随分と前に書いていて、放置されていたものを発掘してきました。
ジャンルはテイルズオブデスティニー。
お相手はリオン。
場面は海底洞窟の例の場面。
ほぼ夢主の独白のみ。
悲恋気味の夢主死ネタ。
よければ、以下よりお楽しみください。
ある一人の少女の独白
リオンという少年は、私なんかと比べようもなく輝かしい人だ。
容姿、性格、実力。
全てを兼ね備えた特別な存在。
光の中で、観衆に注目を浴びてなお、しゃんと背筋を伸ばして堂々と立つ彼は、隣に立っている(不相応にも私は彼の仕事上のパートナーだ)はずが観客という立場に立っている私にとって、眩しくあり、憧れである。
彼は歓声を浴びるべきだ。
彼は光の中に立つべきだ。
謂われのない罵倒を浴びるべきではない。
裏切り者と闇に堕ちるべきではない。
功績を汚すべきではない。
これは、彼の意志なんて関係ない。
私の自己満足で、私ひとりの我が儘だ。
憧れの人が変わって欲しくないという、身勝手な押し付けだ。
だが、それで自分が満足するのだから、いけないことはないはずだ。
私だって我を通したっていいはずだ。
私にだって我はある。
だらしなく長く伸ばした前髪で醜い顔を隠して、親の権力だけはあったため国家機密の研究中だというソーディアンを使わない唱術を教えられ、素質が多少あったため使うことは出来るけれどソーディアンマスターと比べようもなく下手で、自分の全てに自信がなくて下を見て歩くような私だって貫き通したい我はある。
彼はスポットライトの当たる舞台に立つのが一番だ。
汚れ役なんて、それこそ不相応だ。
私にこそ、相応しい。
パートナーとしてリオンと共にいた時にヒューゴが計画を決行したことで、私の運命は決まったようなものだ。
スタンさんらソーディアンマスター達が追い付いて来たことで、私の行動は決まったようなものだ。
スタンさんは、彼がマリアンさん以外で唯一認めている友であり仲間なのだ。
彼は当然ながら私の説得の声に応えることはなかった。
当然のことである、特に絶望する要素もない。
私はたまたま唱術が使えたことで、王命により彼は仕方なくパートナーでいるだけの存在なのだ。
だから、お情けでパートナーである私よりも、友であり仲間であるスタンさんの説得の声に応えると私は確信していた。
だから、私は虎視眈々とその時を待っていた。
スタンさんの差し出された手へ、彼も手を伸ばすその瞬間を。
「ナイトメア」
私が最も得意とする、眠りへと誘う唱術。
私にはお似合いの、殺傷力もない役立たずの唱術。
「お前…なにを……」
油断していた彼は、眠る。
倒れそうになる彼をスタンさんが支えた。
私は、一人ぽつんと洞窟に取り残される。
リオンは、マリアンさんを助けるためにスタンさん達について行くだろう。
そうして、世界が救う功績を残した彼は裏切り者の汚名をきせられない。
彼は、罵倒されることなく、裏切り者と蔑まれることも汚れることもない。
全て私の自己満足で、私の我が儘だ。
身勝手な押し付けだ。
だが、それで自分が満足しているのだから我を通して良かったのだ。
私にも我があって良かったのだ。
真ん中まで登ったリフトを見上げる。
眠りから覚めた彼と目が合った。
「 」
彼の口が動く。
何を言ったのか、分からなかった(聞こえなかった)。
だけれど、自分の心は満ち足りていた。
とても、とても、満ち足りている。
ああ、幸せ。
これは私だけの幸せ。誰にも、リオンにも否定させない。
これは恋ではない。
憧れだった。
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前半までは、自分の欲望のままだったりします。
そりゃあ、リオンの決断は否定はできないけど、光の中にいて欲しかったよね、と思って書いていた、はず!
だいぶ前に書いたものですが、少しでも良ければ嬉しいです。