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第44話(上)

鼎の対怪人用ブレード・鷹稜(たかかど)が特殊なものだと判明。
禹螢(うけい)に奪われた鷹稜を奪還するべく、ゼノクの異空間ゲートがある部屋で蔦沼から話を聞かされることに。


「長官、鼎さんのブレードが特殊ってどういうことなんですか?鼎さんの『均衡が崩れ始めている』ってどういう意味?」


ゼノク・異空間ゲート部屋の扉の前で晴斗は蔦沼に聞いていた。


「君たちには話してなかったね。紀柳院の鷹稜のこと。あれはただのブレードじゃないんだ、バランスを保つために作ったの」
「バランス?」

「能力と身体のバランスのことだよ。彼女の特異な能力が奪われた今、バランスを保てるものは鷹稜のみ。それを最初から想定して作ったのさ」


最初から想定して作った!?


「異空間に行く前に助っ人を連れてきたよ」
蔦沼はある方向を示す。そこには支部の月島と鶴屋が。西澤が説明。


「禹螢は怪人態になると、電子機器に介入出来ることが判明しました。この間、紀柳院がやられ救助されるまでかかってしまったのがこの能力。
通信にノイズが入り、通じなかったのはこのせいです。本部司令室も妨害に遭っています」
「…どうすんだよ、妨害されたら。通信出来ねぇぞ……」

御堂は気になっている様子。


西澤は付け加えつつ、ある動物を見せる。


「この子を連れて行って下さい。訓練された鷹です。役に立つはずです」
「鷹ぁ!?」
「人懐っこいので襲いませんよ。命令を出せば攻撃可能です。この子はゼノクと異空間を行き来出来るように訓練しましたから。偵察用に連れて行ってね」


動物までも訓練されてるゼノク、恐るべし。


西澤はゲートの重い扉を開いた。扉の向こうは何やら淡い光のもやもやした空間が見える。

「ゲートの扉は開けておきます。異空間とこの世界が通じるゲートは他にもありますから。
ゼノクのゲートはそれの1つに過ぎない」
「異空間から帰る時、道祖神やお地蔵さん、風車を目印にすればゲートは見つかりやすい。あの異空間には本来、日本的なものはないからね〜」


じゃあ誰が目印置いたんだよ!?
蔦沼は何か言いたげにしてる様子。

「御堂、ゲートへの目印を置いたのはファーストチームのメンバーだ。異空間の研究もしていたの。
あちらの人達にわかりにくいようにしてね」


晴斗・御堂・時任・桐谷・月島・鶴屋の6人はいよいよゲートの中へ。
蔦沼と西澤は隊員達を見送った。

「絶対に深入りはするなよ!鷹稜奪還だけすればいいからねー!帰ってこいよ〜」


「深入りはするな」とは?



異空間。御堂達6人は森の中にいた。異次元とあって変な生物や不気味な鳴き声が聞こえてる。


「なんか気味悪いっすね」

時任はあっけらかんとしてる。
「月島と鶴屋はなんでまた助っ人に…」
御堂の問いに2人は答えた。

「広範囲攻撃が出来るから抜擢されまして…。私の場合は楽器型武器さえ変えれば電子機器の介入は避けられます」
「俺も月島と同じ理由だよ」


助っ人2人はネオメギドに有効性のある攻撃スタイル。



6人は森を抜け、集落らしき場所へ。そこは苔むした廃屋がある場所だった。

「なにここ、廃村?不気味だな〜」
「何のんきなこと言ってんだよ晴斗。敵がいつ出てもおかしくねぇんだぞ?」
「異空間とは思えない場所ですねぇ」
「桐谷さんものんきだな!!」


禹螢は隊員の姿を発見、襲撃にかかる。

「なんでこんなところにゼルフェノアの連中が?ま、いーや。このオモチャでな」

禹螢は鷹稜を抜刀、ヘラヘラしながら御堂に襲いかかった。御堂は銃で応戦。晴斗はその隙に鷹を飛ばした。


「皆さんお揃いで何しに来たのかな?」
「そのブレード、返して貰おうか」

御堂はギリギリと禹螢に迫る。禹螢はブレードでかなり攻撃的に切りつける。


「お前、あの仮面の女が大事なのか!?この刀、あの女から奪ったんだよ」
「てめぇ…!」

禹螢はネオメギドを複数出現させ、他の隊員達を翻弄。
月島はトランペット型の武器を鳴らした。衝撃波がネオメギドを襲う。管楽器型なら禹螢の影響は受けない。
鶴屋は特殊札で結界を展開、さらに起爆札でネオメギドを追い込む。2人のおかげでネオメギドは撃破。


晴斗も禹螢戦に加勢。

「御堂さんっ!」
「晴斗っ!こっち来んな!!」
「…え?」

御堂は明らかに圧されている。鶴屋は機転を利かせ、特殊札で御堂と禹螢の周囲に結界を展開。

「鶴屋さん、なんで結界張ってるの…?」
「今回の任務はあのブレードの『奪還』だ。この空間で『深入りするな』と長官が言ってただろ。御堂が『来るな』と言ったのはそういうこと」

「あくまでもあたし達は御堂さんのサポート役だかんね。暁くんはまだわかってない。この任務、急いじゃダメだよ。
きりゅさん、助けたいんでしょ?」
「時任さん…」


桐谷も晴斗に声をかける。

「私達は御堂さんの方針で動いていますから。
鼎さんのブレードは彼が必ず取り返します。ネオメギドはまた出てくるはずです。油断大敵。なぜならここは敵の本拠地がある空間、私達はアウェイなんですよ」


そうだった。ここは異空間。周りは敵だらけ。
味方は周りにいる人しかいない。


晴斗は偵察に飛ばした鷹を見た。そろそろ戻ってくるはずなんだが。
しかし、よくゼノクは動物を訓練させてるな〜と。訓練犬もいると聞いた。警察犬や軍用犬みたいなものなのか?



御堂は禹螢と激しい攻防を繰り広げてる。

「あの女、悔しそうだったよ。反撃出来なくて」
「てめぇ、鼎に何をした!?あんなにぼろぼろになるまで攻撃したのか!!」
「悪いかねぇ。俺は手段を問わないの」


御堂は禹螢が許せなかった。御堂の腕の中で見た鼎の素顔が脳裏を過る。

あいつ…泣いてた。雨なのか涙なのかはわからないけど、悔しそうにしてて。
鼎は負けず嫌いだからな…。あの敗北はショッキングだったに違いない。
これまで以上にない敗北だから。


俺のことを名前で呼んでくれたのは、あいつに何かしらの変化があったからなのか?
今はまだ意識が戻らないから聞けそうにない。

とにかく鷹稜を取り返さなければ!


御堂は鼎のブレードを持った禹螢と戦う構図になり、複雑に。
禹螢はついに怪人態へと変貌した。隊員達に緊張が走る。電子機器に介入されたら通信は遮断されてしまう。


御堂は禹螢怪人態がブレードを闇雲に使っていることに気づいた。
いや…鷹稜が反発してるのか?禹螢は鷹稜に振り回されているように見える。


晴斗は攻撃に鷹を使うことにした。事前に専用の笛も渡されている。当たり前だが新品のもの。
晴斗は笛を吹いた。鷹は禹螢目掛けて滑空→攻撃を仕掛ける。

御堂は晴斗を見た。
「御堂さん、足手まといにならないようにするから…」
「アシストサンキュ。おかげで戦いやすくなったわ。そろそろ本気出すから、鷹は退避させろ」
「え?あ、はい」


御堂の本気とは?
そういえば御堂さんの本気、見たことがない…。





第44話(下)へ続く。


第43話(下)

鼎は禹螢により、ひどいダメージを受けていた。なんとか晴斗達に居場所がわかるようによろよろと徒歩で移動するも、流血してるのと激しく殴られ・蹴られたせいで進むペースはゆっくり。


鷹稜(たかかど)まで奪われてしまうとは…。あれは私の相棒なんだ…。
鼎は時々意識が飛びそうになりながらも、市街地へ出た。端末を見る。妨害は消えていた。


鼎は弱々しい声で宇崎に伝える。


「なんとか…生きてる状態だ…。至急、救急隊を…呼んで…欲しい…」
「鼎!?鼎なのか!?救急隊を送るから…待ってろよ!死ぬなよ!」
「……出血がひどい。意識が飛びそうだ…」

「鼎、頑張れよ…。今御堂達が向かってる」
「…あぁ…」

通信が途切れた。宇崎は司令室のモニターが妨害から消えたと知る。これで居場所がわかる。



御堂達は鼎を捜索中。

「室長?通信の妨害なくなったぞ。鼎の居場所が判明したって?…え…ダメージひどいのか…。わかった」
「御堂さん、室長なんて?」
晴斗が何気なく聞いた。

「司令室も妨害受けてたみてーで、ようやく復旧しただとよ。鼎の居場所もわかった。あいつ…かなりダメージ受けたらしい…」

「急ごう!」



都内某所。鼎は時折よろめきながらも、休める場所を見つけた。そこはビルとビルの間のスペース。
そこそこ空間があり、休めそうだ。

鼎は痛みに耐えていた。傷口からは血が流れているため、傷口を押さえながら、慎重に行く。
彼女は限界近かった。誰か来てくれ…。


雨がポツポツ降ってきた。やがて雨は本降りになる。


鼎は雨に濡れ、さらに体力が奪われる。立っていられなくなった。

「早く…来て…」


鼎の意識は途切れる寸前、かろうじて持っている状態。彼女はついに倒れる。
なんとか立ち上がろうとするも、力が入らない。

「死にたくない…」


鼎は雨に濡れながら、禹螢に反撃出来なかったことに悔しさを滲ませる。涙声になっていた。


御堂と晴斗は倒れている鼎の姿を見つける。御堂は鼎を起こし、そっと抱き抱える。

「起きろ!鼎!俺だ!来たぞ!!」
「和希…」

鼎は御堂の腕の中で意識を取り戻すも、予断を許さない状態。御堂はダメージを受け、ぼろぼろになった鼎の姿を見て涙を浮かべてた。


なんてひどい怪我なんだ…。流血してるし、殴られたのか?痣だらけだ。


鼎は弱々しい声で御堂に言った。

「和希、仮面を外してくれないか…」
「鼎、無理して言うな…」
御堂は鼎の希望通りにそっと仮面を外してあげる。空が薄暗く、角度の関係で素顔はほとんど見えないが、口元だけが見えている。口元しか見えないが、大火傷の跡が痛々しい。


「禹螢に能力(ちから)と鷹稜を奪われた…」
「なんだって!?」


鼎は伝えたいことをなんとか伝えると、気絶したのか意識を失ったのか御堂の声が届かなくなる。
「鼎起きろ!起きろよ!!おいっ!!」


御堂は鼎の脈を見た。死んだわけではない、意識が朦朧としてるようだ…。



やがて救急隊が到着、鼎は本部隣接の組織直属病院に搬送された。

御堂は鼎が言った言葉が引っ掛かっていた。
「禹螢に能力と鷹稜を奪われた」。禹螢のやつ…なんであいつのブレードまで奪ったんだ?



鼎は戦闘のダメージで出血がひどいため、輸血が行われている。
病院では緊急なため、鼎の仮面は外されていた。複数の看護師や医師がいるため、鼎の素顔は見えないが呼吸器が付けられているのはわかる。


医師も禹螢のやり方に怒りを覚えていた。

「出血がひどいな…。彼女、よく持ちこたえたな…」
「意識は朦朧としている模様。搬送される直前までは意識があったようです」
「今すぐ司令を呼んできてくれ」


宇崎は医師に呼ばれた。鼎の容態についてだった。

「鼎の怪我の状態はどうなんだ…」
宇崎は深刻そうな表情。
「紀柳院さんは腹部に斬られた跡があります。あと痣からするに、激しく殴られ、蹴られたのではないのかと。相手は上級メギドと見て間違いないでしょう」

「鼎はブレードを奪われたと言ってた。刀傷はあいつのブレードで斬られたんじゃ…。
上級メギドは『禹螢』だ。能力だけならまだしも、なぜ鷹稜まで奪われなくてはならないんだ?」



とある病室。鼎はそこにいるがまだ意識は戻っていない。
病院では鼎の事情も考慮して、顔には包帯が巻かれていた。呼吸器が付けられている口元だけが見える。

「鼎…なんでこんな目に遭わなきゃならないんだよ…」


宇崎は鼎の意識が戻ることを祈るしかなかった。顔に巻かれた包帯が痛々しい。

実際は顔にはダメージを受けていないのだが、顔に大火傷の跡があること・そのダメージで目にもダメージを負っているため、素顔でいるのは危ないと判断したからだ。



「鼎さん、意識戻ってないの?…室長、嘘だよね?」
「晴斗、本当だ。搬送される直前までは意識があったと聞いた。御堂が必死に声をかけたおかげだろうが…」

「あいつ、俺のこと…名前で呼んだんだよ。仮面を外してやった時に。
鼎は優しい目をしてた。あいつは…すごい悔しそうで…。涙声だった」



異空間・元老院。


禹螢は嬉々として鳶旺(えんおう)に報告。
「鳶旺様、紀柳院鼎のあの能力・『相手の攻撃無効化』を手に入れました」

禹螢は淡い光の球体を出現させる。球体は鳶旺の元へ。
「これがその能力(ちから)か」


鳶旺は球体を自らの体内に吸収、こう言い放つ。

「禹螢、お前の出番はもうない」
「なんだと!?」
「禹螢、その女の刀を奪って何がしたいんだ?」

「格好のオモチャじゃないか、ゼルフェノアの武器を触ってみたくてね〜」
「下らぬ」


鳶旺は紀柳院の能力を欲していたのはそういうことだったのか…。



宇崎は病院からある情報を聞く。


「そんなことあり得るのか?鼎の能力は大事なものだったということか」
「そうですね。特異な能力を奪われたと聞いて彼女の身体を調べたら、原因不明の不調が顕著でして」
「絶妙なバランスを保っていたってことか?」

「それが敵に奪われたことにより、均衡が崩れ始めています。このままだと彼女は意識が戻らないかもしれない…。せめて鷹稜という、彼女の相棒的なブレードだけでも奪還出来れば」


鷹稜はただのブレードじゃないのは知っていた。あれは蔦沼長官謹製のもの。
鷹稜は鼎用に作られているため、イレギュラーでもない限り鷹稜は発動はしない。



「鷹稜を奪還しろと!?」

御堂はオーバーリアクション。宇崎は真顔で説明した。


「鼎は能力とブレードを奪われたことで、均衡が崩れ始めているみたいなんだ。ブレードだけでも奪還しないと、鼎の意識は戻らないかもしれない。
あいつのブレードは特殊で鼎をサポートする役目もあったから、ないとヤバいぞ」
「そんなにも大事なものだったのかよ!?…だからあいつ…たまに鷹稜に話しかけていたのか…」

「鷹稜は禹螢が持っているだろう、禹螢からなにがなんでもブレードを奪還する!」



その頃、禹螢はブレードで遊んでいた。本来他人が使うと斬れないブレードだが、禹螢はそのカラクリを見抜き簡単に使いこなしてたのである。

「切れ味いいなぁ。こんな優れものを使っていたなんてな」



そこに突如現れたのは鐡。

「面白そうなオモチャだな、禹螢」
「く、鐡!?なんでここに」

鐡はゼルフェノアと組んでることを知らない禹螢に、こう言った。
「鳶旺様はご機嫌なようだな。何かあったのか?」
「鳶旺様は『相手の攻撃無効化』の能力を手に入れてご機嫌だよ」


あの仮面の女の能力を奪ったのか…。やったのはこいつ(禹螢)だろうけど。

禹螢はニヤニヤしながらブレードの切れ味を確かめてる。鐡は部屋を出た。



搬送されてから約5日、鼎の意識はまだ戻らない。
御堂達は鷹稜奪還の任務を遂行するため、異空間ゲートがあるゼノクに来ていた。


「これが異空間ゲートがある部屋か…。えらい頑丈なんだな」

御堂はぼへーと異空間ゲートのある扉を見た。扉は予想外に大きい。
このゲートの向こうには禹螢達、敵がいる。


無題


話題:おはようございます。
昨日の拍手10個ありがとうございます。今日の楽しみは岸辺露伴は動かないの新作ですよ。2夜連続だから楽しみだな〜。

昨夜は自己満小説43話(上)だけで終わってしまった…。(下)まで書いてから寝ようとしましたが、時間帯が遅くて睡眠優先に。


昨日のガンダム、OP微妙に変わってたな。地球の魔女が挿入されてた。
てか昨日のギーツも特殊OPでしたし、ギロリ倒すまでの話は序盤のクライマックスということか。


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