡むがお前らは干渉すんなよ。これは俺とジジイとの代理戦争のようなもんだ。もしかしたら暁にまた会えるかもしれねーからな」


鐡は楽しそうにして消えた。
これを物陰から見ていた者がいた。元老院副官の絲庵。


鐡は絲庵と一体何を話していたんだ…?


絲庵、疑心暗鬼になる。

鐡は鳶旺様を嫌っている。とても双方が衝突するとは思えないのだが、鐡は幹部を介する可能性が出てきた…。


鐡は読めない奴だ…。


第21話(上)

飛焔戦から数日後。一時的に怪人は首都圏に出現しなくなる。
逆に出没報告が増えたエリアが北関東。北関東にはゼルフェノア研究機関及び複合施設・ゼノクが存在する。

そのゼノクを管轄しているのが蔦沼長官だ。厳密には西澤室長と蔦沼長官の2人体制で仕切っている。



群馬県某町。ゼノク・司令室。


「最近、北関東にメギド戦闘員の目撃が相次いでますが…長官、ゼノク隊員を出動させますか?」

西澤は長官にさりげなく聞いた。蔦沼はしれっと返答。
「まだで良くない?敵の動向が不透明すぎる」


ゼノク隊員とはその名の通り、ゼノクを守るためだけに結成された隊員達である。本部・支部とはかなり毛色が違う。
普段はゼノク職員の顔を持つが、職員の何割かは隊員でもある。

ゼノク隊員の制服はゼルフェノア隊員と同じ詰襟タイプで右腕には共通の赤い腕章デザインもあるが、カラーリングが異なる。
ゼノク隊員の制服のカラーリングはブルーグレー。
ちなみにゼルフェノア隊員は白い制服だ。


蔦沼はこの北関東に出没しつつある戦闘員の様子見をしている。
西澤は気にしているようだが…。

「ゼノク隊員、本当にまだ出さなくていいんですか?」
「パトロールくらいなら出してもいいよ。元老院の狙いがなんなのか、わからないんじゃ攻めようにも攻められないよ」


相変わらず呑気だよなぁ、長官は。…って、何ナチュラルに義手のメンテしながら話してんの!?
さっきからカチャカチャ音するな〜と思ったらそれかいっ!


西澤は長官の腕をチラッと見た。長官は両腕とも黒いスタイリッシュな義手なのだが、右手で左腕をカチャカチャと弄ってるよ…。
義手は戦闘兼用だから気になっているのかもしれないが、せめて会話の時くらいはやめてくれよ!…と言えるわけもなく…。


相手は上司ってか、これでも組織のトップだもんなぁ。長官のイメージが見事にぶっ壊わされたが。

長官はマイペースで自由奔放だからか、俺達はしょっちゅう振り回されてる…。



ゼノクではこれが日常茶飯事と化している。自由奔放でマイペースな長官に振り回される室長と秘書の図…。



本部・休憩所。


晴斗は鼎達女性隊員3人がいないことに気づいた。


「御堂さん、鼎さん・彩音さん・時任さんは?」


御堂はだるそうに答える。

「鼎達3人は今日は休みだよ。予定があるっつーから休みを合わせて貰ったらしーぜ」
「3人で出かけたのかな?わからないけど」
「時任は鼎と仲良くなりたくて、わざわざ本人に了承得たらしい」

「時任さんって言動があれだけど、やっぱり鼎さんのこと気になってんのかな…」
「…みたいだぞ。女子同士なら話しやすいだろうし。女子会っていうんだっけ、あれ」

御堂は疎い。



その女子3人はある場所で待ち合わせをしていた。
鼎と彩音が合流後、時任が少し遅れてやってきた。


「ご、ごめんなさいっ!遅れました」

時任は必死に謝る。彩音は優しく言う。
「いちか、これくらい遅刻には入らないって。鼎、今回の目的の場所…いちかも連れて大丈夫…かな」

鼎はぼそっと呟く。
「その場所に着いたら騒ぐなよ」


時任はびくっとした。きりゅさんは私服姿なのに…空気がピリピリしてる。
仮面で顔が隠れているのもあるんだろうけど。私、きりゅさんの私服初めて見た…。


「仮面と手袋」以外はわりとよく見るような無難な格好をしてる。
鼎は時任に気づいた。

「どうした?時任行くぞ」
「…は、はい!」


時任、初めて鼎・彩音と一緒にお出かけ。



都内某所・路地裏にひっそりとその店はあった。レトロな佇まいのその店には「橘工房」とある。
鼎は時任に語気を少し強めに言った。

「時任。店舗部分は好きに見ていいが、私は奥の工房に用があって来たんだ。店内では騒ぐなよ?いいな」

そう言うと鼎は店内へと入っていく。彩音と時任も続く。
店内は様々なベネチアンマスクや覆面レスラーのマスクなどがあった。


なんだ?このお店…。マスクばかりだ…。
時任は店内をキョロキョロしている。


鼎は声を掛け、奥の工房に通されていた。店員らしきお兄さんが2人に声を掛けた。

「紀柳院さんのお友達ですか?」
「私は友達ですが、彼女は同僚です」


彩音がさらっと説明。お兄さんはこんなことを言った。

「今日は彼女、紀柳院さんは『食事用マスク』のフィッティングに来たんだよ。マスクはほぼ完成したからあとは微調整。ずっと人前で食事が出来ないことを彼女は悩んでいたみたいでね…」
「きりゅさん…ずっと悩んでいたの……」


時任は軽く衝撃を受けた。

人前では常に仮面姿の鼎からしたら、食事をするのも難しい。飲み物なら仮面をずらすだけでいいが、食べ物だとそうはいかない。


鼎は「当たり前のこと」がしたかった。



奥の工房では職人の橘が鼎に優しく聞いている。

「着け心地はどう?そのベネチアンマスクをベースにしてるから違和感はないと思うけど、何でも言ってね」
「練習すれば人前で食事は出来ますか…?」


鼎の姿は後ろ姿しか見えてないためわからないが、橘は答える。
「最初は苦戦するかもしれないけど、慣れるから気にしないで。口回りはどうしても汚れちゃうのは仕方ないんだよ」
「そう…なのか…」

「あとは?見た目はほとんど寄せたから、目の負担もかからないはず。目の保護用レンズは鼎さんには必要だもんね」
「…はい」

鼎は複雑そうな返事をした。



店舗では時任が泣きそうになっていた。知らなかった鼎のことを聞いたせいもある。

当たり前のことがしたかったって…辛いよ…。
確かにそうだよね、きりゅさんは人前ではずっとあの白い仮面姿だもんなぁ…。

あれがないと外出出来ないって、素顔そんなにもひどいのかな…大火傷の跡…。


彩音は時任を落ち着かせようとする。

「いちか、鼎は今まで1人で隠れて食べていたのはこういう理由があったからなの。嫌っているわけじゃなくてね。仮面の弊害っていうのかなぁ…」
「それ…めちゃくちゃ辛いじゃんか…」


だからきりゅさん、時折寂しげにしていたのか。やけに背中が寂しい時があった。疎外感?孤独感?


しばらくすると鼎は工房から出てきた。

「鼎、フィッティングはどうだった?」
彩音は鼎に感想を聞いてる。
「あと少しで完成するそうだ。マスクの微調整をかけると聞いたよ。…時任どうした?」

「いえ…何でもないっす…」



某公園。鼎達はここで休憩することに。
ポツポツと雨が降ってきた。鼎と彩音はベンチに座っている。

時任はいつもの元気をすっかりなくしていた。


きりゅさんにそんな事情があったなんて…。私知らなすぎ…。


「き、きりゅさん」
「どうしたんだ」
「きりゅさん…ずっと悩んでいたの?『当たり前のこと』がしたいって話聞いて…。なんかごめんなさい」


鼎は時任に顔を背けたまま。やがて雨はしとしとになる。

「…ずっと悩んでいたよ。人前で食事が出来ないって、かなりキツいものがあるからな…。
赤の他人は皆言うが、事情が事情だ。簡単に人前で仮面を外せるわけもない。目に負担がかかるから長時間素顔になれないんだよ」


鼎は静かに立ち上がる。そして時任を見た。
雨に濡れているせいか、仮面の目の保護用レンズに水滴がついている。見づらそうだ…。


「私は雨が嫌いだ…」
鼎は保護用レンズの水滴を拭っている。まるで涙を拭っているような動作。


「きりゅさん、私今日来て邪魔だったかなぁ」
「そんなことはないよ」

鼎の声が優しくなった。


「工房にいた時、お前泣きそうになっていただろ。時任は言動があれだが、本当は優しいんじゃないかって思えた…」
「そ、そんなことないっすよ!!私は思ったことを言っただけで…それだけで…」


雨はやがてザーザー降りになる。3人はびしょ濡れになったが、鼎は時任の手をそっと握る。

「私(のこの姿)が怖いか?」
「怖くないよ。きりゅさんはカッコいいし、強いし頼れるから…。見た目じゃないよね」
「良かった…」



やがて雨は止んだ。

彩音は鼎にタオルを渡す。

「先に仮面を拭きなよ。目のレンズ、水滴ついてるから。視界不良は危険だよ」

「ありがとう」


水滴だけで危ないの?

彩音は時任にかいつまんで説明した。


「鼎はね、水場が苦手なんだ。仮面の弊害で視界不良にどうしてもなっちゃうから、まぁ仕方ないんだけどね…」
「海とか行けないの!?」
「見るだけなら可能だ。水に入らなければな」


仮面の弊害…。大変そう…。



ゼノクではゼノク隊員達が動く流れに。

「ゼノク周辺にメギド戦闘員って、どう考えても怪しいでしょうよ」





第21話(下)へ続く。


無題


話題:おはようございます。
昨日の拍手18個ありがとうございます。W杯全然見てないんだけど、今朝の速報で日本がスペインに勝ったと知って「ジャイアントキリングじゃん!」…となった自分がいる。



創作設定カテゴリー、主要人物1の「紀柳院鼎」を追加更新しました。
鼎さん一気に追加されたなぁ。攻撃的な戦闘スタイルを好むとか、武器の鷹稜を作った人が長官とか。


第21話から新章突入したいのですが、まだいまいち固まってない…。長官にフォーカスされるっぽいので、ゼノク編になるか?
第1話〜第20話までは実質、鼎さんの章と言っていいかも。仮面の隊員編的な?

骨組みとなってる夢日記+脳内ドッキングのやつでも中盤はゼノク編だったし…。
序盤が鼎さん絡みなのも同じかな。骨組みをブラッシュアップしたら、心理描写が増えた感じに。


戦闘パートの文章力が追いついてない…。本当はカッコいいイメージで書いてるのだが…。特撮意識してるんで。


演出でカメラワークが映画ばりにぐるんぐるんしていたり、スローモーションが入ってたりしてるんですよ。
イメージは仮面ライダーギーツのようなスタイリッシュアクションなんですが…。いかんせん、文章力があれなせいで残念な戦闘パートになってる…。


ニチアサみたいな感じでさ…。


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