ルキ
所謂エリートで非常に優秀。挫折したことは一度もないが、努力を怠ったこともない。能力も家柄も、中の上か上の下程度。真面目で豪放。口が悪いけど友人は多い。
アキ
能力が高すぎて3歳くらいまでは暴走を繰り返した。いい家柄だけど一族の恥。ずっと父親に閉じ込められていたのでまともな教育を受けていない。過度な拘束具で友人もいない。
トキ
家柄はいいが成績が悪い。努力はしてるけど報われない。精神面が弱くたびたび体調を崩し、一人で頑張るから余計に拗れる。一族は期待して一流の教育を施したが、責めるようなことはしていない。
タキ
家柄も成績も優秀なエリート中のエリート。態度が横柄で慇懃無礼だが、実際『偉い』から誰も注意しなかった。努力しなくても結果がついてくるので何にも興味を示さない。
シキ
家柄はいいが、忌み子。幼少期には拘束具を付けていても能力が暴走した。修習をなかなか終わらせてもらえなかったのは、家族が圧力をかけたから。相当冷めた性格で、心から笑うことはほとんどない。
正しいことを全て違えてでもお前の味方でいてみせる。正しいことも間違いも、俺にとっては良平にとっての正しさで決まるから。
『俺が殺そうか』
『りょーの為じゃなく二人の為なら俺は殺せるよ』
リズミカルな電子音に目を覚ますと、同時に良平も動き出す。
ふだん目覚ましを使わない俺には何の音かすぐには分からなかった。「いま止めるから」と言った良平はポケットにあったらしい携帯電話を取り出すと音を止める操作をし、静かに起き上がる。
「6時半だよ」
「あー、そう」
「まだ寝てる?」
「……いや、起きる」
良平はゆっくり笑って無理しないでねと答えた。
無理をしているのはお前だろう。
全裸だった俺は伸びをしながらクローゼットに向かい、服を用意する。横目に良平を見ると、俺のベッドを整えているらしい。
「冴とうまくいってんの?」
服を着てから部屋のドアを開ける。近付いてくる良平は俺の目を見ようとしなかった。冴とうまくいっているはずがなかった。
黙ってしまった良平を気に留めずにトイレで用を足し、洗面所で手と顔を洗う。
「うまくいってないよ」
「……」
「……だから別れた」
目の前にあったのは見馴れた顔だった。見馴れない表情だった。爽やな石鹸の匂いの割に、どんよりとした瞳をしていて、それはとても良平らしくなくて、俺は良平の気持ちを蔑ろにしたのではないかと不安にかられる。
一番に守りたいのは綜悟さんだ。一番に近くにいたいのは綜悟さんだ。
でも、一番の味方でいたいのは、良平だ。
良平が良いって言えばそれが何であろうと良いのだと思う。良平が大切にしていたから俺も守った。もちろん今はそれだけでもないけれど、もともと俺はあの一族に好意の欠片も抱いていなかったのだから。
見馴れないけど覚えはある。
あれがあれだけではなくなる少し前、それもただそれだけのことだと割り切れるようになる少し前、良平は今みたいな顔に不気味に笑顔を張り付けて、俺の為なら死ねると言った。
『俺が死のうか』
『きょーの為じゃなくて二人の為なら俺は死ねるよ』
俺は良平の為には死ねないよ。お前を残して死ねるわけがない。良平が生きる限りお前を裏切ったりはしない。
まだ朝の5時だと告げた良平は静かに俺の隣に倒れた。そのまま再び眠るらしい。愛しいとも迷惑とも俺は思わず、冷え切った良平の身体に布団を掛ける。
そうして甘やかされているのは俺の方。
「君と弟ってあんまり似てないみたいだけど異母兄弟だったりするの?」
「はっきり聞きますね」
「ごめん、僕には言いたくなかったね」
「違う違う!」
「……そ」
「でも全然似てない?」
「……」
「いえ、無理に探すことないですよ」
「つむじ」
「え」
「つむじが同じだ」
「……」
「……自分から聞いたのに照れないでよ」
あー、すっごいいい夢見たわ。やっぱ欲求不満なのか……。