今日は実に良い天気だった。それに何より素晴らしい出逢いを得た。
「兄さん、何かいいことあったの?」
「聞きたいか?」
ルイージは素直にうんと頷いた。子供の頃からルイージは俺にはとても正直で、嘘を吐く時は半分泣きながらだった。それは今でも変わらない。
「お姫様に逢ったよ」
「え! スゴイ!」
薄っぺらい感想だな。
そうは思ってもルイージの表情は最高にワクワクしているから、まあいいかって気持ちになる。ルイージは女の子みたいにお伽噺が好きなのだ。恐竜が暴れる世界を冒険するより、魔法の国で不思議な木の実を食べたがる。
「可憐で、儚げで、絵本から出てきたようなお姫様だった」
「いいなあ!」
ルイージはヨッシーに捕まっていたから、ピーチ姫に会おうにもできなかっただろう。俺はヨッシーが来る気がしたからわざとルイージを残して家を出たのだ。
ルイージは心から残念がっているようだ。
「巨大な外敵に狙われた時、我々には何ができると思う?」
「へ?」
俺の問い掛けにルイージは目を丸くした。
「絶対に敵わないと諦めるのは、性に合わないからなあ」
「がいてき、って?」
「わかんねえかなあ、お前には」
「ごめん、兄さん」
ルイージは悲しそうに俯いた。
「俺は、これを、立派な侵略と受け取った。小さな組織に対して圧倒的な力で侵略して来た外敵みてえなもんだ」
「な、なにが?」
「わかんねえか!」
「がいてき?」
「そうだ、外敵だ!」
「がいてき……?」
ルイージは分かったような分からないような表情をした。目がふらふら泳いでいるから直ぐ分かる。
俺には自分の立たされている立場がはっきり見えていた。
お伽噺のお姫様なら俺と話したりしない。ピーチ姫は空想のお姫様ではない。問題は彼女が俺とは違う社会に生きていることだ。
「彼女は、俺の心を侵略したのさ」
ルイージはぽかんと口を開けた。
「外敵とは、『ラブ』だ!」
俺の心は始めのうちは侵略に慄いていた。その力の差が歴然としていたから諦めようとしていた。
しかしこれが侵略だと考えたら!
「外敵が、ラブで、侵略したのは、ラブで」
「そうだ!」
「ら、らぶ!」
ルイージは勢いだけでそう叫んだ。
「俺は戦う。この絶対的に不利な立場をどうにかしてやるのだ」
「たたかう、の?」
「いいか、巨大な外敵が俺を踏み潰そうってんだ。やることはこれまでどおり、ひとつだけだろ!」
「それってなに?!」
「『敬服』だ!」
ルイージは目を輝かせている。
俺は気分よく演説の続きを始めた。
「我々が彼らを屈服させるには、『敬服』させる外に道はない!」
会社を興してから俺はそうやって生き延びて来た。まずとにかく名前を売って、俺という存在を知らしめて、敬服させる。こいつは凄いと思わせるにはそれしかない。
俺は徹底抗戦する構えだ。
この侵略に打ち勝ってみせる。
ルイージは俺の話しを聞きながら何度も頷いた。
【ラブ・インベーダー】