地震から一ヶ月。まだ余震が続くので、更新メールが飛ぶブログの更新を自重してきましたが今日からアップしていこうかと思います。
仕事が忙しいのに仕事中に途中まで書いてみたネタ。
逆ハー希望主がトリップしてきたけど、夢は夢。原作は原作。現実は甘くなく綱吉達から避けられるので王道のイジメられたー、と泣き付いて守って貰おうと思ったけど……な、お話。
だがやっぱり現実は甘くない。
雲雀さん相手の夢主。
逆ハー希望主に優しくないので注意。
2年A組に西園寺彰子という名の女子生徒がいる。
肩より少し長めに伸ばされたストレートの黒髪は染めた跡も中学生らしくメイクもなく、制服も至って普通の校則に則った女生徒用ブレザーを着用している優等生。
容姿は良いか悪いかと言われたら良いと答え、綺麗か可愛いかとと言われたら綺麗と答えるような平均よりは整った顔立ちだが、騒ぐほどの容姿ではない。
学力は上の下、言い方を変えれば中の上の平均より僅かに良いレベル。
運動能力も同じで平均より良いぐらいで、やはり騒ぐほどのものではない。
性格も至って普通、と言える。クラスメートの中では静かな方ではあるが、大人しい訳でもない。
穏やかで、人の相談に乗ってくれるような優しい女子生徒。
それが、第三者が西園寺彰子という名の女子生徒を語る上で必要な情報であろう。
さて、その彼女。
クラスメートとはそれなりに会話をするし、仲の良い友人もいるし何ら問題を抱えていない普通の女子生徒なのだが。
彼女を敵に回してはいけない、との暗黙の了解が全校内に存在する。
それを知らないのは、とことんまでクラスメートとの交流がない者か。
「彰子ちゃんがぁ、姫を気に入らないって殴ってきたのぉ!」
…転校してきたばかりの女子生徒であったりする。
彼女、愛川姫歌という女子生徒は2年A組に転校してきたばかりではあるのだが正直、彼女を少し見聞きした者からは印象が最悪であった。
パーマがかったピンクの髪に紅の瞳、と明らかにこの世には存在しない色彩を持ちながら地毛だと豪語。
親切心で話しかけてきた女子生徒には冷たく蹴散らし、所謂イケメンと呼ばれる男子生徒には自分から言い寄り猫なで声を上げる、男好き。
何故かその中に、ある意味全校で有名人だが平凡な顔立ちの沢田綱吉も含まれるのだが……それ以外の男子生徒にもやはり冷たく蹴散らす彼女の心象はそりゃもう悪いったらない。
その彼女の悲鳴が屋上から響いたのは、彼女が転校してきて1週間たった日の昼休みのことであった。
その悲鳴を聞きつけた者は何事だ、と顔を出したのだが、その理由を聞くにつれて全員が白けた視線を向けた。
曰く、西園寺彰子が自分を屋上に呼び出したのだ。
曰く、可愛いのを妬み暴言を吐いてきた。
曰く、彼女の暴言に泣いたら鬱陶しいと殴られた。
頬を赤く腫らせて泣きながら訴える姫歌という女子生徒は、涙でメイク崩れした酷い顔をしており、お世辞にも可愛いとはいえなくなってしまっている。
そんな顔で言われても、と女子生徒だけではなく男子生徒も顔を引きつかせた。
「何があったの?」
「ツナくぅん!!」
騒ぎを聞きつけた綱吉が野次馬で現れたのを目ざとく見つけた姫歌は駆け寄って抱きつこうとしたが、「ひぃ!」と悲鳴を上げた綱吉は横へと逃げた。
「な、何で避けるのぉ!?」
「な、何でって言われても!!」
汚いんですけど!!とは心の声である。流石に常識があるためその叫びは声にはならなかったのだが。
「汚ぇ顔を10代目に近づけんじゃねーよ!!」
獄寺隼人が代弁してしまったので意味がなかったりする。
「き、汚いって酷い、隼人ぉ!私ぃ、彰子ちゃんに殴られたのよぉ!?」
「はぁ?」
「彰子ちゃんに?」
既に蚊帳の外になりつつある彰子を見て現状を悟った。
「彰子ちゃんがそんなことするわけないよ」
「な…っ」
「だよなー、西園寺って優しい奴だぜ?」
「っ姫が嘘ついてるっていうの!!?」
「…って言ってるけど、どうなの?彰子ちゃん」
「え?私はやってないですよ?愛川さんに呼び出されて、来たら犠牲になってねーってよくわからないこと言われて……自分で叩いてたんです」
ほらみたことか、と綱吉達が冷たい視線で見てくることに姫歌はギリッと歯ぎしりを立てた。何故、自分を信じてくれないのか。
彼女は分かっていない。
これは夢ではなく現実であることに。
会って一週間も経過していなく、更に性格はお世辞にも良いとは言えない彼女と、長年のクラスメートで優しく穏やかな彼女の言葉をどちらを信じるかと言われたら、誰であろうと後者を選ぶだろう。
「っーか、アイツがいるんだから西園寺が自ら手を下すわきゃねーだろ」
「あ、アイツ…?」
獄寺さえも断言した『アイツ』の存在に誰もが頷いた。誰よりも彰子の感情に聡く、誰よりも彰子を大切にして、誰よりも彰子を盲目的に愛している人の存在。
「みんな、そろそろ屋上から出た方が…すごく怒って、こちらに来てるみたいです」
「マジかよ、居合わせたら巻き込まれそーだな」
「相変わらず双子みたいに離れてても分かっちゃうんだね」
「早く行こぜ!」
「あ、ま、待ってよぉ!」
彰子の言葉に全員が駆け足で屋上から出て行く。それを呆然と見送るしかなかった姫歌にクスリ、と笑う。
「おばかさん。ここは貴女の知ってる漫画の世界じゃないのに」
貴女がいる時点でもう貴女の知っている世界ではないと、どうして気付かないのか。
クスリクスリと愚か者を笑い、屋上へと現れた姿に純粋な笑みへと変える。
「恭ちゃん」
「彰子、怪我はない?」
『幼なじみ』へと優しく微笑んで気遣う雲雀恭弥。彰子は笑みを深める。
「私は大丈夫」
「そう、よかった。そろそろ教室にお帰り……此処は僕に任せてよ」
「そう?それじゃあ、お願いね?」
どうして、と呟く姫歌と恭弥を残して彰子は屋上に背を向ける。
「おばかさん」
雲雀恭弥の幼なじみに『転生』している者がいるのだから、原作の世界観はもう変わっていた。自分が生まれた時に、既に変わっていたのだ。
雲雀恭弥は幼なじみにご執心。
依存。
執着。
彼はもう『あの雲雀恭弥』ではない。
そこから少しずつ原作が狂いだしたのだ。
それぐらい、自分がトリップしてしまった時に考えれることではないか。
自分がトリップしたのだから…それ以前にトリップしてきた人間がいる可能性を。
原作の世界観やキャラクターが変わってしまっている可能性を。
自分が特別なのだと舞い上がって調べるのを疎かにした自業自得。
「トリップしてきて残念でした」
転生ならばまだ救いようがあったかもしれないのに。
突然現れた人間に経歴はないんだから、当然そんな怪しい人間を本場のマフィアが見逃すはずがないのだ。
「止めないよね、赤ん坊」
「ボンゴレはコイツを危険因子と判断した。意見は一致してるからな、雲雀の好きにしろ」
「ワォ、それじゃあ処理はそっちに任せるよ。彰子と一緒にいる時間が減るのは嫌だからね」
「いいぞ」
どうして、と姫歌は呟いた。
だって可笑しいではないか、自分はこんなにも可愛いのに、どうして誰も見向きもしないのか。
自分はその名前の通りお姫様のはずだ。この世界では愛されるお姫様。神様にだって自分は愛されているのだ。
そうでなければ、自分がこの世界に存在できるはずがないのだから!
「そう、愛されているのは私なの!私じゃないとダメなのよ!なのに何なの!?ちゃんと私を愛しなさいよ!私が愛してあげるって言ってるのよ!?愛しなさい!私を愛しなさいよ!」
こんなの間違っている。望んでいない、自分は神様に愛されているのに。
「こんなの私の望みじゃない!神様!もうこんな世界いらないのよ!わ、私を愛しているんでしょう…!?だったら、早く私の望む世界に連れて行ってよ!リボーンの世界に!」
早く早くはやくはやく!自分を愛してくれないこんな世界なんて一刻であろうともいたくないのに!
「…危険因子と判断して正解だったみてーだな」
「…咬み殺す」
「どうして…!?」
彼女は最後まで現実を認めずに、……
「あの子、どうなったの?」
「転校したよ」
「そっか…大丈夫だった?恭ちゃん」
「勿論。彰子を守るためだから、大丈夫だよ」
「うん」
「大好きだよ、彰子。だから僕から離れないでね」
「勿論、大好きだよ、恭ちゃん」
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みたいな感じには書いた!
ちなみに、裏設定はS夢主×M雲雀なのだ←