鐡の襲撃から約1週間後。ようやく晴斗の日本刀型ブレード・恒暁(こうぎょう)の調査結果が出る。
「ずっと借りててごめんね。君のブレードを返すよ」
返しに来たのは西澤。晴斗はブレードを受け取る。西澤は続けた。
「調査結果なんですが、あのイレギュラーな発動は超攻撃型であると判明したんだ。体力の消耗、半端なかっただろう?どうやら体力と引き換えに力を発揮するタイプのものらしい。
あと、考えられるのは『怒り』が発動のスイッチになっていたのではという説。何か心当たりないか?」
晴斗は鐡戦を思い出す。無我夢中で鐡と戦っていたが、鐡が嘲笑いながら街を破壊す姿が許せなかった。
「西澤室長…俺、あの時めちゃくちゃ鐡が許せなかったんだ。鼎さん達を罠にハメて俺目当てであんなにヘラヘラしているなんて…」
そこに蔦沼が姿を現した。
「どうやら鐡は愉快犯的な感じでバトルを楽しんでいる節がある。ずっと人間態だっただろう?」
「確かに」
「鐡はまた暁のところに来るだろうよ。このイレギュラーな発動は『怒り』が原動力になっているみたいだし、ブレードが共鳴したのかなぁ」
共鳴?
「調べたらあのオレンジ色のブレードはプログラムされていなかったものだとわかったんだ。宇崎が言ってたよ。
君の父親も『怒り』を原動力にして戦っていたな〜。怪人の悪行が許せなくてね。陽一と君は本当に似ている。僕が司令時代、陽一は隊長やっていたからね」
ゼルフェノア黎明期に父さんと長官は同期だったの!?同じチームにいたってこと…!?
蔦沼はゆっくり話そうかとある部屋へ晴斗を通した。西澤は司令室へと戻る。
「暁、ゼルフェノア黎明期について知りたいかい?」
「父さんが隊長だったことしか知らない…知りたい」
「ゼルフェノアはたった10人のファーストチームから始まったんだ。僕が司令・後輩の宇崎は研究者・支部の小田原司令は当時隊員だったのさ。君の父親の陽一は隊長をしてた。
ファーストチーム名義からゼルフェノアになった当初の初代司令の北川もいたよ」
「北川さん…名前だけ聞いたことある。父さんと仲良かったんでしょ!?」
「なんで知ってるんだ…」
蔦沼は驚きを隠せない。
「父さん、よく言ってた。『北川司令』にはよくして貰ってたって。12年前のあの都筑家放火事件…父さん間に合わなくて助けられなくて泣いてたって」
「都筑悠真は『紀柳院鼎』として、名を変えて生きてることを君の父親は知ってるはずだよ。ずっと黙っていただけで。おそらく…君の母親も」
「母さんずっとあの事件のこと、タブー視していたのに…最近になってから受け入れてたのって」
晴斗は何か思い当たるようだ…。
「陽一から悠真が生きてたことを聞いたからじゃないかな。『紀柳院鼎』という、仮面の隊員となって」
それにしてもゼルフェノア黎明期には「ファーストチーム」なる、前身の組織があったなんて知らなかった。
北川さんは「ゼルフェノア」名義になってからの最初の司令だったんだ…。
後で長官から聞いたが、ゼルフェノアはファーストチーム時代込みで20年経ってない組織だということを知った。
ゼノク・司令室。
蔦沼はマイペースに司令室へと戻ってきた。
「暁に変なこと話してないよね?長官」
「話すわけがないでしょう。暁は陽一からある程度聞いてたみたいだ。北川がいればな〜。あいつ、元気かなぁ」
蔦沼は北川と繋がりがあった様子。
「まぁ、北川も臨時隊員だから呼ぼうと思えばすぐに呼べるか」
「北川さん、臨時隊員なの!?元司令が臨時隊員って、なんかすごいな…」
蔦沼は嬉しそうに話してる。
「北川はな〜ヤバいんだぞ〜。司令なのに自ら現場にガンガン行ってたし、あの連続放火事件を機に色々あって辞めちゃったけどさ…。まさか暁と紀柳院がその犯人を倒すとはね」
「案外隊員の活躍見てそうだな…その人」
「見てると思うよ」
異空間・鐡の本拠地。
鐡は幹部2人を呼んでいた。
「あの…ありがとうございます。元老院から解放してくださって」
杞亜羅(きあら)が丁寧にお礼を言う。鐡はいつもの調子。
「そう、かしこまんな。元老院の道具になるお前らが見たくなくてやったんだ。いいか?元老院を潰すぞ。あいつらとんでもねぇ計画立ててるかもしれねぇからな。
お前らが元老院の道具になってる間、あの館を調べたのよ」
釵游(さゆう)も話を聞き入っている。
「あの館、隠し部屋らしきものがあったな。絶対に怪しい。近々超小型メギドをスパイとして送り込む」
超小型メギド!?
「目視するのも難しいくらいに小さい怪人だよ。そいつらを大量に放つ」
「群れでやるの!?」
杞亜羅は「えぇ!?」というリアクション。
「超小型メギドは群れで動く習性があるからな。あいつらには作れない、高性能な怪人だよ。単体だと弱いが群れると強いぜ」
あぁ…鐡様は本気で元老院を潰す気だ。
異空間・元老院。
「…で、長はどうするんですか。鐡がまた来る可能性がありますが」
「放っておけ。あんなやつ、一過性に過ぎんだろう」
鳶旺(えんおう)はまだ鐡の脅威に気づいてない。
「鐡がまた攻めてくる前に先に蔦沼をだな…」
「蔦沼に対しては相当根に持っているみたいですね…」
あの男とは因縁がある。そろそろ私が行こうとするか…。
第28話(下)へ続く。